斜視

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斜視
概要
診療科 眼科学, 斜視学[*]
分類および外部参照情報
ICD-10 H49H50
ICD-9-CM 378
OMIM 185100
DiseasesDB 29577
MedlinePlus 001004
Patient UK 斜視
MeSH D013285

斜視(しゃし)とは、片方のは視線が正しく目標とする方向に向いているが、もう片方の目が内側や外側、あるいは上や下に向いている状態のことをいう。

俗に(すがめ)、ひんがら目(ひんがらめ)、藪睨み(やぶにらみ)、ガチャ目ロンパリ寄り目と言う。

眇は、片目が細い、あるいは潰れているさまを表すこともある。ひんがら目は「僻目(ひがらめ。僻眼とも)」が変化した語である。またロンパリは、一方の目でロンドンを見つつ、もう一方の目でパリを見ているさまに例えた語であるとされる[1]

症状

左右の目がそれぞれ異なる方向を向いているため、両眼視差による立体視が困難になる他、視ている対象が二つに見える複視が生じることもある。両眼視差による立体視はおおよそ2歳までに形成されるので、それ以降まで斜視状態で生活した場合、例え手術で矯正されてもその能力を獲得するのはほぼ不可能である。人間の目は本来、片方が左右のずれを捉え、もう片方で奥行きのずれを捉える事により立体視している。両眼視機能がない人間は「効き目」が両方の役割を担う事になる。そのため効き目に負担がかかりやすく、逆の目の映像は複視や視力差により脳内で混乱を起こすため「抑制」と呼ばれる脳機能で本来の映像が制限される。両眼視機能がある状態であれば、前視界のうち50/50程度の割合となるが、仮に右目が斜視、左目が通常の場合は70/30といったような役割分担となる。また、「抑制」により、使われなくなった目は弱視や視力低下などを併発するため視力が下がる傾向があり、これによりさらに斜視の症状が進む傾向にある。一般に言われる人差し指同士を合わせたりする程度の遠近感は片眼でカバー可能で、車の運転程度の視野であれば斜視の人間でも問題無くこなせる。しかし映画など3D画像などでの左右の映像差を利用したもので「手前に迫ってくる」感覚は認識できない。なお、視点移動などの運動視差による立体視には支障はない。左右どちらの眼で見ているのか自覚できる場合がある。片眼しか見えない訳ではなく常に両眼が見えているのだが「見ている」眼と「見えている」眼とに意識的に切り替えることが出来る。それにより遠方と近方を左右で使い分ける習慣が身についた場合、左右の視力差が大きくなる事もある。


日常生活への影響

幼少期に斜視となった場合、症状の無い逆の目が利き目となる事が多く、 利き腕と利き目が違う事により字がうまく書けなかったり、まっすぐな線が引けないなどの症状が出る場合がある。

また、重度の斜視の場合は見た目状非常に目立つため、いじめや差別、人の目を真っすぐ見られない等の理由により対人恐怖症や、 コミュニケーション障害になる事も多い。近年では心のケア目的とした外科手術での見た目のみの修正も行われている。 見た目は普通となっても両眼視できるわけでは無いため、数年で戻ってしまう事も多いが多感な幼少期~青年期において 人と目を見て話す事が出来ないというデメリットを考えると精神的に大人になるまで定期的に外科手術を受けるのは悪くない選択である。

分類

目の位置による分類

  1. 内斜視
  2. 外斜視
  3. 上下斜視

状態による分類

恒常性斜視
常に斜視の状態であるもの
間歇(かんけつ)性斜視
普段は正常だが時々斜視の状態になるもの。

斜視眼での分類

交代斜視
左右の目が交代に斜視の状態になるもの
片眼斜視
斜視になる目が、どちらか片方の目に決まっているもの

その他の分類

廃用性外斜視
失明した眼は外転筋の作用により外を向く傾向があるため起きるもの。
固定内斜視
調節性内斜視

原因

遺伝によるものの他、乳幼児期の弱視、強度の近視や遠視などで目の筋肉バランスが崩れてしまうことによる。また、外傷による場合もある。

治療

斜視の手術による治療

斜視の原因により、基本的には異なる。眼科専門医、視能訓練士による検査により明確にその原因についてはっきりさせ治療計画をたてる。

調節性内斜視に代表される斜視では、眼鏡コンタクトレンズなどで屈折矯正を行うことにより、斜視を治療することができるケースもある。 また物を見る力をつけさせる(視能訓練)ことにより斜視を治療できる場合がある。 プリズム眼鏡等を用いる方法もある。

また、手術による治療法もある。眼を動かす外眼筋の位置をずらし、斜視を治療する方法である。小児においては全身麻酔下で行い、大人は局所麻酔で行う場合が多い。

手術の合併症・危険性

手術中

  • 筋肉の処置をする際に脈が落ちたり、止まったりする人が稀にいる。
  • 筋の縫合の際に眼球に穴が空くことがある。

手術後

  • 術前の斜視が強い場合は、一回の手術では治らない場合がある。

脚注

  1. ^ 米川明彦編『日本俗語大辞典(第3版)』東京堂出版 2006年 675頁

外部リンク


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