伴大納言絵詞
伴大納言絵詞(ばんだいなごんえことば、とものだいなごんえことば)とは、応天門の変を題材にした平安時代末期の絵巻物。『伴大納言絵巻』ともいう。日本の国宝。『源氏物語絵巻』、『信貴山縁起絵巻』、『鳥獣人物戯画』と並んで四大絵巻物と称される。作者は常盤光長(ときわみつなが)とされている。
出光美術館(東京)が1982年(昭和57年)、若狭国(福井県)小浜藩主の子孫から32億円で譲り受けた。
概要
応天門の変のおよそ300年後、後白河法皇が『年中行事絵巻』とともに常磐光長に描かせたと推定される。作成年については、1177年説[1]があるも定説にならず、不明である。冒頭の詞書は失われているが、内容は『宇治拾遺物語』巻第十の「伴大納言、応天門を焼く事」で補うことができる。
という構成になっている。
平安時代の人々を描いたものとして優れており、特に検非違使の活動を伝えるものであり、史料としての価値も高い(但し、人物は院政期のものとされる)。平安時代末期の後白河院政期に成立した絵巻ものであり、かつてはボストン美術館の吉備大臣入唐絵巻などとともに若狭・酒井家に伝来した。信貴山縁起絵巻とならび称される日本の絵巻物の最高峰の一つ。
特徴
人物や炎の表現に優れ、大胆な画面構成も高く評価されている。
日本史の教科書によく描かれている、事件の真相解明のきっかけとなった子供の喧嘩の場面では「異時同図法」という手法が用いられている。これは、一つの場面の中に
- 舎人の子供と大納言伴善男の出納の子供が喧嘩しているところに出納が駆けつける
- 出納が舎人の子供を蹴飛ばす
- 出納の妻が子供を連れて帰る、という三つのシーンを一つの場面の中に描いたものである。
2004年(平成16年)9月から東京文化財研究所が、蛍光X線分析法や高精細デジタル画像解析などの最新技術で化学的分析を行っており、顔料には純度の高い品質のよい物(おそらくは輸入品)が使用されている事や、人物や炎については下書きがなく一気に描かれたことなどが判明した。分析にはまだ数年かかる見込みである。
模写
伴大納言絵巻の模写は5点ほどが存在するとされている。2010年になって、中野幸一早稲田大学名誉教授が1980年代前半に購入した新たな模写の存在が明らかにされた[2]。この模写では、色彩や文様の精細な復元に加えて、原本では剥落してしまった人物などの部分が巧みに復元されており、衣服の模様などが上記のX線調査の結果と大部分一致することが判明するなど、今後の研究における重要な資料になると期待されている。この模写は、収められていた桐箱の張り紙の記述から、幕末の画家冷泉為恭もしくは彼の一門が手がけたとみられる。
脚注
参考文献
- 黒田日出男『謎解き 伴大納言絵巻』(小学館、2002年) ISBN 4-09-626221-8
- 倉西裕子『古代史から解く 伴大納言絵巻の謎』(勉誠出版、2009年)ISBN 978-4-585-05406-1
関連項目
外部リンク
- やまと絵/収蔵品の紹介/出光美術館・・・出光美術館の紹介ページ