主権免除

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主権免除(しゅけんめんじょ、sovereign immunity, l'immunité souveraine)とは、国際民事訴訟において、被告が国または下部の行政組織の場合、外国の裁判権から免除される、というもの。国際慣習法の一つ。国家免除(こっかめんじょ、State immunity)、裁判権免除(さいばんけんめんじょ、jurisdictional immunity, l'immunité de juridiction)とも呼ばれる。

主権免除の概要[編集]

この原則が確立したのは19世紀である。国家主権・主権平等の原則の下、主権国家が他の国家の裁判権に属することはない、という原則である。この免除は自発的に放棄することもできる。かつてはすべての活動に対して裁判権の免除が認められていた(後述の絶対免除主義)が、20世紀にはいると国家が営業的行為を行なうことも出てきたため、そこまで認めてしまうと商行為の相手方に不利益になるため、一定の事項のみを免除するという立場が出され(後述の制限免除主義)、現在では制限免除主義が有力となっている。

免除の適用基準については行為の目的に着眼するか、性質に着眼するかで異なってくる。画一的な基準は見出すことが困難であるため、裁判所の裁量による部分が大きくなってくる。

2004年には「国家及び国家財産の裁判権免除に関する条約」(国連裁判権免除条約)が採択されている。

主権免除の種類[編集]

大きく分けて、2通りの説がある

  • 絶対免除主義
国家の活動はすべて裁判権から除外されるという立場。
  • 制限免除主義
国家の活動を「権力行為」と「職務行為」に分け、免除の適用範囲を前者についてのみ認めるとする立場。

国際的には現在、制限免除主義を採用する趨勢にある。しかし、日本においては、大審院昭和3年12月28日決定が、絶対免除主義をとる判断を下して以来、最高裁判所における判例がない状態が続いていた。学説は制限免除主義を主張していたが、最近になって、最高裁判所平成18年7月21日第二小法廷判決は次のように判示して、制限免除主義を採ることを明言し、大審院の判例を変更した。

最高裁判所平成18年7月21日判決[編集]

「外国国家に対する民事裁判権免除に関しては,かつては,外国国家は,法廷地国内に所在する不動産に関する訴訟など特別の理由がある場合や,自ら進んで法廷地国の民事裁判権に服する場合を除き,原則として,法廷地国の民事裁判権に服することを免除されるという考え方(いわゆる絶対免除主義)が広く受け入れられ,この考え方を内容とする国際慣習法が存在していたものと解される。しかしながら,国家の活動範囲の拡大等に伴い,国家の行為を主権的行為とそれ以外の私法的ないし業務管理的な行為とに区分し,外国国家の私法的ないし業務管理的な行為についてまで法廷地国の民事裁判権を免除するのは相当でないという考え方(いわゆる制限免除主義)が徐々に広がり,現在では多くの国において,この考え方に基づいて,外国国家に対する民事裁判権免除の範囲が制限されるようになってきている。これに加えて,平成16年12月2日に国際連合第59回総会において採択された「国家及び国家財産の裁判権免除に関する国際連合条約」も,制限免除主義を採用している。このような事情を考慮すると,今日においては,外国国家は主権的行為について法廷地国の民事裁判権に服することを免除される旨の国際慣習法の存在については,これを引き続き肯認することができるものの、外国国家は私法的ないし業務管理的な行為についても法廷地国の民事裁判権から免除される旨の国際慣習法はもはや存在しないものというべきである。 …外国国家の主権を侵害するおそれのない場合にまで外国国家に対する民事裁判権免除を認めることは,外国国家の私法的ないし業務管理的な行為の相手方となった私人に対して,合理的な理由のないまま,司法的救済を一方的に否定するという不公平な結果を招くこととなる。したがって,外国国家は,その私法的ないし業務管理的な行為については,我が国による民事裁判権の行使が当該外国国家の主権を侵害するおそれがあるなど特段の事情がない限り,我が国の民事裁判権から免除されないと解するのが相当である。」
「…特定の事件について自ら進んで我が国の民事裁判権に服する意思を表明した場合には,我が国の民事裁判権から免除されないことはいうまでもないが,その外にも,私人との間の書面による契約に含まれた明文の規定により当該契約から生じた紛争について我が国の民事裁判権に服することを約することによって,我が国の民事裁判権に服する旨の意思を明確に表明した場合にも,原則として,当該紛争について我が国の民事裁判権から免除されないと解するのが相当である。なぜなら,このような場合には,通常,我が国が当該外国国家に対して民事裁判権を行使したとしても,当該外国国家の主権を侵害するおそれはなく,また,当該外国国家が我が国の民事裁判権からの免除を主張することは,契約当事者間の公平を欠き,信義則に反するというべきであるからである。」

強制執行の免除[編集]

裁判権の行使と執行を連続したものととらえる説と強制執行を裁判権と区別し、強制執行免除の否認・放棄が別に必要とする説とがある。国連裁判権免除条約では、強制執行は、一定の例外を認めるものの、原則免除となっている。一方、各国において判例が積み重ねられており、営業的なものについては免除を認めないことが多いと言われる。日本においても平成18年7月21日判決により、今後強制執行に関する判例が蓄積されることが予想される。

国際連合と裁判権免除[編集]

国際連合は裁判権免除の対象たり得るか。これについては国際連合憲章と国連の特権免除条約が裁判権免除について定めている。

国際連合憲章第105条第1項
この機構は、その目的の達成に必要な特権及び免除を各加盟国の領域において享有する。
国際連合の特権及び免除に関する条約
第2条第2項 国際連合並びに、所有地及び占有者のいかんを問わず、その財産及び資産は、免除を明示的に放棄した特定の場合を除き、あらゆる形式の訴訟手続の免除を享有する。(後段略)

かつて、日本の国際連合大学職員が有期雇用の打切りを正当な事由なき解雇として地位保全の仮処分を申し立てたことがあったが、日本の裁判所は上記憲章及び条約を理由に認めずに訴えを却下した(国連大学事件、東京地方裁判所昭和52年9月21日決定)。同様の訴訟はエジプトアルゼンチンでも起きているとのことである。

(参考:国際連合憲章第101条第1項)

職員は、総会が設ける規則に従って事務総長が任命する。

参考文献[編集]

外部リンク[編集]