ベネラ9号

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ベネラ9号 (4V-1 No. 660)
ベネラ9号と金星表面の様子が描かれた切手
所属 ソビエト連邦
任務 オービターとランダー
周回対象 金星
軌道投入日 1975年10月20日
打上げ日時 1975年6月8日
バイコヌール宇宙基地
任務期間 1975年6月8日から1975年12月25日?
COSPAR ID 1975-050D
質量 2015 kg
軌道要素
離心率 .89002
軌道傾斜角 29.5°
遠点高度 19.51 RV
近点高度 1.26 RV
軌道周期 48.3時間
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ベネラ9号(Venera 9、ロシア語: Венера-9、製造番号:4V-1 No. 660[1])は、ソビエト連邦の無人金星探査機である。オービターランダーから構成される。1975年6月8日2時38分00秒(UTC)に打ち上げられ、重さは4,936kgであった。オービターは、金星の軌道に達した初めての探査機となり、ランダーは別の惑星の画像を初めて地球に送信した[2]

オービター[編集]

オービターは、2つの太陽電池の翼と高利得パラボラアンテナを持つ円筒形の構造である。円筒の底には、推進システムを収めるベル型のユニット、頂部にはランダーを収める2.4mの球体が接続された。

オービターは、1975年10月20日に金星の軌道に入った。そのミッションは、ランダーからの通信を中継することと大気や雲の層を科学機器で探索することであった。1975年10月26日から12月25日にかけて、17回の測量を行った。

オービターの搭載機器の一覧[編集]

  • 1.6-2.8 μm IR Spectrometer
  • 8-28 μm IR Radiometer
  • 352 nm UV Photometer
  • 2 Photo-polarimeters (335-800 nm)
  • 300-800 nm Spectrometer
  • . Lyman-α H/D Spectrometer
  • Bistatic Radar Mapping
  • CM, DM Radio Occultations
  • Triaxial Magnetometer
  • 345-380 nm UV Camera
  • 355-445 nm Camera
  • 6 Electrostatic Analyzers
  • 2 Modulation Ion Traps
  • Low-Energy Proton / Alpha detector
  • Low-Energy Electron detector
  • 3 Semiconductor Counters
  • 2 Gas-Discharge Counters
  • Cherenkov Detector

ランダー[編集]

ベネラ9号による金星表面の画像

1975年10月20日、ランダーはオービターから分離し、10月22日5時13分(UTC)に着陸した。着陸地点は、ベータ地域近くの北緯31.01°東経291.64°から半径150kmの範囲で、巨礫に覆われた20°の坂だった。金星の大気圏に突入した球体は、1,560kgの重さで、ペイロードは660kgであった[3]

ランダーは、別の惑星の表面の画像を初めて地球に送信した探査機となった(火星を目指したバイキング1号に一年ほど先行した)[4]ソビエト連邦の宇宙計画は、恐らくは金星の濃い大気のおかげで、金星への着陸は、火星への着陸よりも手順が少なかったことから、火星のランダーよりも金星のランダーで大きな成功を収めることとなった。

熱負荷を分散させるためには、液体の循環が用いられた。このシステムと突入前の事前冷却により、ランダーは、オービターとの通信が回復した着陸53分後からの運用が可能となった[5]。降下中、熱の散失と減速は、半球状の殻と3つのパラシュート、円盤型のブレーキ、ドーナツ型の圧縮金属着陸クッションで連続的に行われた。着陸地点は、ベネラ10号の着陸地点から約2,200km離れていた。

ベネラ9号は、厚さ30から40km、底の高さ30から35kmの雲の測定を行い、また塩酸フッ化水素酸臭素ヨウ素等を含む大気の組成の測定を行った。その他の測定事項には、約9MPaの表面気圧、485℃の温度、地球の中緯度の曇った夏の日に相当する表面の光レベル等がある。ベネラ9号は、金星表面の白黒テレビ映像を送信し、影があり、空気には塵がなく、30から40cmの浸食のない様々な岩が存在することが示された。計画された360°のパノラマ画像は、2つのカメラのうち1つのレンズカバーが外れずに撮影できず、180°分しか撮影されなかった。この失敗は、ベネラ10号でも再発した。

ランダーの搭載機器の一覧[編集]

  • Temperature and pressure sensors
  • Accelerometer
  • Visible / IR photometer - IOV-75
  • Backscatter and multi-angle nephelometer - MNV-75
  • P-11 Mass spectrometer - MAV-75
  • Panoramic telephotometers (2, with lamps)
  • Anemometer - ISV-75
  • Gamma ray spectrometer - GS-12V
  • Gamma ray densitometer - RP-75
  • Radio Doppler experiment

出典[編集]

  1. ^ [1] RussianSpaceWeb.com
  2. ^ Solar System Exploration Multimedia Gallery: Venera 9, NASA website, accessed August 7, 2009.
  3. ^ Interplanetary Spacecraft
  4. ^ コズミックフロント☆NEXT2021年3月18日放送 「冒険者たちが語る 太陽系のヒミツ 金星」
  5. ^ Mitchell, Don P. (2004年). “First Pictures of the Surface of Venus”. 2010年8月7日閲覧。