段ボール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
束ねられた段ボール箱

段ボール(だんボール)とは板紙を多層構造で強靭にし、包装資材などに使用できるよう加工した板状の製品。素材としての段ボールシートのほか、再加工した段ボール箱、その他の段ボール製品を指すこともある。「ダンボール」という表記もされる。

概要[編集]

一般には、波状に加工した紙を表裏の紙で挟んで接着し、強度を持たせた構造をしている。さらに多層に加工したものや、波状の紙が表面にでている片面段ボールもある。

段ボールの名は、原紙にボール紙(ボールは英語のboardに由来)を用いていたことと、断面の波型が階段状に見えることによる。 段ボウルともいう。

段ボール箱からは腐食性ガスがわずかながら発生するので、電子部品などの長期保存には向かない。

歴史[編集]

段ボールは19世紀イギリスにおいて当時流行していたシルクハットの内側の汗を吸い取るために開発された。のちに包装資材として利用されるようになったのは、アメリカ合衆国においてガラス製品の包装に使用されたのが始まりである。現在用いられている段ボールを作成し、日本において「段ボール」という言葉を作ったのは井上貞治郎である。

段ボールシート[編集]

狭義で、本来の意味である段ボールはこれのことを指す。様々な段ボール製品の素材。ライナーにフルーテッド(波型に加工)した中芯を貼り付け、さらに裏側にライナーで補強したシート(板状のもの)。

中芯の山の密度を指すフルート[1]には、Aフルート・Bフルート・Cフルート・Eフルート・Fフルート・Gフルートまでが現在使用されており、Gに近づくほど細かい波形となる(CフルートだけはAとBの中間の厚み)。

一般に使用されるのは、Aフルート、Bフルート、E/F/Gフルート(マイクロフルート)である。また、表にBフルート裏にAフルートを貼り合わせたシートはBAフルート・ABフルートまたはWフルートと呼ばれる。段ボールシートの用途は一般的に製函用途が多いが、緩衝材やコンクリートパネルなどにも使用される。輸出梱包にはAAAフルート(トリプルウォール等)、AAフルート(バイウォール等)など特殊な段ボールが木箱や鉄枠のかわりに使用されることがある。

Wフルートについては、BCフルート、BBフルート、EBフルートもまたWフルートであり、これらBC・BB・EBフルートは日本国内では使用量も少なく、取り扱う企業も少ない。

近年、AフルートからCフルートへの変更を勧める企業が見受けられるが、薄くなるため強度的には若干落ちる。しかし、海外工場(中国工場等)との包装設計の共有化を進める場合には、効果がある。

段ボール箱[編集]

段ボール箱

段ボール箱は、段ボールシートを素材とするである。軽さと強度、構造に由来する衝撃吸収性、何度も折りたたんでは組み立てられる利便性などから、宅配便引越し等の運輸業、または貯蔵の分野で、従来の木箱に取って代わるようになった。通常折りたたむと一枚の平坦な状になる。日常的に「段ボール」という言葉を使う場合、この段ボール箱を指すことが多い。

蓋を折り込むことで段ボール箱だけでも組み立てられるが、ガムテープクラフトテープOPPテープなどの粘着テープを使うことが多い。機械などの重量物を入れる場合は、接着剤や両面テープを使い、さらに金具またはバンドで固定する。

A式(A形)・B式(B形)・C式(C形)などの形状がある。最も普及しているのはA式(A形)と呼ばれる形状で、箱の上下に開閉可能な蓋がついている(俗に言う蜜柑箱)。 JISのコード番号で箱の形式をいう場合もあるが、実務ではあまり使用されていない(JIS Z 1507)。

段ボール箱の応用で、内側にポリエチレンなどの合成樹脂で作った袋を取り付け、液体包装に用いる容器も製造されている(バッグ・イン・カートン、バッグ・イン・ボックス)。

シートの製造方法[編集]

段ボールはコルゲータ(コルゲートマシン)を通して製造される。コルゲータはシングルフェーサ・ダブルバッカー・カッターによって構成される。また、ライナーと中芯を接着するための製糊装置、さらに糊を溶かすための熱を発生させるためにボイラが必要である。完成された段ボールは、プリスロ(プリンタースロッタ)によって印刷され、グルア(糊付機)またはステッチャ(段ボールを平線(針金)で接合する機械)によって段ボール箱へと加工されてゆく。箱の形状によってはダイカッタ(型抜機)によって型抜きして加工される。加工されて不要になった部分は裁ち落とし(裁落)として回収され、再び段ボール原紙として利用される。

段ボール原紙[編集]

段原紙ともいう。段ボール原紙はライナー中芯(なかしん)に大別される。両方とも最初はロール紙の形をとっており、それをコルゲータにかけることによって両者を貼り合わせ、段ボールとなる。

中国広東省東莞市には、多くの段ボール原紙工場が集中しており、世界有数の産地となっている。ナイン・ドラゴンズ・ペーパー(玖龍紙業)、リー&マン・ペーパー(理文造紙)等。

ライナー[編集]

