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交換関係 (量子力学)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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より一般的な導入として、交換子も参照

交換関係(こうかんかんけい、Commutation relation)は演算子としてあらわされた物理量が満たす量子力学特有の関係。

定義

二つの演算子(A, B とする)に対して、

交換子 (commutator) と言う。交換子も演算子であり、特にA, Bがともにエルミートであるとき、交換子は歪エルミートとなる。量子力学において、この交換子を規定する関係が交換関係である。

普通の数はかける順序を逆にしても値は同じだが、量子力学における演算子は必ずしもそうではなく、[A, B ] が0にならない場合がある。 [A, B ] = 0 のとき、AB可換である、あるいは AB交換するという。 [A, B ] ≠ 0 のとき、AB非可換である、あるいは AB交換しないという。

性質

交換子で定義される交換関係は次の性質を満たす。

  •  (交代性)
  •  (線形性)
  •  (ライプニッツ則)
  •  (ヤコビの恒等式

正準交換関係

演算子には物理量に対応するものがあり、特に正準共役な変数同士の交換関係を正準交換関係(Canonical Commutation Relations;CCR)と言う。正準共役な関係にある、座標運動量において、座標を qi, 運動量を pj とすると、

という 交換関係が成り立つ(でhはプランク定数)。勿論、古典論では上記の結果はゼロ([q, p] = 0)となる。

反交換関係

反交換子(anticommutator) といい、これから規定される関係を、反交換関係 と言う。特に正準共役な変数同士の反交換関係を正準反交換関係(Canonical Anticommutation Relations;CAR)と言う。という表式もしばしば用いられる。反交換子もまた演算子であり、特にA, Bがともにエルミートであるとき、反交換子もまたエルミートとなる。反交換関係はフェルミ粒子などを扱う際に用いられる。

ポアソンの括弧式

解析力学において、 正準座標 正準運動量の関数に対して、

で定められる量をポアソンの括弧式という。 ポアソンの括弧式は次のような関係式を満たしている。

  • a, b は定数)
  • ヤコビの恒等式

交換関係と同様の関係式を満たしており、量子力学での交換関係は古典力学のポアソンの括弧式に相当する。(正準量子化の項も参照)

関連項目