ミズウオ

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ミズウオ
Longnoselancetfish.jpg
ミズウオ(Alepisaurus ferox
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
亜綱 : 新鰭亜綱 Neopterygii
: ヒメ目 Aulopiformes
: ミズウオ科 Alepisauridae
: ミズウオ属 Alepisaurus
: ミズウオ A. ferox
学名
Alepisaurus ferox Lowe, 1833
英名
Longnose lancetfish

ミズウオ(水魚、学名Alepisaurus ferox)は、ヒメ目ミズウオ科に属する硬骨魚類の一種。海底から離れて生活する、中層遊泳性の深海魚である[1]

分布[編集]

広い生息範囲をもち、北海道以南を含む北太平洋から、インド洋大西洋地中海にかけて分布する。成魚は水深900~1,500mの深みで暮らす深海魚である[1]

特徴[編集]

深海魚の中では大型の部類で、体長1.5~2.5mにまで成長する。体は細長く、やや左右に平べったく側扁する。体表にはがなく、銀色の光沢をもつ。他の多くの中層遊泳性深海魚の例とは異なり、発光器はもたない。

背鰭が非常に大きく、体の3分の2を占め、拡げると体よりも大きい。仔魚は比較的小さく、サバなど一般的な魚に似た姿をもつ[1]

目が大きく、(口先)は尖って伸びる。大きな口には鋭い牙を備え、いかつい顔つきを呈する。貪欲な肉食性の魚類で、その大きな口と牙で、深海の他の生物を見境無く丸呑みにする。時には共食いさえも行い、過大な獲物を消化管に詰まらせて死んでしまう例もある[2]。牙は獲物を切り裂くために使われているわけではなく、捕えた獲物を逃がさない檻のような役目を果たしている。

筋肉には水分と脂肪分が多量に含まれ、煮たり焼いたりすると水分が抜けて肉が縮み、溶けてしまうかのようになる。[3]「ミズウオ」という名前の由来はここからきており、普通は食用としての価値はほとんどない[1]が、比較的新鮮な個体を生のまま醤油漬けにして食べると、こんにゃくのような味がするという。(動物の世界26巻 1979)

類似種[編集]

ミズウオダマシ属の1種 Anotopterus sp. (ハダカエソ科)。ミズウオダマシ類はミズウオと似た体つきをしているが、所属する科は異なる。本種は2008年に発見され、新種と考えられている[4]

ミズウオ科には2属3種が含まれる[5]。また、同じヒメ目のハダカエソ科Paralepididae[6]に所属するミズウオダマシ属の仲間は、ミズウオによく似た形態をもつ。ミズウオダマシの仲間では背鰭はあまり大きくならない。牙はやや前向きで吻はより長く、下顎がやや長く突き出ているところが特徴である。

日本の北陸地方では、ノロゲンゲBothrocara hollandi)を「ミズウオ」とも呼び郷土料理の食材として用いるが[7]、ノロゲンゲはスズキ目の魚類でミズウオとの類縁関係は遠い。

深海汚染の指標[編集]

ミズウオは深海で生活しているが、表層水温の下がる夜間や冬季には浅海に上がってくることもある[2]。弱った個体が浜辺に打ち上げられ、新聞やニュースなどで話題となることがある。

ミズウオはマグロ延縄にかかることもあるなど、深海魚としては比較的目に付く機会は多い。浜辺に打ち上げられたり、捕獲されたりしたミズウオのからは、丸呑みされた他の深海魚など貴重な標本が得られることもある[8]。近年では、ミズウオの胃の中からビニール袋などのプラスチック製品がしばしば見つかっている[8]。貪欲な性質によって飲み込まれた消化できない化学製品が、本種を衰弱させている可能性がある[2]。人間が投棄したゴミがどれだけ海を汚しているのかという、海洋汚染の実態を知る上で重要な標本となり得る。

出典・脚注[編集]

  1. ^ a b c d 『日本の海水魚』 p.115
  2. ^ a b c 『深海生物ファイル』 pp.118-119
  3. ^ 超新食感!浜辺で拾える深海魚「ミズウオ」を食べる(平坂 寛) デイリーポータルZ 2013.02.05
  4. ^ NZ IPY-CAML Voyage 2008 (英語)
  5. ^ 『Fishes of the World Fourth Edition』 p.221
  6. ^ 独立のミズウオダマシ科 Anotopteridae として分類されることもある。
  7. ^ ノロゲンゲ”. 市場魚貝類図鑑. 2009年7月4日閲覧。
  8. ^ a b 『深海魚 暗黒街のモンスターたち』 p.84

関連項目[編集]

参考文献[編集]

外部リンク[編集]