催眠

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催眠(さいみん、: hypnosis)とは、暗示を受けやすい変性意識状態のひとつ。また、その状態(催眠状態)、およびその状態に導く技術 (催眠法) を指す場合がある。催眠術(さいみんじゅつ : hypnotism)とも呼ばれる。

性質

意識の構成には「清明度」、「質的」、「広がり」の三つの要素が存在する。「清明度」の低下は一般に意識障害を、「質的」の変化(意識変容)はせん妄もうろう等を指し、「広がり」が低下した状態(意識の狭窄)を催眠状態と呼ぶ。別の観点から言えば、人間の意識は9割を占める非論理的な潜在意識と、覚醒時に論理的に思考する顕在意識とで構成されているが、催眠とは、意識レベルを批判能力を除外する潜在意識レベルに誘導することであるといえる。

身近にある催眠現象自己暗示

学生時代、苦手科目に悩まされる経験は誰にでもある。きっかけは、たまたま数学の小テストで赤点を取った、数学の先生を嫌いになったなどたわいもない事象ではあるが、これを契機に「自分は数学に弱い」というマイナスの自己暗示を掛け続けてしまう。その結果、理性的な顕在意識でいくら数学を頑張っても、潜在意識でプログラムされた「数学嫌い」がより強固に働き、挫折してしまうのである。潜在意識の力は強固であり、例えば、出題箇所のヤマが当たるか否か、といった直感にまで影響を及ぼし、前述の「数学嫌い」を悪循環をもって固定化してしまう。

催眠による現象

催眠状態といえば特別な状態に聞こえるが、電車の中でうたた寝をしている状態に近く、誰しもが入る事の出来る現象である。

催眠状態では意識が狭窄しているので、外界からの刺激や他の概念が意識から締め出され一つの事象が意識を占領することによって、暗示のままに動かされる。この暗示によって様々な幻覚が作り出されてくる。また、潜在意識に働きかけて対人恐怖症やアガリ症等を治療する。上述の数学嫌いと同様に、たわいもない事象がきっかけでこれらの症状が発症することが多いからである。

しかし催眠状態というような特別な状態がはっきりと存在している訳ではない。

催眠法は、心理的な悩みを改善する目的で行われる催眠療法 (ヒプノセラピー) と娯楽を目的に行われる舞台催眠 (ショウ催眠) とに大別される。

催眠を医療に用いる試みもアメリカでは積極的に行なわれているが、日本では積極的な医療機関は限られている。一般的には、まず薬物療法など、他の治療法を十分に試みた上で、適用可否の判断を含めて、訓練を受けた専門家により行われるべきである、とアメリカではされている。

サブカルチャーの書籍には、催眠音声を使って自慰をする「催眠オナニー(サイニー)」というものがある[1]

俗にいう催眠商法は、催眠と呼称されているが舞台催眠的な方法で物を買わせるのではなく、始めに一つの部屋に大勢の人が入れられ、早いもの順に競わせるようにして品物をただ同然であげると言い、そして最後にその条件反射を利用して安い布団などを高値で買わせるといった心理学全体の技術を応用した詐欺である。

催眠術という呼称

メスメルの動物磁気実験から発祥し、それに様々な実践的実験が試されてきたものをメスメリズム(催眠術)という。それが日本に入って来たときに催眠術と名付けられた。 日本に入って来た当時「眠りに催す」ように見えたから付けられたのだが、その2週間後に被験者は眠っている訳ではないと気付いた、しかしすでに催眠術という言葉は日本中に広まってしまい訂正することができなかった。

メスメリズムとは、ヒプノシス(催眠)の元の呼ばれ方である。19世紀のイギリス医師ジェイムズ・ブレイドの造語だとされる。 現代の催眠に携わる人の間では「催眠は魔術的なものではなく科学であるから、催眠術ではなく催眠・催眠法という表現を使うべき」という主張もある[2]

現代で催眠術という場合、特に舞台催眠 (: stage hypnosis、ショウ催眠)を指す場合がある。 一般のほとんどの人が「催眠術」をTVなどでよく見る、いわゆる「ショウ催眠」としてしか認知していないために「超能力」「魔術」などといったものと同一視し、誤解されがちであるが、現代の催眠は心理学、脳科学、そして体の構造を利用した「技術」である。

関連書

  • 吉永進一 『催眠術の黎明』近代日本臨床心理の誕生 クレス出版 ISBN 4877333142
  • 中杉弘 『催眠術の神秘』 日経企画出版局 星雲社 ISBN 479524782X

関連項目

脚注

  1. ^ サイニー研究会 『さあ、やってみよう~催眠オナニー入門~』 メディアックス、2010年。ISBN 978-4862016263
  2. ^ 武藤安隆 『図解雑学 催眠』ナツメ社、2001年、62頁。ISBN 978-4816330803

外部リンク

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