蠱毒

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蠱毒(こどく)とは、古代において用いられた、を使った呪術のこと。蠱道(こどう)、蠱術(こじゅつ)、巫蠱(ふこ)などともいう。

広義には、など様々な動物を用いた呪いを総称して「蠱毒」と呼ぶ場合もあるが、本稿では狭義の蠱毒について述べる。

概要[編集]

犬を使用した呪術である犬神、猫を使用した呪術である猫鬼などと並ぶ、動物を使った呪術の一種である。代表的な術式として『医学綱目』巻25の記載では「ヘビムカデゲジカエルなどの百虫を同じ容器で飼育し、互いに共食いさせ、勝ち残ったものが神霊となるためこれを祀る。この毒を採取して飲食物に混ぜ、人に害を加えたり、思い通りに福を得たり、富貴を図ったりする。人がこの毒に当たると、症状はさまざまであるが、一定期間のうちにその人は大抵死ぬ。」と記載されている。

歴史[編集]

古代中国において、広く用いられていたとされる。どのくらい昔から用いられていたかは定かではないが、白川静など、古代における呪術の重要性を主張する漢字学者は、時代の甲骨文字から蠱毒の痕跡を読み取っている[1]「畜蠱」(蠱の作り方)についての最も早い記録は、『隋書』地理志にある「五月五日に百種の虫を集め、大きなものは蛇、小さなものは虱と、併せて器の中に置き、互いに喰らわせ、最後の一種に残ったものを留める。蛇であれば蛇蠱、虱であれば虱蠱である。これを行って人を殺す。」といったものである。

中国の法令では、蠱毒を作って人を殺した場合あるいは殺そうとした場合、これらを教唆した場合には死刑にある旨の規定があり、『唐律疏議』巻18では絞首刑、『大明律』巻19、『大清律例』巻30では斬首刑となっている。

日本では、厭魅(えんみ)[2]と並んで「蠱毒厭魅」として恐れられ、養老律令の中の「賊盗律」に記載があるように、厳しく禁止されていた。実際に処罰された例としては、769年県犬養姉女らが不破内親王の命で蠱毒を行った罪によって流罪となったこと(神護景雲2年条)、772年井上内親王が蠱毒の罪によって廃されたこと(宝亀3年条)などが『続日本紀』に記されている。平安時代以降も、たびたびを出して禁止されている。

現代のフィクションにおける蠱毒[編集]

現代の伝奇作品などにおいて蠱毒が用いられることがある。蠱毒が用いられている作品としては、荒俣宏帝都物語』や、星野之宣『コドク・エクスペリメント』の諸作品が有名で、この他『悪霊シリーズ』や『ゴーストハント』、『ゴクドーくん漫遊記』、『犬夜叉』、『妖魔夜行』、『霊媒師いずな』、『ぬらりひょんの孫』、『C3 -シーキューブ-』、『劇場版 銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ』、『ギャラリーフェイク』、『HUNTER×HUNTER』等にも蠱毒に関する話が登場する。

脚注[編集]

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  1. ^ 白川静『字統』によると、例えば「夢」とは人の睡眠中に蠱毒が夢魔となって心を乱すものだと古代中国では考えられていたとし、「夢」という漢字は蠱毒を行う巫者を象ったものであると言う。
  2. ^ 呪いのわら人形など。

関連項目[編集]