ペーパーバック

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。112.140.0.224 (会話) による 2016年1月3日 (日) 13:41個人設定で未設定ならUTC)時点の版であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

ペーパーバック: paperback)もしくはソフトカバー: softcover, softback)とは、安価なに印刷され、ハードカバーの様に厚紙による表紙を用いていない形態ののことである。並製本(なみせいほん)、仮製本ペーパーカバーともいう。

分類

そもそもはハードカバーの対義語である。本来は、製本上の分類であるため、ペーパーバックとソフトカバーは同一のものである。

ただし、日本の出版界では少し違う意味合いで使用されていて、ペーパーバックの語は「カバーのない洋書の並製本」に対して使用されることが多い。

以下の日本の項で、日本における代表的なペーパーバック仕様の本があげられているが、これらの本はペーパーバック仕様であってもペーパーバックとは呼ばない。

近年ではコンビニエンスストアで、漫画の過去の人気作などをペーパーバック仕様の廉価版として再版するケースが非常に増えており、一般にコンビニコミックと呼ばれる。

また現在では、デジタルブックと比較し従来の書籍をペーパーブックと表現する場合が見られるため、電子書籍全般を扱うコミュニティーなどでは解釈に注意を要する。

製本

簡便な出版物であり、コストを抑えるため、のりで背を貼り付けた無線綴じや、雑誌などで見られる針金ホッチキス)で綴じる平綴じ中綴じを用いることが多く、ハードカバーの本より価格が安い。

歴史

18世紀までの書籍の表紙は、羊皮紙を使用し分厚く豪華な装飾のあるハードカバーだった。19世紀、製紙工業の発達と印刷技術の発展に伴い、ペーパーカバーの低価格書籍が登場した。1930年代、本格的なマスマーケット・ペーパーバックの出版社が次々と設立され、「ペーパーバック革命」と呼ばれるほど良く売れた。ドイツのアルバトロス・ブックスやイギリスのペンギン・ブックス、アメリカのポケット・ブックスが有名である。1950年代、トレード・ペーパーバックが始まった。

ヨーロッパ

1809年、カルル・クリストフ・トラウゴット・タウヒニッツがギリシャ・ラテン語のペーパーカバー本を出版。

1837年、クリスチャン・ベルンハルト・タウヒニッツ(男爵)が、ライプツィヒでタウヒニッツ版と呼ばれる英語ペーパーバックを発売。以後100年間、タウヒニッツ社が市場を独占。

1932年、ハンブルクのアルバトロス社が英語ペーパーバックに参入。18 x 11.1センチのポケットに入りやすいサイズで、ジャンル別にカバーを色分けするなど工夫を凝らした。タウヒニッツ社は経営状態が悪化し、アルバトロス社に吸収合併された。

1935年、イギリスのペンギン・ブックスが英語ペーパーバックに参入した。サイズや色分けなどは、アルバトロス社のアイデアを採用した。ヨーロッパでの販売権しかないアルバトロス社に対して、ペンギン・ブックスはイギリス連邦全体に販売することが出来た。6ペンスという薄利多売で、アルバトロス社との競争に勝利した。アルバトロス社は経営不振となり第二次大戦後、倒産した。

アメリカ合衆国

1829年、ボストン知識普及協会が、ペーパーカバー本を出版した。以後、ペーパーバックの出版競争が繰り広げられた。1900年代に入るとペーパーバックの他に、パルプ・マガジンが流行した。

1939年、アメリカで初のペーパーバック専門出版社である、ポケット・ブックス社が設立された。同年、第二次世界大戦が始まった。前線の兵士の需要によって、ペーパーバック産業は大きく成長した。

ポケット・ブックス社に続いて、米国ペンギン・ブックス、バンタム・ブックス、バランタイン・ブックスなど様々な会社が設立された。

1950年代に入ると、ハードカバーの出版社の子会社が、トレード・ペーパーバックの出版を始めた。

日本

  • 1938年、欧米のペーパーバックを参考に岩波新書がペーパーバック仕様で創刊された。ただ、1982年から他社の新書同様にカバーがかかった体裁になった。
  • 1970年1月に、小学館から、「別冊ビッグコミック 特集ゴルゴ13シリーズ」の第1集がB6のペーパーバック仕様で発売された。B6の平綴じ、カバーなく、増刷もされない。いわゆるコンビニコミックの元祖である。このシリーズは現在も同じ体裁で刊行が続いている。
  • 1979年9月20日、最初の日本語版のハーレクインロマンスが発売される。最初期のものはジャケットがあったが、のちにペーパーバック仕様に変更され、今日にいたっている。
  • 1999年7月から、ペーパーバック仕様のコンビニコミックの大量刊行が始まった。
  • 2015年5月、小学館が復刊書だけの新レーベル「P+D BOOKS」を立ち上げた。B6のペーパーバック体裁でコストをおさえている。[1]

なお、講談社のブルーバックスはいかにもペーパーバック仕様のようなイメージを与える名であるが、カバーがかかっている。

洋書におけるペーパーバックの種類

マスマーケット・ペーパーバック

マスマーケット・ペーパーバック (mass market paperback)とは、廉価・小型のペーパーバックである。ハードカバーの再版から始まった。A-formatとも呼ばれ、サイズは 110mm x 178mm である。

アメリカでは1960年代までは、新聞や雑誌と同じような扱いで、ニュース・スタンドやドラッグストアで売られていた。1970年代、大型チェーン書店が積極的に取り扱った事で、一般的な小売書店でも売られるようになった[2]

トレード・ペーパーバック

トレード・ペーパーバック (trade paperback)とは、大型のペーパーバック。ハードカバー(トレードブック)のソフトカバー版で、書き下ろしが多い。B-formatとも呼ばれる。サイズは 130mm x 198mm である。マスマーケット・ペーパーバックより高価である。

1950年代に始まった。ダブルデイのアンカー・ブックスが有名。ペーパーバックが一般的な小売書店で売られる契機となった[2]

脚注

  1. ^ 日本経済新聞2015年4月12日朝刊読書面
  2. ^ a b 『アメリカの出版・書店』

参考文献

  • 金平聖之助『アメリカの出版・書店』1992年 ISBN 978-4893862303
  • ピート・スフリューデルス『ペーパーバック大全 USA 1939‐1959』1992年 ISBN 978-4794960726

関連項目