オジブウェー語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

※当ページに記述されているオジブウェー語を表示するには、フォントが必要です。ラングエジ・ギークのダウンロードページからクリー語オジブウェー語イヌクティトゥット語の音節文字フォントをインストールして下さい。

オジブウェー語
アニシナーベ語
ᐊᓂᐦᔑᓈᐯᒧᐧᐃᓐ, Anishinaabemowin, Anicinàbemowin, Anihšināpēmowin.
話される国 カナダの旗 カナダ
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
話者数 約55,000
言語系統
表記体系 ラテン文字, オジブウェー音節文字 (カナダ先住民文字の一種)
言語コード
ISO 639-1 oj
ISO 639-2 oji
ISO 639-3 ojiマクロランゲージ
個別コード:
ojc — 中部オジブウェー語
ciw — チペワ語
ojg — 東部オジブワ語
ojb — 北西部オジブウェー語
otw — オタワ語 
ojs — セヴァーン・オジブワ語
ojw — 西部オジブワ語
Anishinaabewaki.jpg
北米のアニシナーベ居留地とアニシナーベの居住する都市、アニシナーベ語話者の居住する範囲(赤)。
テンプレートを表示

オジブウェー語(Ojibwe)(オジブウェー語では「オチポェーモオィヌ」(ᐅᒋᐧᐯᒧᐧᐃᓐ/Ojibwemowin))又はアニシナーベ語(オジブウェー語では「アニッシナーペーモオィヌ」(ᐊᓂᐦᔑᓈᐯᒧᐧᐃᓐ/Anishinaabemowin))は北米大陸五大湖からその西の平原にかけてオジブワ(チペワ)族[1]により話されている言語である。アルゴンキン語族に属し、他のアメリカ諸語と同じく抱合語(複統合語)である。アメリカ先住民の言語の中でも話者が多く、また方言も多様である。カナダでは音節文字で書かれている。本稿では西南方言に属するミネソタ方言を主とし、表記はフィエロ二母音式(Fiero Double-Vowel System)をとる。

生物・非生物[編集]

オジブウェー語では生物(生きているもの)か非生物(生きていないもの)かの区別が名詞の形式に表される。これは伝統的な思想に由来するもので現在に生物ではないと考えられているもの(例えば霊魂の宿る岩)でも生物のグループに入ることがある。また生物・非生物で意味を違える単語があり、を意味するmitigは生物形(複数mitigoog)では生えている木を表し、非生物形(複数mitigoon)では木の棒を表す。

[編集]

名詞は単数形と複数形をとり生物複数形は-g,非生物複数形は-nをとる。動詞主語目的語によって異なる語形をとる。

人称[編集]

生物/非生物、単数/複数、一人称/二人称/第一三人称(proximate: 近接)/第二三人称(obviative: 忌避)によって14種の形をとる。三人称には二種類あり、「彼は彼に会った」のように異なる三人称の名詞が二つある場合に片方が第一三人称、もう片方が第二三人称で表される。第二三人称は第四人称とも呼ばれる。

  • X — 非生物単数一人称
  • 0 — 非生物単数第一三人称
  • 0' — 非生物単数第二三人称
  • 1 — 生物単数一人称
  • 2 — 生物単数二人称
  • 3 — 生物単数第一三人称
  • 3' —生物単数第二三人称
  • 0p — 非生物複数第一三人称
  • 0'p —非生物複数第二三人称
  • 1p — 生物複数一人称(相手除く,exclusive)
  • 21 — 生物複数一人称(相手含む,inclusive)
  • 2p — 生物複数二人称
  • 3p — 生物複数第一三人称
  • 3'p — 生物複数第二三人称

代名詞[編集]

人称代名詞は数・人称によって異なる形を取る。一人称複数は包括的(inclusive)と除外的(exclusive)の二つがあり、前者は話している相手を含む場合、後者は含まない場合に用いられる。一人称単数niin、一人称複数(包括)niinawind、一人称複数(除外)giinawind、二人称単数giin、二人称単数giinawaa、三人称単数wiin、三人称複数wiinawaaである。

人称接辞[編集]

独立した語でなく名詞の頭について人称を表す人称接辞も一人称 n-, 二人称 g-, 三人称 w- を特徴とする。

語頭 1人称 2人称 3人称
a aa e i (n)ind- gid- od-
oo n- g- od-
ii n- g- w-
o (n)indo- gido- odo-
b (n)im- gi- (o)-
d g ' j z zh (n)in- gi- (o)-
p t k h ch m n s w y ni- gi- (o)-

一人称の(n)の部分を発音しない地域も多く、またnの後ろのiも脱落することがある。

指示代名詞[編集]

指示代名詞は(1)生物/非生物、(2)ここ/そこ/向こう側/こちら側 (3)単数/複数(4)第一三人称/第二三人称 の四つを基準に語形が異なる。指示代名詞は方言差が大きく以下の表は南西方言のミネソタ方言のものであり話者全てにとって正しい語形ではない。

