Intel 740

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Intel 740 (i740) は、1998年2月に発表されたインテルが初めて製品化したPC向けグラフィックスアクセラレータチップ[1]。Real3D社(ロッキード・マーティン社のグラフィック部門が分社化された会社)と共同開発された。

本製品はIntel Graphics Technology (IGT)のブランド名で展開され、Intel 810/815にも同様のコアが搭載された。その後はIntel Extreme Graphicsに引き継いでいる。

本項では、Intel 740の後継製品として発表されたIntel 752についても取り扱う。

Intel 740搭載AGPビデオカード

概要[編集]

Intel 740[編集]

Intel 740 (i740) は、インテルがReal3D社と共同開発した初のPC向け3Dグラフィックスアクセラレータチップである。開発コードネームはAuburn

0.35μmプロセスルールで製造されるグラフィックスコアはパイプライン構成をとり、ビデオメモリは64bitのメモリバスで接続されたSDRAMまたはSGRAMを最大8MBまで対応する。またメインメモリをビデオメモリとして扱えるDirect Memory Executionにより小容量のVRAMしか搭載しない製品でも3D描画が可能である。ただしMCなどの動画再生支援機能は搭載していない。

インターフェースはAGP 2xにまで対応し、外部トランスミッタを搭載することでDVIなどのデジタル出力にも対応している。サブピクセル単位でデータ補完を行えるPrecise-Pixel Interpolation の採用により高精度の映像表現が可能であるとしている。

これらの技術を採用したIntel 740のグラフィックスコアはIntel Graphics Technology (IGT) のブランドネームが与えられている。

Intel 752[編集]

1999年4月に発表[2]されたIntel 752 (i752) は、i740以来のIGTファミリ第二世代製品である。開発コードネームはPortola

基本的な部分はi740と共通であるが、MCによる動画再生支援機能を搭載している。またマザーボード上にオンボード搭載される用途を見越し、インテル アップグレーダブルAGPとしてオンボード搭載されたi752とAGP 4xスロットを共存させることも可能としている。

i752は実際には発売されないままキャンセルとなり、i752の後継製品としてIntel 754が開発されているという噂も存在した[3]が、実際にはIntel Xe発表まで20年以上にわたり、インテルは外部GPU市場から撤退していた[4]

IGTコア搭載チップセット[編集]

IGT統合i815チップセット(ノースブリッジ

i752・i754がともにキャンセルとなりインテルの単体グラフィックチップはi740を以って終了したが、IGTコア自体はその後もインテルのチップセットに統合されるオンボードグラフィックコアとして採用された。IGTコアを搭載したチップセットにはIntel 810Intel 815が存在する。

これらチップセットに搭載されたIGTコアはi752コアをベースとしている。単体のグラフィックチップと異なり、フレームバッファとして専用のビデオメモリをサポートせず、メインメモリ領域の一部をビデオメモリとして利用するUMA方式を採用している。この為、性能的にはi752よりさらに劣り、さらに32bitカラーもサポートしなかったものの、一般的なオフィス・インターネット用途程度には十分な性能を有しており、安価かつ省スペースを実現できる為に広く採用された。 また性能向上技術として、Intel 810DCおよびIntel 815ではZバッファ専用のDisplay Cacheに対応している。

Intel 830およびIntel 845G以降では後継のIntel Extreme Graphicsコアが採用されている。

評価と影響[編集]

マザーボード上にオンボード搭載されたi740

i740の発表当時、世界最大の半導体企業であるインテルがグラフィックチップ市場に参入するという点に注目が集まり、グラフィックチップベンダの淘汰・市場の再編成が進むのではないかという予想が多く見られた。

しかし実際に登場したIntel 740は同世代の他社製品を脅かすほどの性能を持たないだけでなく、当時対応が進みつつあった32ビットカラーにも対応していないなど機能的にも見劣りするものであった。さらに、AGPの普及を進めるインテルのAGP対応製品ということでAGPのリファレンス的存在となることも期待されていたが、実際にはインテル製チップセット以外では動作しないことも多かった。これらの様々な要因が積み重なり市場では廉価品の位置づけに留まり、後継製品であるi752も発表のみでキャンセルとなった。そのため、i740そのものは失敗作だったという評価が一般的になっている。

だがi752をベースとしたIGTコアを搭載したIntel 810チップセットは市場で爆発的な成功を収め、結果的にはi740発表当時に予想されたように多くのグラフィックチップベンダのみならずチップセットベンダまで含めて淘汰と市場の再編へと結びついていくことになる。

脚注[編集]

関連項目[編集]