自己株式

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自己株式(じこかぶしき、: Treasury stock)は、株式の発行法人の立場からみた自己の株式のことである。英語の意訳から金庫株(きんこかぶ)と呼ばれることもある。

目次

[編集] 概説

自己株式の取得については、例えばアメリカ合衆国では古くから行われていたが、日本では、かつては資本充実の原則に抵触し、また経営者の不当な支配権の維持に利用されたり相場操縦などの弊害があるものとして原則として禁止とされ(刑罰の対象とされた)、株式の消却など一定の場合に限り認められ(商法旧会社編210条)、取得した場合でも早期にその処分を行うべきものとされていた。

ところが、日本2001年(平成13年)の商法改正により、自己株式取得は原則禁止から方向転換がなされ、配当可能利益の範囲内であれば、定時株主総会の決議をもって自己株式を取得できるようになった。当時のニュースには、金庫株解禁という言葉が頻繁に使用された。

続いて2003年(平成15年)の商法改正で、定款授権による取締役会決議に基づく自己株式の取得が解禁(商法第211条ノ3)となり、手続きの簡便さも手伝って自己株式の取得が徐々に普及し始めた。特に上場会社による自己株式の取得は、証券市場に対し会社が現在の株価を割安と考えているサインを伝える、いわゆる「シグナリング効果」があるとされ、自己株式の取得は投資判断に重要な影響を及ぼす事項として内部者取引規制上の重要事実とされている。

会社法が施行されても商法改正の趣旨は引き継がれ、現在に至っている。なお、海外からの日本株への資金流入(対外直接投資)が増加したこと等により、アメリカ的な考え方として「自己株式の取得は、配当と同様に株主還元」という考え方も浸透しつつある。

[編集] 自己株式のメリット

自己株式を取得することのメリットとして、次のことが挙げられる。

  • 株式の持ち合い解消のため株式が売却されると、株価が下落する恐れがあるが、自己株式取得により市場に流通する発行済株式数を減少させることで株価の維持ができること
  • 株式交換などの組織再編成のために新株を発行すると、株式の希薄化が起こり既存株主の反発が予想されるほか、株価の下落の恐れがあるが、取得した自己株式を代用自己株式として用いればこれらの懸念がなくなること

[編集] 自己株式のデメリット

  • 会社支配の不公平
  • 会社の財産が毀損する恐れ
  • 株主平等の原則に反する
  • 株取引の不公平が生じる恐れがある

[編集] 自己株式の特徴

上記のデメリットを解消する為に幾つかの法整備がなされている。

[編集] 自己株式の取得

  • 株式会社による自己の株式の取得(155条
    取得条項付株式の取得(155条 1号)
    譲渡制限株式の取得(155条 2号)
    株式総会の議決(155条 3号)
    取得請求権付株式の取得(155条 4号)
    全部取得条項付株式の取得(155条 5号)
    株式相続人等への売渡請求に基づく取得(155条 6号)
    単元未満株式の買取り(155条 7号)
    所在不明株式の買取り(155条 8号)
    端数処理手続における買取り(155条 9号)
    他の会社の事業の全部を譲り受ける場合にその会社が有する株式の取得(155条 10号)
    合併消滅する会社からの株式の承継(155条 11号)
    吸収分割をする会社からの株式の承継(155条 12号)
    以上の他、法務省令で定める場合(155条 13号)
  • 子会社からの自己株式の取得の場合は、取締役会設置会社にあっては、取締役会において取得に関する事項を定める(163条)。
  • 取締役会設置会社は、定款で定めれば、取締役会の決議によって取得できる(165条2項)。
  • 会計監査人設置会社でかつ監査役会設置会社取締役の任期が1年で、最終の事業年度に関する計算書類に監査役会の適法意見と、会計監査人の無限定適正意見がある場合には、あらかじめ定款に定めれば、取締役会の決議によって取得できる(495条)。

[編集] 取得の方法

[編集] 手続き関係

  • 取得の決定とともに、実際の買付け(調達)の方法を決定しておく必要があるため、金融機関と事前に契約を締結する必要がある。ただし、すぐに実行しない場合はこの限りではない。
  • 上場会社の場合、金融商品取引所適時開示ルールに従い、取得を機関決定し次第、直ちにTDnetで開示することが求められる。
  • 金融商品取引法により、決議した取得期間内において自己株券買付状況報告書の提出が求められ、有価証券報告書においても自己株式の取得に関し最大3事業年度分、報告が求められる。また、社債等を発行する際に提出する発行登録追補書類等において、自己株券買付状況を添付書類として提出することが求められる場合もある。
  • 自己株式を取得した場合で、持株比率が5%を超えるときは大量保有報告書の提出が求められ、大量保有報告書を提出済みの場合には1%以上の増減があれば変更報告書の提出が求められる。

[編集] 内部者取引規制

  • 上場会社による自己株式の取得は、会社によるものであっても内部者取引規制の対象となっていること、および外形的に合致していれば課徴金納付命令の対象となることから、取得の実行にあたっては他の重要事実が発生していないかを入念に調査する必要がある(詳しくは、内部者取引を参照)。

[編集] 会計処理

前述の商法改正に伴い、自己株式を取得した場合の会計処理も大幅に変更された。すなわち、従前は自己株式も一種の有価証券であることから、貸借対照表上の資産の部に計上されていたが、改正後は資産の部には変動はなく、資本の部の控除(マイナス)項目として取扱われることとなった。

[編集] 自己株式の消却

株式会社は、自己株式の数を定めて消却することができる(178条)。取締役会設置会社の場合には、取締役会の決議によって消却を決議しなければならない。

商法の下では、自己株式を消却した場合には、授権資本枠(発行可能株式総数)を減少させることが通常とされていたため、消却した株数は自己株式と授権資本枠の両方を減ずる効果があったが、会社法の施行に伴い自己株式の消却により減ぜられるのは自己株式のみと取り扱いが整理された。

上場会社の場合、自己株式の消却をすることで流通する株式の絶対量が減少することにより、証券市場からは歓迎されることがあり、株価に一定の効果をもたらすとされている。ただし、授権資本枠が減少しなくなったことにより、単に発行可能株式の数が増加する効果を生んでいるという説も一方ではあり、当該会社の新株発行のし易さに負うところが大きい。

[編集] 自己株式の処分

(取得時の扱いと同じく、)保有している自己株式は、株式市場で売却することを厳禁されている(179条)。売却する時は、新株発行と同様の手続きをとらなければならない(199条)。その他、定款に定めれば、株主が行う単元未満株式の売渡請求(194条)に対し、保有する自己株式を売り渡すことができる(買増請求(かいましせいきゅう))、あるいは新株予約権の対価として受け渡す新株に代えて交付することができる(「代用自己株式」)ほか、いくつか処分の方法がある。

[編集] 関連項目