荒尾光政
荒尾 光政（あらお みつまさ、1832年10月12日 - 1903年5月6日）は、幕末の剣豪[1]。
千葉の北辰一刀流、桃井春蔵の鏡心明智流、宝蔵院高田流槍術等の諸藩武術流派をそれぞれ免許皆伝した上で鏡心流を創り出した剣聖の関宿藩士。剣術の流派、鏡心流の創始者[2]。
鏡心流は幕末の混乱期を背景にあみだされた剣の奥義を極めた実戦本意の剣術。抜刀術等も含み、「心ヲ以テ鏡トナスベク 鏡ヲ以テ心トナスベシ」秘剣の術、と伝承されている。
生涯[編集]
光政は、関宿藩士父大坪正邦の次男として天保3年（1832年）10月12日関宿藩上屋敷の江戸箱崎邸で生まれる。幼名は「次郎」。諱は「光正」、と号する。後に祖父の姓「荒尾家」を継ぐ。幼少より槍剣の道に優れ、安政4年（1857年）関宿藩主久世広周より抜擢される。
万延元年（1860年）古河藩医河口信任の長女満喜子[3]と婚姻。ちなみに河口信任は近代解剖医学の祖でもある。
光政は、幼年時代の文武修業は、17歳まで関宿藩の藩校鏡倫館で薫陶を受ける。同藩心流師範の荒木又八に始めて学ぶ。藩の小姓役光政は、嘉永3年（1850年）5月出府。この時始めて鏡心流江戸屈指の名剣士桃井春蔵に随従する。士学館にて桃井の門人となった光政は安政3年（1856年）淺山一伝流の指南役に打ち勝ち久世広周はこの進歩に驚きを示したと云われている。慶応元年（1865年）12月に桃井春蔵に市谷田町で稽古納めに帯同し新徴組との件に居合わす[4]。
文久2年（1867年）正月、老中安藤信正の水戸浪士による刺客襲撃事件（坂下門事変）では、光政は久世広周登城に警護として加わっていた。坂下門外の変を目前で遭遇し実戦本意の剣術必須と実感した。
維新以後は、住まいを境町に移し文筆活動を続けながら「演武館」を創設し、爾来その館主として大いに力を尽くし専ら後輩の育成に努めた。また同郷であり、同じく関宿藩士の父をもつ終戦内閣総理大臣鈴木貫太郎とは、氏が幼少時よりの知己であり交流があった。
明治36年（1903年）5月6日を以て没する。享年72歳。菩提寺の吉祥院（新吉町）には水戸佐々木撰、北条時雨書光政の「碑」（明治42年11月中旬）が建立されている[1][要出典][5]。
脚注[編集]
- ^ “鏡心流元祖荒尾先生伝”. 国立国会図書館. 2023年1月2日閲覧。
- ^ 『鏡心流元祖荒尾先生伝』演武館、1896年1月、1－100頁。
- ^ 『土井藩歴代蘭医河口家と河口信任』株式会社 近代文藝社、1989年5月20日、357頁。
- ^ 『剣の達人111人データファイル』新人物往来社、2002年、116-117頁。
- ^ “境の史跡⑩ 関宿藩剣術士鏡心流 荒尾光政碑（吉祥院）”. さかい女性ネット（SJN）. 2023年1月2日閲覧。