カシラエビ綱

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カシラエビ綱
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
亜門 : 甲殻亜門 Crustacea
: カシラエビ綱 Cephalocarida

カシラエビ綱は、甲殻類に含まれる高次分類群のひとつである。1科(2科)からなるカシラエビ類のみを含むが、甲殻類で最も原始的と考えられている群のひとつである。

概説

これに属する動物は海産の小型動物で、大きさはせいぜい4mmの、やや細長い節足動物である。潮間帯から1500mまでの海底から発見されている。単純な形の動物で、体の構造の各所に甲殻類としては非常に原始的と取れる構造が見られるため、甲殻類で最も原始的なものとの説もあるが、異論もある。

外部形態

細長い動物で、触角や脚などは長くなくて目立たない。体は大きく頭部・胸部・腹部の三つに区別できる。

頭部は幅広くなって頭盾を形成し、背面には特に目立つものはない。内部には複眼がある。下面には二対の触角と大顎、二対の小顎がある。第一触角は単純で第二触角は一見では単純に見えるが基部から短い側枝が出た二叉型。大顎・小顎は二叉型の付属肢の特徴が色濃く、特に第二小顎は続く胸部の付属肢に近い形となっている。

胸部は頭部に続いてやや幅広く、短い9節からなり、それぞれに一対の付属肢がある。1-7節のそれは葉状肢となっている。基部の節の上に6節を含む歩脚状の内肢と、先端が葉状に広がった外肢からなり、外肢の基部からはさらに葉状の偽副肢がある。頭部に続く二節の付属肢は顎脚として分化する例が他の群には多いが、この類ではそのような分化は全く見られない。第8肢は内肢がなく退化傾向。第9肢はさらに小さくなっており、受精卵はここで把持される。なお、この最後節は腹部の第一節であると見なす判断もある。

腹部は腹部は10節からなり、棒状で付属肢がない。末端の肛門節には一対の尾叉あるいは枝状肢があり、後方に伸びる。

内部構造

生殖巣関連では、雌雄同体であり、同一個体に卵巣と精巣が見られる。卵巣は頭部後方にあり、ここから輸卵管が後方に向かい、卵細胞は腹部腹面に移動して成熟、前方へ向かう輸卵管を通る。精巣は腹部腸管背面に一対あり、輸精管が前方へ伸びる。それらは共通の生殖穴を第6胸肢の基部に持っている。

神経系ははしご状。

生殖と発生

上記のように雌雄同体で、自家受精が行われている可能性が示唆されている。受精卵は第9胸肢で把持され、孵化した幼生はメタノープリウスに相当する。

系統

この動物の体の構成は独特で、頭部は明らかな甲殻類の特徴を持つが、胸部の節は鰓脚綱などより少なく、軟甲綱などよりは多い。また腹部に付属肢を持たない点で鰓脚類など共通で、軟甲類などと大きく異なる。

他方で、はしご状神経系や胸肢の分化の程度が低い点など、同規体節的な特徴はこの類の原始的性質を示すものと考えられる。特に第二小顎が胸部付属肢に近い構造であることはその点でも重要とされる。また、全体的な形態として頭部が幅広いこと、尾又があること、後方の胸肢で卵を保持する点などからカイアシ類との類似が指摘された。付属肢の構造などからもそのこととムカデエビ類との類縁が主張され、現在では分子系統学的なデータもこれを支持する。

分類

最初に発見されたHutchinsoniella macracanta は、1953年に北アメリカの大西洋岸でH.L.Sandersが底生動物の調査で採集した。彼はこれを研究し、1955年に新科新属新種として発表した。属名はジョージ・イヴリン・ハッチンソンにちなむ。現在では5属10種が知られており、そのうち一種カシラエビが日本から知られている。化石種は知られていないが、古生代の甲殻類であるレピドカリスとの共通点が指摘されたことがある。ただしそちらは現在では鰓脚類として扱われている。

Cephalocarida カシラエビ綱

  • Brachypoda カシラエビ目
    • Hutchinsoniellidae ハッチンソニエラ科
      • Chiltonella
      • Hampsonellus
      • Hutchinsoniella
      • Lightiella
      • Sandersiella:カシラエビ

参考文献