ヴォシチ

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代表的なプロレタリアートのヴォシチ、マルクスエンゲルスレーニン。1953年のメーデー東ドイツ
スターリンとゴーリキーの肖像が描かれた1934年のアガニョークの表紙。「世界のプロレタリアートの最愛のヴォシチである同志スターリンは、ソビエトの作家の役割をこう定義した。」

ヴォシチ: вождь)とはスラヴ語圏で指導者を意味する言葉である。これはスラヴ祖語の単語*voďь に由来し、元は「部族の長」を意味した。農奴制の時代には「主人」という意味合いを持っており、時代が進み国家が台頭すると、この単語は国家の「最高指導者」や「最高司令官」という意味で用いられるようになった。

現在、この呼称は口語的にも公式にも使用されなくなり、より正確な、少なくとも2つの「司令官」「指導者」を意味する単語(例えば、ポーランド語ではそれぞれ、przywódcadowódca)に取って代わられている。よって、現在この単語が用いられる際は歴史的、若しくは皮肉的な文脈であることが多い。

歴史[編集]

セルビアにおいては、この単語は第一次セルビア蜂起の際、第1回政府評議会(Praviteljstvujusceg sovejeta)においてヴォイヴォダジョルジェ・ペトロビッチを指導者として選出した際に初めて用いられた。これにより、彼はセルビアの大ヴォシチ(Grand Vožd of Serbia)と呼ばれた。

その後、ロシア語ではウラジーミル・レーニンヨシフ・スターリンらを始めとする、労働者[1]、人民,[2]世界革命[3]ソ連共産党[4][5]ソビエト連邦[6]の指導者を指してこの単語が用いられるようになった。

現代のロシア語では、vozhdという単語は共産党指導者や原住民部族の長のみを指す言葉となっており、この言葉はやや廃れつつある。ドイツ語におけるFührerと対になる言葉と言える。

東ドイツの映画製作会社DEFAレッドウェスタン映画を多く制作するようになってから、この単語はネイティブ・アメリカン酋長と密接に結びつくようになった。

脚注[編集]