東邦生命保険

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東邦生命保険相互会社(とうほうせいめいほけん 英語名:Toho Mutual Life Insurance Company)は、かつて存在した日本の生命保険会社(相互会社)である。

1999年平成11年)6月に経営破綻し、保有していた保険契約は現在、外資系のAIGエジソン生命を経てジブラルタ生命保険に引き継がれている。

概要

明治時代に設立された徴兵保険会社・第一徴兵保険を前身とする生命保険会社で、第二次世界大戦後に東邦生命保険相互会社となった。歴史的経緯から駐屯地地方本部といった自衛隊施設へ出入りする営業を行っており[1]自衛官世帯の契約が多いことでも知られていた。

東邦生命三代支配

東邦生命は、太田一族が80年以上、同族経営をつづけてきた会社である[2]。同社の社長だった太田清蔵 (6代目)が18年間君臨した同社を去ったのが平成7年(1995年)7月[2]。太田家や東邦生命にとって歴史的な出来事になった[2]明治期博多の実業家だった太田の祖父が、経営再建に上京以来つづいてきた太田一族支配に幕が下ろされた[2]

経営悪化から経営破綻へ

旧東邦生命ビル
(東京・渋谷)

経営悪化

株価の下落による運用株式の評価損発生や融資先の不良債権処理に加え、予定利率逆ざやによって1997年平成9年)には財務基盤の悪化が明らかとなった。このため、東邦生命はアメリカの大手ノンバンクであるGEキャピタルと資本提携、以下のような新旧分離に似たスキームを用いての経営再建を目指した。

  1. 先ず東邦生命とGEキャピタルの合弁(議決権所有はGE:9、東邦:1)で「GEキャピタル・エジソン生命保険株式会社」を新設した。東邦生命の新規募集事業と営業部門の従業員についてはエジソン生命へ包括移転され、東邦生命としての新規契約は停止、この時点で東邦生命は既存保険契約の保全管理を主に取り扱う会社となった。
  2. GEキャピタル・エジソン生命として新規契約を締結した生命保険については、東邦生命へ再保険をかけて、年500億円程度の資金を支払い、東邦生命の財務体質の改善を図ることとなった。

しかしながら、この再建策に当たっては経済概況予測が甘く見積もられ、株式評価損の更なる計上と不良債権の増加による貸倒引当金の積増を余儀なくされた。また、1997年平成9年)度だけでも前年比20%程度の保険契約の満期・中途解約の続出による資金流出があった。

1999年平成11年)3月期決算での債務超過状態が確実視されていたが、東邦生命は同月、劣後ローンで450億円余りを調達した。さらに、渋谷の本社「東邦生命ビル」の信託受益権を約200億円でゴールドマン・サックスへ売却した。これらの資金はそれぞれ運転資金に充当されたとみられた。

同様の形態で外資系金融と組んで自主再建を図る手法は後に千代田生命保険も試み[3]、その手法は「東邦生命方式」と呼ばれた。

経営破綻

1999年平成11年)6月4日、同年3月期決算で2000億円を超える債務超過と見込まれ、トーマツによる監査では意見不表明とされた。同日、金融監督庁による業務停止命令が発令され、経営陣は自主経営の断念を表明、東邦生命は名実ともに経営破綻に至った。

破綻後

破綻処理に当たってはGEキャピタルがスポンサー、GEキャピタル・エジソン生命が受け皿会社に名乗りを上げた。生命保険契約者保護機構とエジソン生命の拠出金により、養老保険などの責任準備金は最大1割削減、個人年金保険などの予定利率は強制的に引き下げられたが、死亡保障などは特例で保護のうえ殆どの契約は社名変更したGEエジソン生命へ契約移転(承継)された。2001年平成13年)に契約移転分について契約者配当金が一部削減されたものの支払われている。同社は2003年にAIGが買収し、2002年平成14年)からAIGエジソン生命と改称し、かつて東邦生命方式による再建を画策した旧千代田生命(AIGスター生命保険)と同一資本下に入った。2012年1月にエジソン生命と共にジブラルタ生命保険へ吸収合併された。

その他

東京・渋谷の金王坂にあったかつての本社ビル「東邦生命ビル」は現在、「渋谷クロスタワー」となっている。また、東京・銀座にあった旧本社ビル「 銀座東邦生命ビル」は建て替えられ、商業施設「ZOE銀座」となっている。

脚注

  1. ^ 他社で行われたのは協栄生命のみ
  2. ^ a b c d 佐藤朝泰 著 『豪閥 地方豪族のネットワーク』 (立風書房 2001年) 484頁
  3. ^ 千代田生命は提携が破談となり破綻

関連項目

  • 科研製薬 - 経営破綻直前まで筆頭株主となっていた(のちに東レへ株式譲渡)

外部リンク