シダ類

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シダ綱
分類
: 植物界 Plantae
: シダ植物門 Pteridophyta
: シダ綱 Pteridopsida
下位分類
  • 本文参照
シダ類の若芽。毛や綿毛で覆われ、山菜であるゼンマイなどの特徴をもつ
イワデンダ科クサソテツの胞子嚢

シダ綱(シダこう、学名Pteridopsida)は、シダ羊歯、歯朶)を含む植物である。上位分類等に関してはシダ植物門を参照のこと。

特徴

シダの植物体は、多くのものは立ち上がらないから羽状複葉のを出すものである。

茎は短いか地面を這い、そこから葉を空中に伸ばす。葉は巻いた状態で作られ、巻きがほぐれるようにして葉を伸ばす。木生シダ類は直立した太い幹を作り、高さが10mに達するものがある。葉は羽状複葉のものが多いが、単葉のもの、特殊な分かれ方のものもある。鳥の羽のような形になるものが多いので、一般には複葉を構成する個々の葉身を小葉(しょうよう)というが、シダ類に限っては羽片(うへん)という。

シダの栄養体は胞子体であり、普通、葉の裏面に胞子を作る。胞子は胞子のうの中に形成され、この時に減数分裂が行われる。胞子のうは普通は集まって小さな固まりになり、これを胞子のう群(ほうしのうぐん、ソーラス)と呼ぶ。胞子のう群は葉の裏面に一定の形で配列し、分類上の重要な特徴とされる。 多くのものでは、十分成長すれば、どの葉にも胞子のうがつくが、種類によっては胞子をつける葉が限られ、葉の形が違っていることがある。その場合、胞子をつけるのを胞子葉、つけないものを栄養葉とよぶ。普通、胞子葉は栄養葉より背が高く、細い。また、一枚の葉で、その一部に胞子をつける部分が分かれるものもある。

胞子は発芽すると前葉体と呼ばれる薄膜状の植物体となり、その裏面に造精器と造卵器が作られる。造精器内に作られた精子は、雨水など自由な水がある状態で泳ぎだし、造卵器の中のまで泳ぎ着くと、そこで受精が行われる。受精卵はその場で発芽し、前葉体から栄養をもらう形で成長し、植物体が姿を見せる。その後、前葉体は枯れて、植物体は独り立ちする。

生息環境

前葉体での受精に水を必要とする以上、十分な水のある条件で生活するものであるが、植物体そのものはそれなりに乾燥に耐えるものもある。乾燥した岩の上に生息するものもある。しかし、やはり熱帯雨林のような条件で種類が多い。水中生活に対応したものもある。特に、水生シダ類は、一見シダとは思えない形をしており、興味深い水草である。

人とのかかわり

ワラビゼンマイなど、山菜として利用されるものがいくつかある。その一部は、商品として流通するほど、広く利用される。また、ヘゴなどの幹が、洋ラン栽培など園芸用資材として利用される。

シダ類は、葉が美しく、押し葉標本もきれいに仕上がる。しかも種類が多く、変異に富み、さらに雑種が多い。さまざまな理由から愛好者、コレクターマニアがおおく、それによって研究が進んだ面もあるが、過度の採集によっていくつもの種が危険な状態になっている例がある。また、分類も、細分傾向が強いように思われる。 また、オオタニワタリなど、鑑賞価値の高いものは、観葉植物として古くから栽培されてきた。

海外のものでは、ビカクシダ類(コウモリラン)が有名である。ただし、そのための採取により、これらはその個体数が減少し、絶滅に瀕している地域もある。

分類

従来より薄曩シダはまとまった分類群として扱われ、ひとつの目等とすることが多かった。最近の分子系統学においても、狭義水生シダ類を含めてこの群が単系統群であるという結果が出ている。これがすなわちシダ網にあたる。

以下、Smith et al. 2006からの分類体系を引用する。なお、和名がなく学名由来の科名のつづりは「南太平洋のシダ植物図鑑」[1]を参考にした。

シダ綱 (Filicopsida) (ウラボシ綱 (Polypodiopsida)とする場合もある。)

上記にない科

分類と同定

シダの同定には独特の用語が用いられ、出現頻度の多い言葉はソーラス(胞子嚢群)、葉軸、羽軸、羽片、小羽片、鱗片、苞膜などである。 たとえば、「ソーラスは小羽片の周縁寄りに」、「苞膜の縁はギザギザで」、「葉軸基部の鱗片は膜質で」などと進めていく。 チェック項目が少ないのでコツを覚えれば識別はしやすいかもしれない。ソーラスの形にはいろいろあるが、たとえば以下のようなものがある。

  • 葉の淵に沿ってソーラスが続くもの。
  • 丸いぽつぽつがびっしりと付いているもの。
  • そのぽつぽつの形状が馬蹄形、鉤型、線形のもの。 
  • 細い線形のものがやや平行に並んでるもの。
  • 葉脈のように分岐してゆくもの。

シダ類には同定の難しいものも数多い。これは、かなりの群において無配生殖が行われていること、逆に種間雑種が様々に存在することなどにもその原因がある。

たとえばフモトシダはその名のとおりフモト環境で見られるが、他種との雑種か形態変異かフモトカグマ、クジャクフモトシダ、オドリコカグマなどが知られ、それらの特徴は暖地に多いイシカグマへと連続する。それらがまたコバノイシカグマ科の別種と雑種を作り、混迷を極める。

また、が咲かないことから種子植物に比べて大きな特徴が少ない点も大きい。いわば葉の形だけで分類するようなものであり、全く異なる系統のものが似た姿を取る例は多数ある。それに、成熟した大きさが掴みにくいという点もある。たとえばイワガネソウなどの若い個体は、コタニワタリなどによく似る。

外部リンク

出典

  1. ^ 国立科学博物館編『南太平洋のシダ植物図鑑』、東海大学出版会、ISBN 978-4-486-01792-9