成井恒雄

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なるい つねお

成井 恒雄
生誕 1939年(昭和14年)10月17日[1]
日本の旗 日本 栃木県芳賀郡益子町
死没 2012年平成24年)3月
国籍 日本の旗 日本
職業 陶工
時代 昭和 - 平成
活動拠点 日本
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成井 恒雄(なるい つねお、1939年昭和14年)10月17日[1] - 2012年平成24年)3月[2])は、栃木県芳賀郡益子町の「益子焼」の陶工陶芸家

愛称は「ツーやん」。

益子の土地と土と共に生き、益子焼の職人や、陶芸家を志し益子町にやってくる若者たちから慕われた。

生涯

1939年昭和14年10月17日[1]栃木県益子町益子焼の窯元「円道寺窯」当主成井金治[3]の三男として生まれる。

1955年昭和30年)中学校卒業後、15歳から「父親からやれ」と言われ[4]、家業である「円道寺窯」の従事陶工となり、益子焼の職人たちと共に窯を手伝い陶器制作を身に付ける。
成井立歩成井藤夫の二人の兄や、田中福太郎黒子留吉瀬尾圭たち「蹴轆轤師」や合田好道の影響を受け、なおかつ日本各地の陶器の産地を巡り歩いたこともある[5]

1966年昭和41年)、27歳の時に幼なじみに請われて「大宿窯」の筑窯に参加したが、
1970年昭和45年)、31歳の時に「一人で自由にやるのが一番」と独立し[6]、益子に登り窯を筑窯した。

父・金治が若き頃の恒雄の作品を人知れず出品したため「国画会工芸部会入選」の実績もあるが 作家への道には行かず
「父の代からのものを大事にしたい」
と「一人の陶工」としての道を歩んだ[7]

その後は生涯益子に住み、蹴轆轤と登り窯で陶器を作り、
「やきものをやる人ややりたい人を大事にしたい」[8]
細工場を訪れる益子焼の職人や陶芸家志望の若者たちと共に囲炉裏を囲みながらお茶を飲み、多くの人たちから慕われた。

2012年平成24年)3月逝去。享年72。

生前の2009年平成21年)に撮影されていた成井恒雄の映像が用いられた
池田泰教による映像作品「3 PORTRAITS and JUNE NIGHT」が制作され
2014年平成26年)から各地で上映された[9][10]

2021年令和3年)3月13日から4月25日にかけて
道の駅ましこ」企画展示として 「師匠のことば 成井恒雄と仲間たち」展が開かれた[11]

人物

益子焼人間国宝である島岡達三
益子の風土そのもの。濱田庄司先生の遺産を正しく伝える陶工」と言わしめ、
財界人であった木村昌平からは
益子の老子」と謳われた[12]

弟子は取らない主義であったが、蹴轆轤の扱い方を教えて欲しいという陶芸家志望の若者が後を絶たず、それを断らずに受け入れていたため[6]、数多くの「弟子」がいる。

「円道寺窯」の従事陶工だった頃から職人たちの話相手をしていたため鳩や鶏や小鳥を飼うことも教えてもらうほど職人の生活や気質を知り尽くした[3]

若い頃は陶器の産地を巡って全国を放浪した事もあったが[12] 「益子の外を出ると気分が悪くなる」ようになってしまい[6]
「益子に生まれ、益子で育ち、益子で仕事をしている。それが嬉しい」と[4]
その生涯を益子で過ごした。

家族

父親は益子焼の窯元「円道寺窯」二代目当主の成井金治[3]

長兄は「円道寺窯」三代目だった成井立歩(正直)。
次兄は「益子焼窯元共販センター」と「益子陶芸村」の設立者であり「藤夫窯」で作陶もしていた成井藤夫[3]
弟には「よみうりカルチャー」で陶芸教室を行っている成井清治がいる[13]

妻は成井美沙子(故人)[14]

長男・成井亙(わたる)とその妻成井ふみ、そして長女の川崎桃子の三人で
父親が遺した窯元「成井窯」で陶作活動を続けている[15][16]

弟子

成井恒雄は「弟子は取らない主義」としていたが、教えを請う人たちが後を絶たず、これを拒まず教授していたため結果として数多くの弟子がいた。
成井恒雄から蹴轆轤を習った人たちは50人は越えると言われている[11]
なお弟子たちには自身のことを愛称である「ツーやん」と呼ばせていた。
以下、五十音順に記載する。

