スイッチング電源
スイッチング電源(スイッチングでんげん)は、入力電力から希望の出力電力を得る電力変換装置において、電力を変換・調整するためにスイッチング素子(電気回路の一部をON/OFFできる素子)を用いた電源装置。その中で特に、直流電力を別の直流電力に変換するDC-DCコンバータ、および交流電力を一定の直流電力に変換する整流装置によって構成された電源装置を指すことが多い。それらはスイッチングレギュレータとも呼ばれる。
電圧降下をジュール熱として放出するシリーズレギュレータとは異なり、電力の損失を少なくできるため、高精度・高効率を得ることができる。スイッチング電源には「降圧(ステップダウン)、昇圧(ステップアップ)、昇降圧」という分類と「定電圧、定電流、定電力」という分類がある。
この電源方式では、入力電圧とON/OFFの時間の割合(デューティー比、デューティーサイクル)で出力電圧が決定される。このON/OFFの周波数は高いほどON/OFFによる電圧の変動(リプル)が小さくなり高速な応答が可能となるが、十分に配慮して回路を設計しないと電磁波(ノイズ。不要輻射)を撒き散らしてしまう。
ちなみに、商用スイッチング電源の出力電圧制御は、AC電源整流後の直流をスイッチングするための高周波のデューティ・サイクルを、負荷(出力)と並列接続の電圧検出回路に接続した「フォトカプラ」(発光素子と受光素子を組み合わせた部品)の発光光量で「負帰還」をかけること、により制御している。従って、電圧検出回路の回路定数を変更することでスイッチング電源の出力電圧を固定-可変としたり、ある程度下げる改造は可能である(出力電圧を上げる改造も可能だが回路に過負荷がかかるため、勧められない)。
一般の電源には定電圧型が使用されるが、高輝度LED点灯回路など電圧による制御が困難・非効率な場合には定電流型を使用する[1]。
スイッチング制御方式
スイッチング周波数が高いほど、受動素子の小型化と高速応答が可能になる。
軽負荷時にスイッチング周波数を下げて、スイッチング損失を減らし待機電力を減らす制御も行われるようになってきている。
また、負荷素子の電圧の多様化に伴い、多種類の電圧を同時に出力する集積回路も使用されている。
降圧型(ステップダウン)
降圧型は入力電流をON/OFFし、コイルとコンデンサを用いた平滑回路によって平均化して出力する。出力電圧は最大で40~60V(スイッチング素子毎に違う)で、出力電流は市販のデバイスでは最大100A程度となる。
現在では効率が最大で97%程度まで高められており大電力を必要とする回路に使用されているが、 PC用電源などではコスト削減を追求するあまり、効率60%程度で力率も低い電源が使われているものが多い。
また、降圧型は多相(マルチフェーズ)もあり、これを使用すると出力波形が直流に近くなることから、電圧・電流リップルが非常に小さくなる。
主な部品はスイッチング素子(大電力・高速スイッチング用)、コンデンサー、コイル、ダイオード(主にショットキーバリアダイオード、フォトカプラ(出力電圧負帰還用))である。
昇圧型
100V交流を使用する機器を車内で使用する場合などに使われるインバーターに使われる。インダクタの逆起電力を利用することで入力より高い電圧を取り出す仕組みになっている。
昇降圧型
フライバック式
トランス(高周波用トランス、パルストランス)にパルスを入力し、相互誘導によって正負電圧を作り出す方式である。この方式を利用した場合、入力と出力の間を絶縁することができるので、1000V以上の高電圧も発生させることができる。
出力電圧は、入力電圧、トランスの巻き数比、デューティーサイクルによって決定される。
その他の方式
コイルが不要で、携帯電話など小型機器に多く使用されている「スイッチトキャパシタ」、デジタル量によって出力電圧を高精度に設定する「VID」などがある。