ワンウェイクラッチ

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ワンウェイクラッチ(One-way clutch、1-Way clutch)とは一方の方向のみに回転力を伝達するクラッチ機構である。フリーホイールとも呼ばれる。ベアリングとしての機能を持たせた構造のものもある。

スプラグ式[編集]

スプラグ式ワンウェイクラッチの外観

スプラグ式のワンウェイクラッチは外輪(アウターレース)と内輪(インナーレース)の間にスプラグ(sprag)と呼ばれる、だるま形の輪留めが組み込まれた構造を持つ。インナーレースに対してアウターレースが一方へ回転するとスプラグがかみ合ってトルクを伝達し、逆回転した場合はスプラグのかみ合いが外れてトルクは伝達されなくなる。英語ではスプラグクラッチ(Sprag clutch)と呼ばれる。

カム式[編集]

カム式ワンウェイクラッチの模式図

ローラー式とも呼ばれる。カム式のワンウェイクラッチは外輪と内輪、ローラー、スプリングで構成され、外輪の内側または内輪の外側にカム面を持ったポケットが設けられる。ポケットの内部にはローラーが配置され、スプリングによって外輪のカム面と内輪の外側、あるいは内輪のカム面と外輪の内側に接触するように保たれている。内輪に対して外輪がある一方向に回転しようとするとカム面とローラーとの接触面圧が高くなり、抵抗となって内輪への動力を伝達する。逆方向に回転すると、カム面とローラーとの接触面圧が低くなり、滑って動力伝達を切断する。

利用事例[編集]

オートバイ[編集]

ワンウェイクラッチはオートバイスタータークラッチバックトルクリミッターの主要構造として応用されている。

自動車の自動変速機[編集]

ワンウェイクラッチは自動車オートマチックトランスミッション(AT)で、車軸とギアボックスの間のトルク伝達を遮断もしくは緩和して自動変速をスムーズに行う機構として利用されていて、最初に採用したのは1964年にゼネラルモーターズが開発したen:Turbo-hydramaticであった[要出典]。ギアボックス出力軸の回転速度と車軸の回転速度が等しい、あるいはギアボックス出力軸の方が速い場合には、ワンウェイクラッチが噛み合ってエンジンのトルクが車輪に伝えられる。走行中にATが変速すると、ギアボックス出力軸の回転速度が車軸よりも遅くなり、ワンウェイクラッチのかみ合いが外れてギアボックス出力軸と車軸の回転速度の差を吸収して変速ショックを抑制する。この機構は1つのワンウェイクラッチで全てのギアの変速で変速ショックを抑制できる反面、エンジンブレーキを使う際にもトルクの伝達が切断されてしまいエンジンブレーキが効率的に利用できない。そのため、Dレンジで走行しているときだけワンウェイクラッチが作用し、2またはLレンジなどではワンウェイクラッチを無効化してエンジンブレーキを得られる制御が行われていた。

ヘリコプターでの利用[編集]

ワンウェイクラッチは多くのヘリコプターのメインローターにも採用されている。エンジン故障時にローターのワンウェイクラッチによってトルク伝達が切断される。ローターはエンジンのメインシャフトの状態に関わらず、風圧を受けて自然に回り続けるオートローテーション状態に移行し、浮力を発生させて安全に着陸することができる[1]

ベルトコンベアでの利用[編集]

多くのベルトコンベアでもワンウェイクラッチが利用されており、駆動系統の一部が破損した場合でもコンベア全体を停止することなく保守点検が行えるようになっている。

釣具での使用[編集]

近年のリールでは、逆転防止機構にワンウェイクラッチが使用されている。

ワンウェイクラッチの潤滑[編集]

ワンウェイクラッチは多くの場合潤滑油グリースによって潤滑されている。しかし、多くのワンウェイクラッチメーカーは硫黄などの極圧添加剤を大量に含んだオイルの使用は認めていないことが多い[要出典]

脚注[編集]

  1. ^ Federal Aviation Administration, Flight Standards Service (2007). Rotorcraft Flying Handbook (Illustrated ed.). Skyhorse Publishing. p. 5–4. ISBN 1602390606. 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]