緩衝材

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緩衝材(かんしょうざい)とは、動きの異なる複数の物体が干渉し合うことによって物体が破損することを防ぐために、間に挟む物、およびその素材を言う。貨物における内容物の保護、の靴底などに使われる。

貨物保護目的の緩衝材

緩衝材は自身が変形することで、外部からの衝撃や振動を和らげ保護対象に伝えづらくする機能を持つ資材である。梱包で用いられる緩衝材は、輸送において目的地に到着すれば不要ともなるため、安価なものが用いられる傾向にある。しかし、繰り返し再使用することを前提とする所定の器物を収納する容器の場合は、その容器内部に緩衝材が容器の機能の一部として組み込まれている場合もある。

素材

古くは、容器の内張りにゴム綿およびといった弾力性のある素材が使用された。これらは容器を再使用することを前提としており、宝石箱などではアクセサリー同士が衝突しあって破損しないよう、その各々を固定するための場所も見られる。その一方で長距離での輸送ではシロツメクサ(白詰草)も使われていた時期があり、名前にその名残がある。なおシロツメクサは、海上輸送が標準的に利用されていた時代に梱包資材として盛んに使われたため、世界各地にその種子も運ばれ、帰化植物としてかつての海運網拠点を中心に繁茂している。

20世紀に入り多く使われる身近な素材として、発泡スチロール気泡緩衝材がある。気泡緩衝材(俗に「エアーキャップ」「エアークッション」)は塩化ビニールの伸縮性と空気の圧力で衝撃吸収機能を持つが、発泡スチロールはポリスチレンなどの合成樹脂を発泡させ、弾力性を持たせている。ポリエチレン製のものも登場している[1]

前述の合成樹脂を使った緩衝材は水濡れや湿気に強い反面、環境に廃棄されればいつまでも分解されず残るために環境負荷が大きい。このためこういった緩衝材に代わってセルロースコーンスターチ(トウモロコシデンプン)など生分解性のある素材を使うことがある。他に企業から排出されるシュレッダー屑や、古紙を保護する目的物形と箱に合うように整形した古紙緩衝材なども使われる。入手のしやすさから新聞紙もよく使われる。単純にのもつ弾力によって内容物を支えている。

加えて、緩衝材が埋まる空間分輸送コストがかかることから、なるべく緩衝のための容積を小さくすることも求められている。前述の素材を改良する他に、力学的な計算で内容物を保護できるように折り曲げ加工された段ボールも、家電の梱包を中心に使われている。

その他の緩衝材

また、梱包材以外では衝撃吸収ゲルのようなゲル化素材もみられる。これは力を分散させ、また抗力を発揮することで衝撃を吸収する。ジョギング運動靴などでは、この衝撃吸収ゲルがかかと部分に内蔵され、足が地面に衝突し体重を支える際の衝撃を和らげている。

文化

詰草
江戸時代からガラスの緩衝材として乾燥させたシロツメクサ(白詰草)が詰められた[2]
浮世絵
逆に日本から陶磁器を輸出する際に仕切り板(緩衝材)として詰められたのが浮世絵である[3][4]。この梱包材で使われた『北斎漫画』をフランスの陶芸家・画家フェリックス・ブラックモンが発見し、魅力を発信したことから19世紀後半にジャポニスムという流行が生まれた[3]。また、ヨーロッパ側の商人も様々な商品の包み紙に浮世絵を用いてたことから、画家が回収したという記述がいくつか確認できる[3]

規格

JIS、日本工業規格
  • JISZ0235 包装用緩衝材料
  • JISZ0240 包装用構造体緩衝材料

脚注

関連項目