709事件

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中国709人権派弁護士大量逮捕事件ちゅうごくじんけんはべんごしたいりょうたいほじけん中国語: 中國709維權律師大抓捕事件)とは、2015年夏に引き起こされた中華人民共和国弁護士および人権活動家に対する全国的な弾圧である。2015年7月9日の木曜日に開始されたため、709事件709じけん中国語: 709案)や暗黒の木曜日として知られる[1][2]

概要[編集]

2015年7月9日以降、約300人以上が一斉拘束された[3]。人権派弁護士たちは窓のない独房で長時間身体に負荷がかかる姿勢をとらせるなどの拷問を受けたとされる[4]

ヒューマン・ライツ・ウォッチの王亚秋は、「709の弾圧は、中国の権利擁護運動に大打撃を与えました。権利を主張する弁護士が投獄されたり、資格を剥奪されたり、監視下に置かれたりすることで、中国の権利擁護運動は大幅に縮小しました」と述べている[5]

標的[編集]

取り締まりの影響を受けた著名人の一部を以下に示す。

  • 2015年に拉致された人権弁護士の李和平中国語版は、その後2017年4月に禁固刑を科され[6] 、2017年5月に釈放された[7]。このとき李は法務への従事やメディア取材に応じないことを誓う文書に署名させられている[8]
  • 気功集団「法輪功」メンバーの弁護や土地を奪われた農民の支援をしてきた弁護士の王全璋中国語版[9]、2015年8月に逮捕され、2018年12月から2019年1月まで裁判にかけられ、国家転覆罪で懲役4.5年の判決を下され[10] 、2020年4月4日に刑務所から釈放された。当局により、2週間のCOVID-19隔離期間のため、当局によって済南市の旧居に移された。(王の妻は、自宅軟禁状態に保つための口実として政府が感染症流行を利用したと信じている)[11]。釈放後も当局者による監視を受けている王は、拘禁された時の様子を「1カ月間、毎日朝6時から夜10時まで両手を上げたまま立たされた。長期間睡眠を妨害されたり、トイレに行かせてもらえなかったり、人体実験のようだった」と語り、暗室で自白を強要され日常的に暴言や殴打を受けたと主張している[12][13]
  • 国家分裂罪で無期懲役判決を受けたウイグル族の学者イリハム・トフティの弁護を担当するなど「中国で最も勇敢な弁護士」と称された弁護士の王宇中国語版は、政府転覆を扇動したとして起訴され、2016年に保釈された[14]。王はその後も欧米の政治家・外交官や国内の人権関係者と会うたびに当局から警告を受けており、2019年3月にも在北京米国大使館前の路上で拘束・連行されている。このとき王は大使館の招きに応じてイベントに参加しようとしていた[15]
  • 「超級低俗屠夫」のハンドルネームで活動していた人権活動家の吴淦は、2017年12月に8年の実刑判決を受けた[16]
  • 活動家の向莉は、取り締まり中に中国から出国を禁じられていたが、2018年1月にタイへ密出国した[17]

ドイチェ・ヴェレの報道によると、2020年6月17日、王全璋を擁護し、公然と習近平の罷免や法制度・政治制度の改革を求めていた余文生中国語版が、懲役4年、3年間の政治的権利の剥奪の刑を言い渡された[18]

脚注[編集]

  1. ^ Sudworth (2017年5月22日). “Wang Quanzhang: The lawyer who simply vanished”. BBC News. 2018年12月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年12月26日閲覧。
  2. ^ 【矢板明夫の中国点描】「地球上から人間が突然消えたよう」 暗黒の木曜日に巻き込まれた王全璋弁護士は今どこに?”. 産経ニュース (2018年1月17日). 2021年9月26日閲覧。
  3. ^ China's 'Super Vulgar Butcher' activist Wu Gan gets eight years”. BBC News (2017年12月26日). 2018年12月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年12月26日閲覧。
  4. ^ John Sudworth「中国の弁護士、拷問を語る 習体制の「法との戦い」で」『BBCニュース』、2017年10月27日。2021年9月24日閲覧。
  5. ^ Green, David (2018年12月26日). “Chinese rights lawyer fires his own state-appointed lawyer in a dramatic court appearance”. Los Angeles Times. オリジナルの2018年12月27日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20181227200700/https://www.latimes.com/world/asia/la-fg-china-rights-lawyer-20181226-story.html 2018年12月27日閲覧. "The 709 crackdown dealt a terrible blow to China’s rights-defense movement, which significantly contracted as rights lawyers were jailed, disbarred or placed under surveillance" 
  6. ^ China human rights lawyer Li Heping given suspended jail term”. BBC News. 2021年3月22日閲覧。
  7. ^ Chinese lawyer 'wore torture device for a month'”. BBC News. 2021年3月22日閲覧。
  8. ^ 沙磊 (2017年5月13日). “中国律师李和平曾“整月遭受刑具折磨”” (中国語). BBC News 中文. https://www.bbc.com/zhongwen/simp/chinese-news-39906188 2021年9月24日閲覧。 
  9. ^ 4年ぶり面会「まるで別人」 709事件、拘束弁護士”. 朝日新聞デジタル (2019年6月29日). 2021年9月26日閲覧。
  10. ^ Chin, Josh (2019年1月28日). “China Civil-Rights Lawyer Sentenced to 4½ Years in Prison for Subversion”. The Wall Street Journal. オリジナルの2019年1月28日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20190128192019/https://www.wsj.com/articles/china-civil-rights-lawyer-sentenced-to-4-years-in-prison-for-subversion-11548658199 2019年1月28日閲覧。 
  11. ^ Wang Quanzhang: China releases jailed human rights lawyer”. BBC News (2020年4月5日). 2020年4月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年4月8日閲覧。
  12. ^ 川原田健雄 (2020年7月10日). “1日16時間起立を強要 中国一斉拘束5年、弁護士証言”. 西日本新聞me. 2021年9月24日閲覧。
  13. ^ 「死も考えた」…中国弁護士一斉拘束から5年 今も続く人権弾圧:東京新聞 TOKYO Web”. 東京新聞 TOKYO Web (2020年7月9日). 2021年9月24日閲覧。
  14. ^ 西見由章 (2016年8月1日). “中国当局、人権派弁護士の王宇氏保釈 自身の行動を懺悔 拘束中に「胸の腫瘍手術を手配」と当局に感謝も”. 産経ニュース. 2021年9月26日閲覧。
  15. ^ 中国の王宇弁護士が一時拘束 米大使館前で手錠され連行”. 朝日新聞デジタル (2019年3月28日). 2021年9月26日閲覧。
  16. ^ “中国、人権活動家の呉淦氏に懲役8年 弁護士の謝陽氏は処罰免除”. Reuters. (2017年12月26日). https://jp.reuters.com/article/china-rights-idJPKBN1EK0AY 2021年9月26日閲覧。 
  17. ^ Interview: 'I Felt That Sense of Threat Very Keenly'” (英語). Radio Free Asia (2018年8月2日). 2021年9月26日閲覧。
  18. ^ Yang, William (2020年6月17日). “Yu Wensheng was sentenced to four years in prison and his wife Xu Yan criticized the secret sentence” (中国語). DW. https://p.dw.com/p/3dthw 2020年8月2日閲覧。 

関連項目[編集]

 

外部リンク[編集]