統合戦術無線システム

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統合戦術無線システム(そうごうせんじゅつむせんシステム、Joint Tactical Radio System、JTRS)は、アメリカ軍が開発計画を進めている次世代無線通信システム。ソフトウェア無線として開発されており、音声通話データ通信の両方を担当する。アメリカの全軍で様々の用途に使用されることから、複数の機種が開発されている。

概要

JTRSは、陸軍歩兵用無線機から航空機用の戦術データ・リンクに至るまで、全軍の全階梯で使用されるあらゆる通信設備について、オープンアーキテクチャ商用オフザシェルフ)化された同一の基本設計に統一し、相互運用性を向上させることを狙って開発されている。ただし、極めて野心的な計画ゆえにコストの上昇をまねき、数度にわたって計画の見直しを受けている。

分類

JTRSには、大きく分けて5つの系列がある。

JTRS-GMR (Ground Mobile Radio)
地上車両に搭載されるもので、WNW (Wideband Networking Waveform: 広帯域ネットワーク波形)に対応しており、複数チャネルの秘匿通話のほか、データおよび映像の伝送が可能となっている。当初はクラスター1の名称のもと、ヘリコプター戦術航空統制班への配備も視野に入れて開発していたが、開発の難航を受けて、2005年、地上戦闘部隊への配備のみを前提にするよう計画は見直された。
JTRS-HMS (Handheld, Manpack, Small Form Fit)
歩兵携行用のもので、背負い式 (MP: Manpack) 、手持ち式 (HH) 、装着式 (SFF) の3種類がある。背負い式は2チャンネル、手持ち式と装着式は、2チャンネルのほか、1チャンネルのみの軽量型もある。いずれも、秘匿通話、データおよび映像の伝送が可能である。当初はクラスター5の名称で開発されていた。
JTRS-AMF (Airborne, Maritime, Fixed Station)
航空機、艦艇および地上基地用のもので、当初は、地上基地および艦艇用のものはクラスター3、航空機用のものはクラスター4の名称で開発されていたが、2004年にJTRS-AMFとして統合された。また、JTRS-GMRの計画変更に伴い、2006年には陸軍のヘリコプター用のものも統合された。
JEM (JTRS Enhanced MBITR)
既存のAN/PRC-148 Multiband Inter/Intra Team Radio (MBITR) をJTRSに則るように改修するもので、特殊作戦軍(SOCOM)の主導の下、当初はクラスター2の名称で開発されていた。ただし、あくまで暫定的な措置であり、映像の伝送機能がないなど、JTRSの他機種との互換性は完全ではないため、最終的には、JTRS-HMSによって代替される。
MIDS-J (MIDS-JTRS)
これは、JTRS計画に多機能情報伝達システム(MIDS)の成果を取り込んだものである。他のJTRS端末と同様の秘匿通話、データおよび映像の伝送に加え、新しい高速の戦術データ・リンクであるリンク 16にも対応している。JTRS-AMFと同様、航空機、艦艇および地上基地に配備される。

回線

JTRSは、複数の回線を使用することができる。その主なものは下記のとおりである。

参考文献

関連項目