呪術的思考

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呪術的思考(じゅじゅつてきしこう)とは呪術が効く、という前提で物事を考える思考のことである。また、何かしら問題・課題がある時に、自己の健全・合理的な努力を欠いたまま、呪術に類似した行動のみによって解決してしまおうという思考も指す。進化心理学的に考えれば、不潔な匂いを嫌悪し、その一般化として穢れを忌むことは病気を予防して遺伝子を増やすことにつながり、ある程度合理性があったといえる。

例えば、昔の人が、心理的な現象ではなく物理的な現象である天災の原因をの怒りや誰かの怨念にあると考え、それに対して呪術で対処しようと考えたり呪術を実行した場合、それは呪術的な思考と呼べる。

例えば、大学受験や資格試験の時期が迫っているのに教科書や問題集も開かず、ひたすら何らかの呪文だけを唱えてそれだけで合格できる、と思っていればそれも呪術的思考と呼べよう。

また近年の大きな問題としては、貧困や失業が増大する社会を理性的に解決しようとせず、少年犯罪やニート・フリーターのような社会的弱者や少数派をスケープゴートにして憎悪や不満を向ける行為も呪術的思考と呼べる。

ただし、健全で合理的な努力を日々積み重ねた上で、最高のパフォーマンスを出すべく、迷いを払拭したり気力を高めるために各種宗教施設に出向いたりすることは、日本のみならず世界中の文明国の教養ある人物によっても広く行われている行為なので、このような行為まで“呪術的な思考”とひとくくりにしてよいかどうかは議論が分かれるところであろう。自身の心身に起きる心理効果まであらかじめ計算した合理的な行動とも見なすことも可能だからである。

あえていうなら、近現代人であってもその行動の多くは呪術的思考に基づいているといえる。星占い血液型に影響され、出かけに靴紐が切れれば気にすることは多い。また言霊を禁じることによって目的を果たそうとする、たとえば敗北を口にしない、英語を敵性語として禁じることで戦争に勝とうとしたり、差別語を禁じることで差別をなくそうとすることも呪術的思考である。ダガーナイフの禁止によって通り魔の再発を防止し、またライターの飛行機内持ち込みを一つのみとしてハイジャックテロを防止しようというのも、何かを禁じるという行為で防止となるという、一般化された行動を合理性を検討せず行うという点で生贄儀式に類似し呪術的といえる。

さまざまなものを恐怖し、それを特定の対象に対する攻撃にすることも生贄・スケープゴートと同様な構造を持ち、それは近世においては魔女裁判、現代においてもホロコースト赤狩りオウム真理教信者子弟に対する人権侵害・児童性愛者に対する恐怖など多く見られる。犯罪者の共犯でない家族でも縁談が破談となり、職を失い地域から追われるなど迫害されることも、犯罪の穢れが血縁を通じて感染しているとみなす呪術的思考が深く関わっている。

さらにいえば、美を好む、清潔や安全を過剰に求めるなど正常な心理と病的なこだわりの境界にある情動も、その多くに呪術的思考との共通点がある。

参考文献[編集]

  • ダン・ガードナー 『リスクにあなたは騙される-「恐怖」を操る論理』 田淵健太訳、早川書房、2009年ISBN 9784152090362

関連項目[編集]