クメン法
クメン法(クメンほう、英: Cumene process)はクメン(イソプロピルベンゼン)を酸化し生じた過酸化物を酸で分解する事でアセトンとフェノールを得る化学合成法で、工業的に広く用いられている。クメン法は高等学校の化学の教科書にも掲載されている有名な合成法の一つである[1]。
解説
ベンゼンとプロピレンをフリーデル・クラフツ反応で付加反応させてクメンを製造し、酸化するとクメンヒドロペルオキシドができる。これを酸で転位させることによってアセトンとフェノールができる。
同様の経路はトルエンからクレゾールを合成する際にも用いられている。
クメン法は1944年に Hock により報告された。第二次世界大戦は航空機の戦いであり、圧縮率の高いレシプロエンジンを駆動するためにはオクタン価の高い航空用ガソリンが必要となった。解決策としてイソプロピルシクロヘキサン C6H11CH(CH3)2 のように枝分かれの多い脂環式炭化水素によりオクタン価を上げる提案がされた。この原料としてクメンを製造するためのプラントが建設されたが、すぐに終戦を迎え、その後はジェット機の時代となったためクメン・プラントは目的を失ったが、クメンが常圧で空気中の酸素によって酸化されやすいことがわかり、生じたクメンヒドロペルオキシドを効率よく分解する方法も確立されたことで、プラントは有効利用された。副産物の処理に困るアルカリ融解法や、高圧容器を必要とするクロロベンゼンを出発物質とするシェル法もあったが、既にプラントでの大量生産が確立されているクメン法が主流となった。
出典
- 萩原俊紀、クメン法-その中身はどうなっているのか(基礎化学品製造の実際と高校での教育実践) 化学と教育 59巻 (2011) 10号 p.510-513, doi:10.20665/kakyoshi.59.10_510
脚注
- ^ 藤原鎮男ら「詳説化学」第3版, 231,245.三省堂(1992).