生物 非生物
単数 複数 第二三人称 単数 複数
ここ wa'aw ongow onow o'ow onow
そこ a'aw ingiw iniw i'iw iniw
向こう側 a'awedi ingiwedig iniwedin i'iwedi iniwedin
こちら側 wa'awedi ongowedig onowedin o'owedi onowedin

その他[編集]

  • 疑問代名詞:awenen(誰)、awegonen(何)
  • 未知代名詞:awegwen(知らない人)、wegodogwen(知らない物)
  • 不定代名詞:awiiya(誰か)、gegoo(何か)

形容詞[編集]

日本語のような動詞形容詞の区別はなく一つの品詞(動詞)とみなされる。また繋辞と呼びうる語はあるが通常には用いられない。

オジブウェー文字[編集]

オジブウェー語の音図

ローマ字[編集]

子音 母音
h b/p d/t g/k dj/tc z/s j/c e ì/î ò/ô à/â
h p t k c s š ē/ê ī/î ō/ô ā/â
h p t k c s sh hn e ii oo aa
b d g j z zh n e ii oo aa
h p t k tc m n s c y w i o a
h hp ht hk hc m n hs y w i o a
h hp ht hk hc m n hs hsh y w i o a
h p t k ch m n s sh y w i o a

南方ローマ字式[編集]

南方ローマ字、又は、フィエロ二母音式(Fiero Double-Vowel System) 南方ローマ字式のアルファベットは「a」「aa」「b」「ch」「d」「e」「g」「'」「h」「i」「ii」「j」「k」「m」「n」「nh/ny」「o」「oo」「p」「s」「sh」「t」「w」「y」「z」「zh」。

  • 「']「b]「d」「g」「j」「z」「zh」「nh」は弱子音である。
  • 「h」「p」「t」「k」「ch」「m」「n」「s」「sh」「w」「y」は強子音である。

オジブウェー語の鼻濁音は子音の前のn、又は、長母音の後のnhで表す。

  • 「e」はいつも長母音だが、「i」「o」「a」の長母音は二母音で書いている。

北方ローマ字式[編集]

北方ローマ字、又は、ソートー・クリー式(Saulteaux-Cree System)はカナダの北方で使われている。 北方ローマ字式のアルファベットは「a」「â」「c」「e」「h」「i」「î」「k」「m」「n」「o」「ô」「p」「s」「š」「t」「w」「y」。

  • 「p]「t」「k」「c」「s」「š」は弱子音である。
  • 「h」「m」「n」「w」「y」は強子音である。弱子音の前に「h」を当てた場合、強子音に変身する。声門閉鎖音、および、鼻濁音は表示されていない。
  • 「e」はつねに長母音である。「i」「o」「a」の長母音はそれらの上にサーカムフレックスマクロン を付して表す。

中央ローマ字式[編集]

中央ローマ字式は北方ローマ字式と同じ子音式をつかい、南方ローマ字式と同じ母音式をつかう。

東方ローマ字式[編集]

東方ローマ字、又は、アルゴンキン式(Algonquin System)はカナダのケベック州でつかっているものです。

音図[編集]

オジブウェー語は日本語と同じように音節文字で書くことがある。オジブウェー語の音図のローマ字はソートー・クリー式です。

  • この図の子音は弱子音ですが、メー行とネー行は強子音です。
  • 強子音は音節文字の前に「''」があります。
  • エー段はいつも長母音ですが、イ段/オ段/ア段の長母音はそれらの上に点があります。

語彙[編集]

オジブワ ᐅᒋᐧᐯ
Ojibwe
オチポェー
オジブウェー語 ᐅᒋᐧᐯᒧᐧᐃᓐ
Ojibwemowin
オチポェーモオィヌ
アジア人(男)
「お茶作り男」
ᐊᓃᐲᐦᔖᐴᐦᑫᐧᐃᓂᓂ
Aniibiishaabookewinini
アニーピーッシャーポーッケオィニニ
アジア人(女)
「お茶作り女」
ᐊᓃᐲᐦᔖᐴᐦᑫᐧᐃᐦᐧᑫ
Aniibiishaabookewikwe
アニーピーッシャーポーッケオィッコェー
お茶
「葉汁」
ᐊᓃᐲᐦᔖᐴ
aniibiishaaboo
アニーピーッシャーポー
コーヒー
「黒い薬汁」
ᒪᐦᑲᑌᒪᔥᑭᐦᑭᐧᐋᐴ
makade-mashkikiwaaboo
マッカテー・マッシュキッキオァーポー
はい ᐁᔾ(男)/ᐁᔦ(女)
enh(男)/enye(女)
エーン(男)/エーンイェー(女)
いいえ ᑳᐧᐄᓐ
gaawiin
カーオィーヌ
私の名前は○○です。 ○○ ᓂᓐᑎᔑᓂᐦᑳᔅ ᓃᓐ᙮
○○ nindizhinikaaz niin.
○○ ニンティシニッカース ニーヌ。
ありがとう ᒦᐧᑫᐦᒡ
miigwech
ミーコェーッチュ
ᐯᔑᒃ
bezhig
ペーシク
ᓃᔥ
niizh
ニーシュ
ᓂᐦᐧᓯ
niswi
ニッソィ
ᓃᐧᐃᓐ
niiwin
ニーオィヌ
ᓈᓇᓐ
naanan
ナーナヌ
ᓂᓐᑯᐧᑖᐦᐧᓯ
ningodwaaswi
ニンコトァーッソィ
ᓃᐧᔖᐦᐧᓯ
niizhwaaswi
ニーショァーッソィ
ᓂᐦᐧᔖᐦᐧᓯ
nishwaaswi
ニッショァーッソィ
ᔖᓐᑲᐦᐧᓯ
zhaangaswi
シャーンカッソィ
ᒥᑖᐦᐧᓯ
midaaswi
ミターッソィ

例解[編集]

この話はミネソタ州立大学ベミジ(Bemidji State University)のブライアン・ドナヴァン(Brian Donavan)博士のウェブ・ページにあったもので、もとはアール・ナイホルム(Earl Nyholm)博士のお話でありました。ナイホルム博士、または「オチーンコァニカヌ」(英:Otchingwanigan、オ: Ojiingwanigan) は、ミシガン州の上半島のかたです。

本文[編集]

  1. Aabiding gii-ayaawag niizh ikwewag: mindimooyenh, odaanisan bezhig.
  2. Iwidi Chi-achaabaaning akeyaa gii-onjibaawag.
  3. Inashke naa mewinzha gii-aawan, mii eta go imaa sa wiigiwaaming gaa-taawaad igo.
  4. Mii dash iwapii, aabiding igo gii-awi-bagida'waawaad, giigoonyan wii-amwaawaad.

翻訳[編集]

  1. 昔ある所に二人の女がいた。婆と、娘の 一人。
  2. そちらはインガーの方から来た。
  3. ほら、もう夙に有ったそうなのさ。そこでウィグワムに住んでいたのさ。
  4. そしでそのとき魚を食べたくて、さきほどさ、網漁業に行った。

注解[編集]

Aabiding gii-ayaawag niizh ikwewag: mindimooyenh, odaanisan bezhig.
aabiding gii- ayaa -wag niizh ikwe -wag mindimooyenh, o- daanis -an bezhig.
むかし 過去形- ある所にいる -3P -3P 婆、 3.所有形- -忌避形 一。
むかし ある所にいた 二人の 婆と、 娘の 一人。


Iwidi Chi-achaabaaning akeyaa gii-onjibaawag.
iwidi chi- achaabaan -ing akeyaa gii- onjibaa -wag.
そちら 弓弦 -処格形 過去形- 来る -3P.
そちらは インガーの 方から 来た。


Inashke naa mewinzha gii-aawan, mii eta go imaa sa wiigiwaaming gaa-taawaad igo.
inashke naa mewinzha gii- aawan mii eta go imaa sa wiigiwaam -ing gaa- daa -waad igo.
ほら もう 過去形- 有る そう なの そこ ウィグワム -処格形 過去形.接続形- 住む -3P.接続形
ほら もう 夙に 有った そうなの そこ ウィグワムに 住んでいたの さ。


Mii dash iwapii, aabiding igo gii-awi-bagida'waawaad, giigoonyan wii-amwaawaad.
mii dash iw- -apii aabiding igo gii- awi- bagida'waa -waad, giigoonh -yan wii- amw -aawaad.
そう その- -とき 先程 過去形- 行く- 網漁業 -3P.接続形 -忌避形 希望形- 食べる -3P/忌避形.接続形
そうで そのとき 先程 さ、 網漁業に行った。 魚を 食べたくて

※ミネソタ州のインガー村落はビグボーストリング(大弓弦)川の川岸にある。

略語

3 生物単数第一三人称
3P 生物複数第一三人称

参考書籍[編集]

  • Mithun, Marianne. 1999. The Languages of Native North America. Cambridge: University Press.
  • Nichols, John D. and Earl Nyholm. 1995. A Concise Dictionary of Minnesota Ojibwe. Minneapolis: University of Minnesota Press.
  • Picard, Marc. 1984. On the Naturalness of Algonquian [ɬ]. International Journal of American Linguistics 50:424-37.
  • Rhodes, Richard A. 1985. Eastern Ojibwa-Chippewa-Ottawa Dictionary. Berlin: Mouton de Gruyter.
  • Valentine, J. Randolph "Randy". 2001. Nishnaabemwin Reference Grammar. Toronto: University of Toronto Press.

脚注[編集]

  1. ^ カナダでは「オジブワ」、アメリカ合衆国では「チペワ」の呼称が一般的である。

外部リンク[編集]