ライナー (liner) とは、段ボールの外側を形成する紙のことをいう。ライナーは多層抄きの板紙で、通常4層抄きである。

原料は主に古紙クラフトパルプを用いるが、日本では古紙を使用することが多い。別抄きのグレード等例外はあるが、Kライナー(クラフトライナー)は古紙50%以上、Cライナー(ジュートライナー)は古紙90%以上を使用する。また、輸入原紙にはこれは当て嵌まらない。主にK7・K6・K5・C6・C5・D4・D3の種類があり、K7が最も硬く、D3が最も柔らかい。なお、C6・D3は需要が少ないため使用されなくなりつつある。C6はK5で、D3は普通芯で代用する。また、表面に漂白パルプを流したもの(OPB6・OPC5)、撥水・耐水原紙、純白、赤、黄色、木目調などの色ライナー、プレプリント原紙など多種多様である。OPB6はOyster Pearl B級 6(匁)、OPC5はOyster Pearl C級 5(匁)の略。乳白色をしているので、こう呼ばれている。

坪量(米坪)は120gsmから469gsm程度まで幅広い(輸入原紙を含む)。K7等の表記に関しては段ボール業界の慣習的表記であり、正式な包装設計図面等にはK280またはK280gと表記されることが多い。Kライナーには各種グレードが存在し、原紙単位の数量の発注が可能であれば、グレード及びgsm単位で原紙を指定して製紙会社にライナー・中芯原紙を抄造してもらうことも可能である(色ライナー、プレプリントも可)。ライナーには、強度が求められるため、ポリアクリルアミド変性でん粉などの紙力増強剤が添加され、また、吸湿防止のためのサイズ剤が使用されることもある。必要に応じて、撥水剤が塗布されることもある。

また、D3の下のグレードとして、普通芯を段ボールシートの表裏に貼合する場合がある。通常、撥水・耐水原紙を使用する場合、ライナーに限らず中芯及び貼合用糊、グルア用糊、印刷インキも撥水・耐水用が使用される。

中芯[編集]

段ボールの断面。波状になっている部分が中芯

中芯とは段ボールの内側、つまり波状部分を形成する紙である。中芯は多層抄きの板紙で、通常4層抄きである。原料は主に古紙を使用する。

V20・V19・V18・V16・V12・S18・S16・S14・S13・S12・S11・S10の種類があり、V20が最も硬くS10が最も柔らかい。なお、Vと付く種類の紙は紙力増強剤を使用してより強度が上げられている強化芯である。一般的に「普通芯」あるいは「中芯表示は無表記・Sのみ表記」の場合は、S12(scp115gsm~scp125gsm)が使用されている。

ライナーほど種類は多くないが耐水性を向上させたものなどがある。S16等の表記もまたライナー表記と同様に業界の慣習的表記であり、それぞれの企業によって異なる。例えば、強化芯180gsm(kscp180gsm)の場合V18・HP18・P18・MM18・HP8・P8・M8等表記し、各企業によってまちまちである。

段ボール製品[編集]

包装、保管容器としての段ボール箱の利用がもっとも一般的である。また、ピザなど、ファーストフードのパッケージなどにも使用される。書籍などを夾んで、封筒状にして用いる包装材料もある。変わったものでは段ボール製の葬儀用祭壇・棺桶があるが、日本国内ではあまり使用されていない。

段ボールシートを加工し、家具ノートなどの文具などに使用する例もある。地震などの避難所で、衝立や小部屋状に組み立てて使う例もある。災害用簡易トイレも作られている。波打った断面部を表面にすることで吸音・遮音性もある程度あり、手作りの防音部屋用の素材としても使える。

段ボールシートを加工し、自作パソコンのケースとして販売されている製品もある。

プラスチック段ボール[編集]

通称「プラダン(プラ段)」または「ダンプラ(段プラ)」と呼ばれる、プラスチック(主にポリプロピレン)製の段ボールに類似した中空構造のシート。

紙でできた段ボール板に比べて耐水性、耐久性に勝るので、強度が必要な用途や、長期利用もしくは再利用を前提としたケース類などに使用される。不織布や高発泡ポリエチレンシートを貼ったプラダンや、黒色の導電性プラダン(静電気に弱い精密電子部品の輸送用)もある。

プラダンの場合、輸送箱として使われるだけではなく、建設業や引越し業で使用される養生シートとしての使用も多い。寸法は通常の段ボールシートとは幅と長さ(流れ)が逆になる。

プラダンは材料にポリプロピレンを使用しているため、加工には専用の接着剤を使用する。あるいは、専用の熱溶着機を使用して、接合及び組上げを行う。これが、最近の主流となっている。印刷する場合のインクも特殊なものを使用する。

強化段ボール[編集]

通常の段ボールを二重もしくは三重構造にし、また耐水性を持たせて、高い強度を持つように造られた段ボールのこと。通常の段ボールの約10倍の強度を持つといわれ、木材梱包の代替資材として物流に使用される。また、焼却や断裁による速やかな廃棄を前提とした簡易家具類等にも活用されている。

出典・脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ 段目とも言う。「Aフルート」などは「A段」との言い換えが可能

関連項目[編集]

外部リンク[編集]