キックリ

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キックリ(Kikkuli)は、ボアズキョイ遺跡から出土した、軽戦車を牽引する馬匹の調教について書かれた、紀元前15世紀末-14世紀前半に編まれたものと推定されるヒッタイト語文書に登場するフルリ人の人名。

キックリ文書[編集]

馬の調教師(aššuššanni)キックリの文書は保存状態が良く、馬に軽戦車を牽かせる前に行うべき調教が、1080行に184日にわたり詳しく記述されている。

1906年ヒッタイトの都ボアズキョイの発掘で発見された。4枚の粘土板文書に記されており、それぞれ別の書記により書かれている。紀元前13世紀に筆写されたものであるが、表現には原典の古いままの言葉で書かれた部分もある。またフルリ語には部分的に文法上の間違いも見られる。文書はヒッタイト語で書かれているが、数詞や職名など一部の専門用語にインド語派と共通の言葉が見られることが注目される。

内容[編集]

ミタンニの地において馬を扱うことにかけては達人であるキックリは、こう語る。」 (UM.MA Ki-ik-ku-li A-AŠ-ŠU-UŠ-ŠA-AN-NI ŠA KUR URUMI-IT-TA-AN-NI)[1]

キックリ文書はこのように始まり、214日間にわたるヒッタイトの軍馬の体調管理方法(運動や給餌)を、欠落したところがない形で伝える[2]

キックリ文書が取り扱う内容は、馬の体調管理に限っており、育成については取り扱っていない[3]。ミタンニ人は馬の調教のやり方を広めることに貢献した民族だった。ヒッタイト人はキックリから馬の扱い方を教わった結果として、強力な戦車(チャリオット)の軍団をそろえることができ、現在のトルコ、シリア、レバノン及びイラク北部を含む大帝国を築き上げた[4]。しかしながら、キックリは、馬を戦車に繋いで行う訓練に費やす時間よりも長い時間を、速歩や駈歩をさせることに費やしている[5]

キックリが教える体調管理法においては、驚くべきことに、現代の総合馬術エンデュランス馬術競技の騎手が効果的に用いる「インターバル・トレーニング」がすでに用いられていた。馬を厩舎につなぎ、湯で洗い、燕麦大麦を少なくとも日に三回与えるという点では、キックリのやり方は現代の普通の馬の世話の仕方と変わらない。その一方で、キックリは、整理運動(ウォーム・ダウン)を行わせること[6]、さらに、駈歩のたびごとに馬の緊張をほぐすために休憩を入れ、進んだ訓練法として駈歩のインターバルに運動を行うことを推奨している[7]。これはこんにちインターバル・トレーニングとして知られているものと同様のものである。この方法は、1960年代ごろになって初めて馬スポーツの専門家により研究されたものである[8]

また、キックリの体調管理プログラムは、訓練の継続、負荷のピークをシフトさせること、電解質置換理論、ファートレック英語版・トレーニング、インターバルと反復といった、近代的なスポーツ理論に比定することができるような「スポーツ医学」を含んでおり、これにより筋繊維がじわじわと引き締まって均整のとれた馬体へと馬を導くことができる[9]

Nyland (2009)は、1991年から1992年にかけてオーストラリアにて、複数のアラブ種の馬に対してキックリ文書に記載された七か月間のプログラムを適用し、キックリ文書の再現実験を試みた[10]

脚注[編集]

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  1. ^ 『キックリ文書』第1行目から第4行目
  2. ^ Nyland 2009, p. 9.
  3. ^ Nyland 2009, passim.
  4. ^ Nyland 2009, pp. 11-17.
  5. ^ Nyland 2009, pp. 24-27.
  6. ^ Nyland 2009, pp. 119-130.
  7. ^ Nyland 2009, p. 40.
  8. ^ Nyland 2009, p. 10.
  9. ^ Nyland 2009, p. 38.
  10. ^ Nyland 2009, pp. 1-144.

参考文献[編集]

  • Nyland, Dr A. (2009). The Kikkuli Method of Horse Training (Revised ed.). Sydney: Maryannu Press. 

関連項目[編集]