ミサ・ブレヴィス (ハイドン)
ミサ・ブレヴィス ヘ長調 Hob.XXII:1(Missa Brevis in F)は、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンが1750年ごろに作曲したミサ曲。現存するハイドンの曲のうちでもっとも古いもののひとつである。1806年に作曲家自身によって編曲された。
なお、ハイドンにはもう1曲『ミサ・ブレヴィス』という変ロ長調の曲があるが(Hob.XXII:7)、そちらは『小オルガン・ミサ』の通称で呼ばれることが多い。
概要[編集]
ラールセンとランドンは1749年から1750年にかけて、ガイリンガーは1750年代のはじめのものと推定している[1]。ハイドンがまだウィーンのシュテファン大聖堂の少年合唱団員であったか、合唱団を解雇されて間もないころの作品ということになる。
なおアロイス・フックスによれば、『ロラーテ・ミサ』(Rorate coeli desuper, Hob.XXII:3)がハイドンの最初のミサ曲である。『ロラーテ・ミサ』は長年失われていたが、1957年にランドンが再発見した。しかし失われた『ロラーテ・ミサ』と発見された曲が同一かどうかには疑問が出されている[2]。
ハイドンは最晩年の1805年になってパート譜を入手し、そこからスコアを作成して、1749年という年を記した。また新しく管楽器を書き加えた第2版を1806年2月に完成したが、この版は出版されなかった[2]。ただしこの編曲はハイドン本人ではなくヨーゼフ・ハイデンライヒによるかともいう[3]。
単純でほぼホモフォニックな音楽であり、器楽部分も簡単である。シュテファン大聖堂の楽長であったゲオルク・ロイター2世の影響が見られるという[4]。
編成[編集]
1806年版ではフルート、クラリネット2、ファゴット2、トランペット2、ティンパニを追加[5]。
曲の構成[編集]
Kyrie[編集]
アレグロ。キリエ、クリステ、キリエ(2回目)それぞれが合唱で始まり、二重唱が後を続ける。明るく単純な曲である。
Gloria[編集]
アンダンテ。後のハイドンのミサ曲のように部分に分かれず、一気に歌われる。
Credo[編集]
アレグロ。全体に速い曲だが、「et incarnatus est」から「et sepultus est」のキリストの生涯の部分はアダージョで短調の音楽になり、合唱のみで歌われる。
Sanctus[編集]
「Sanctus」はアダージョで歌われるが、「Pleni sunt」以下はアレグロになる。
Benedictus[編集]
アンダンテのゆったりした音楽で、器楽による序奏につづけて、二重唱によって歌われる。ホザンナはアレグロの合唱で歌われるが、すぐに終わる。
Agnus Dei[編集]
アダージョ。静かな短調の曲で、合唱のみによって歌われる。「dona nobis pacem」で長調に転じ、二重唱が加わってアレグロで歌われる。
脚注[編集]
参考文献[編集]
- 大宮真琴『新版 ハイドン』音楽之友社〈大作曲家 人と作品〉、1981年。ISBN 4276220025。
- Larsen, Jens Peter (1982) [1980]. The New Grove Haydn. Papermac. ISBN 0333341988
外部リンク[編集]
- ミサ・ブレヴィスの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト