ディリクレ積分

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ディリクレ積分(ディリクレせきぶん、: Dirichlet integral)とは、広義積分

のことである。これは π/2 に収束することが知られている。これは絶対収束ではなく、ルベーグ積分では可積分でない。ディリクレ積分の名は数学者ペーター・グスタフ・ディリクレから取られている。

この項では、この事実を複素積分に立脚して証明する。

証明[編集]

ディリクレ積分

f(z) = eiz/z積分を考える。0 < r < R をとり、図のように経路 Cr, CR を定める(赤領域を左に見るように進む向きを正とする)。f は赤領域で正則であるから、コーシーの積分定理により

となる。

まず、左辺第2項と第4項はオイラーの公式により

次にについての周回積分でゼロとなることを示す。(ジョルダンの補題)

置換 により、

また、についての周回積分となることを示す。(留数定理

のとき、指数関数 定義により、

とおくと、

ここで、置換 により、

次に、 を示そう。g整関数、とくにコンパクト集合 連続だから、ワイエルシュトラスの最大値定理を使うと、

を十分小さくとれば、経路 (の)は K に含まれるから、

以上より、(1) において とすれば、(2)~(4)より

すなわち

が従う。

脚注[編集]

参考文献[編集]

  • 高橋, 礼司『複素解析』東京大学出版会〈基礎数学8〉、1990年。ISBN 978-4-13-062106-9