脚注

出典

  1. ^ a b c 近藤 1989, p. 121.
  2. ^ 「師匠のことば ~成井恒雄(ツーやん)と仲間たち」展 チラシ裏面
  3. ^ a b c d 下野新聞社 1999, p. 142.
  4. ^ a b 無尽蔵 1980, p. 58.
  5. ^ 益子焼 うつわギャラリー「野の花の道」チラシ裏面
  6. ^ a b c 下野新聞社 1999, p. 143.
  7. ^ 小寺 1976, p. 123,124.
  8. ^ 小寺 1976, p. 124.
  9. ^ 3 PORTRAITS and JUNE NIGHT|ふくしまのこえ
  10. ^ SOLCHORD/ALA-SCOPE 02「映像レーベル・ソルコードの作家たち」-2 池田泰教
  11. ^ a b 道の駅ましこ企画展示 師匠のことば 成井恒雄と仲間たち|道の駅ましこ 公式サイト. http://m-mashiko.com/event/2027/. 
  12. ^ a b 朝日新聞 2017年12月8日 朝刊 栃木県版 p. 24「とちぎの風 世を去った『益子の老子』」
  13. ^ [おうちで学びたいこと探そう] 陶芸 ―ふわっと一気にひく― | よみうりカルチャー
  14. ^ 「見捨てられたモノたち」を再生―中村学のオブジェ by Gallery noie (益子) - 新・どどの声
  15. ^ 成井窯 | りゅうのブログ
  16. ^ 「成井窯と益子」展 2021年7月31日(土)~9月5日(日) - TETOKA|手と花
  17. ^ あおき ずいこう|益子焼 作家一覧|Mashiko-DB.net
  18. ^ あを| 作家・窯元・販売店紹介 | 益子WEB陶器市
  19. ^ a b c かさましこ 窯のうつわたち”. 2022年10月18日閲覧。
  20. ^ a b 下野新聞社 1999, p. 216.
  21. ^ a b c d 益子の情報 toh+”. 2022年10月18日閲覧。
  22. ^ a b c 師匠のことば~成井恒雄(ツーやん)と仲間たち インタビュー閲覧 - tea bowl blues”. 2022年10月18日閲覧。
  23. ^ 下野新聞社 1999, p. 217.
  24. ^ 上村良夫| 作家・窯元・販売店紹介 | 益子WEB陶器市
  25. ^ 下野新聞社 1999, p. 218.
  26. ^ 益子焼 うつわギャラリー「野の花の道」チラシ裏面
  27. ^ 私と中国 2011年10月15日号|陶芸家 小堀 二三男さん|陶磁器の輸出がchinaの語源に”. 日中友好協会(日本中国友好協会) (2011年10月15日). 2022年11月13日閲覧。
  28. ^ 益子町「うたごえ喫茶 in 益子」@陶芸村「絵留」”. Les Essais d'Unevertu (2010年5月30日). 2022年11月13日閲覧。
  29. ^ 栃木県益子町の陶芸家・佐藤敬さんのインタビュー - sara - 桜羅 - 日本のよさを見直す心の旅へ【歴史と文化のストーリーを伝えて参ります】
  30. ^ 第七話 佐藤敬さん - ゆたり
  31. ^ 佐藤 敬さん|「colocal コロカル」ローカルを学ぶ・暮らす・旅する
  32. ^ 大切なこと - lib company
  33. ^ 下野新聞社 1999, p. 222.
  34. ^ たなか きいち|益子焼 作家一覧|Mashiko-DB.net
  35. ^ 下野新聞社 1999, p. 229.
  36. ^ 田中光(陶工房タナカ)| 作家・窯元・販売店紹介 | 益子WEB陶器市
  37. ^ 陶芸家 富野博司 - mevie
  38. ^ 冨野博司|土祭2021
  39. ^ a b 下野新聞社 1999, p. 223.
  40. ^ a b しんいちろう・ようこ窯 (@potter_nekochan) - Instagram
  41. ^ ツーやん(成井恒雄)作品 マイコレクション(8) - tea bowl blues
  42. ^ 原泰弘さんより器が入荷しました。 – 百福 工芸作家の器の店 東京南青山
  43. ^ 成井恒雄さんの窯 NEWS|SML エスエムエル
  44. ^ 下野新聞社 1999, p. 225.
  45. ^ 陶芸の町に生きて | 真岡新聞
  46. ^ 水野 正善 - 陶庫
  47. ^ 矢口良子| 作家・窯元・販売店紹介 | 益子WEB陶器市
  48. ^ B+Okinawa - Facebook
  49. ^ 下野新聞社 1999, p. 231.

参考文献

  • 小寺平吉『益子の陶工たち』株式会社 學藝書林〈新装第一版〉、1976年6月15日、253頁。 
  • 株式会社無尽蔵『益子の陶工 土に生きる人々の語らい』1980年12月20日、108頁。 
  • 下野新聞社『陶源郷 ましこ 益子の陶工 人と作品』1984年9月27日、151頁。 
  • 近藤京嗣『益子の陶芸家』1989年11月、256頁。 
  • 下野新聞社『とちぎの陶芸・益子』下野新聞社、1999年10月10日、239頁。ISBN 978-4882861096 

外部リンク