フッ化水素酸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
フッ化水素酸
{{{画像alt1}}}
識別情報
CAS登録番号 7664-39-3
RTECS番号 MW7875000
特性
化学式 HF
外観 無色溶液
密度 1.15 g/mL(48%溶液)
酸解離定数 pKa 3.15(in
危険性
主な危険性 毒性が非常に高い
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

フッ化水素酸(フッかすいそさん、Hydrofluoric acid)は、フッ化水素水溶液である。俗にフッ酸とも呼ばれる。触れただけで激しく体を侵す毒劇物としても知られる。

概要[編集]

フッ化水素酸はフッ化水素と共に多くの薬品、重合体(例:テフロン)およびフッ素を含むほとんどの合成繊維の前駆体である。

濃フッ化水素酸は一般にガラス (SiO2) と反応して溶かすことがよく知られている。

SiO2 + 4HF(aq) → SiF4 + 2H2O(l)
SiO2 + 6HF(aq) → H2[SiF6](aq) + 2H2O(l)

ガラスを腐食する性質のため、フッ化水素酸はポリエチレンまたはテフロン容器に入れて保存される。また、フッ化水素酸は多くの金属も腐食する。特に硝酸との混合酸は酸に対し耐食性の高いタンタルなども溶解する。

通常は47~48% (d=1.15 g cm−3, 27.6 mol dm−3) 程度の水溶液として市販され、医薬用外毒物の指定を受ける。

酸性[編集]

フッ化水素酸は水溶液中では他の酸と同じように解離する。他のハロゲン化水素酸とは異なり希薄水溶液中では弱酸となる。

HF(aq) + H2O(l)  \rightleftarrows\ H3O+(aq) + F(aq), pKa=3.17

その電離平衡に対する熱力学的諸量は以下の通りである[1]

\mathit{\Delta} H^\circ \mathit{\Delta} G^\circ \mathit{\Delta} S^\circ
−12.55 kJ mol−1 18.03 kJ mol−1 −102.5 J mol−1K−1

HF分子が接近したとき酸性度は次の平衡のため劇的に増加する。このためフッ化水素酸は通常の弱酸とは異なり、0.1 mol dm−3程度以上の濃度になると高濃度となっても電離度があまり減少しない。

2HF(aq)  \rightleftarrows\ H+(aq) + FHF(aq)
HF(aq) + F(aq)  \rightleftarrows\ FHF(aq), K=5.1

FHFアニオンは、水素−フッ素間の強力な水素結合によって安定化される。このイオンは純液体フッ化水素のみならず、水溶液中でも高濃度であれば生成する。

用途[編集]

各種フッ素化合物の原料として重要であるほか、ガラスの化学加工や、半導体製造時のシリコンエッチングに用いられる。ステンレスアルミニウムの酸化被膜除去には、硝酸との混酸が使用される。濃縮ウランである六フッ化ウランを加水分解して、ウラン燃料としての酸化ウラン(IV)とする工程では多量のフッ化水素酸が生じる[2]歯科技工の分野でも用いられるが、危険物のため生きた人間の歯に塗布してはいけない。

危険性[編集]

骨や血液中のカルシウムイオンと容易に結合することにより、骨を侵し低カルシウム血症の原因ともなる。応急処置には、接触部位の流水洗浄ののちグルコン酸カルシウムが使用される。

主な事故・事件[編集]

参考文献[編集]

  1. ^ D.D. Wagman, W.H. Evans, V.B. Parker, R.H. Schumm, I. Halow, S.M. Bailey, K.L. Churney, R.I. Nuttal, K.L. Churney and R.I. Nuttal, The NBS tables of chemical thermodynamics properties, J. Phys. Chem. Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982)
  2. ^ 村田徳治 『新訂・廃棄物のやさしい化学 第3巻 廃酸・廃アルカリ・汚泥の巻』 日報出版、2004年、83-91頁。ISBN 978-4-89086-235-1
  3. ^ 1982年4月22日・24日付毎日新聞(縮刷版)
  4. ^ 昭和57年(1982年)4月22日(水曜日)読売新聞
  5. ^ a b 靴に毒,同僚女性が足の指切断。殺人未遂容疑で男逮捕朝日新聞web 2013年3月28日13時9分

関連項目[編集]