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|title= Saponins from the Flower Buds of Buddleja officinalis|journal= Journal of Natural Products|issn=0163-3864|publisher=American Chemical Society (ACS) |date=2003-12-31|volume=67|number=1|pages=10-13 |doi=10.1021/np0300131}} CRID : [https://cir.nii.ac.jp/crid/1362544419479407488 1362544419479407488].</ref>ので有毒ともいう{{refnest|フジウツギ<ref name="funayama_67">{{Harvnb|船山『毒草・薬草事典』|2012|pages=67-|loc=「§4 魚毒となる植物 フジウツギ」}}</ref>、「ウラジロフジウツギ」<ref name="satake">{{Harvnb|佐竹『日本の有毒植物』|2012|page=94|loc=「ウラジロフジウツギ」}}</ref>。}}。


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[[葉]]は長さ1-30[[センチメートル|cm]]で細長く、ほとんどは[[葉#葉序|対生]]。花は長さ1cmほどの筒状で、花びらの先が4裂し、長さ10-50cmの密な[[花序#複合的なもの|円錐花序]]をなす。花の色は種類により白、桃色、赤、紫、橙色、黄色などいろいろある。[[果実]]は[[蒴果]]{{efn2|ただし従来''Nicodemia'' 属とされていた種の果実[[液果]]。}}、多数の[[種子]]を含む{{refnest|フジウツギ<ref>{{Harvnb|石川『原色日本植物種子写真図鑑』|1994|page=1343|loc=「japonica フジウツギ」}}</ref>、ウラジロフジウツギ<ref>{{Harvnb|石川『原色日本植物種子写真図鑑』|1994|page=1342|loc=「Buddleja curviflora ウラジロフジウツギ」}}</ref>。}}


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小林享夫 ほか|publisher=全国農村教育協会|chapter=ウラジロフジウツギ|page=596}}</ref>が自生する。フジウツギ(藤空木)の名は花序の様子や色が[[藤]]に似ていることから。


数種が園芸用に栽培されており、特によく栽培されるのがフサフジウツギ(ニシキフジウツギ)''B. davidii'' である。これは極端に寒い地域を除いて栽培しやすく、[[野生化]]することも多い。フサフジウツギは中国原産とされるが、[[秩父]]で野生状態で発見されたため、チチブフジウツギの別名がついている在来種とみる説もある
数種が園芸用に栽培されており、特によく栽培されるのがフサフジウツギ(ニシキフジウツギ)''B. davidii'' <ref>{{Harvnb|林ほか『日本の樹木』|2011|page=649}}</ref><ref>{{Harvnb|藤木、三好、木村|2016|pages=288、750|loc=「フサフジウツギ」}}</ref>である。これは極端に寒い地域を除いて栽培しやすく、[[野生化]]することも多い。フサフジウツギは中国原産とされるが、[[秩父]]で野生状態で発見されたため、チチブフジウツギ<ref>{{Harvnb|大橋ほか『日本の野生植物』|2017|page=92|loc=「チチブフジウツギ」}}</ref>の別名がついている{{efn2|在来種とみる説もある{{要出典|date=2023年5月}}。}}


そのほかオレンジ色の''B. globosa'' や、ライラック色の''B. alternifolia''、また''B. x weyeriana'' (''B. globosa'' x ''B. davidii'') などの交雑種が栽培される。[[沖縄県]]では中国原産のトウフジウツギ''B. lindleyana'' がよく栽培されている。
そのほかオレンジ色の''[[#B. globosa|B. globosa]]'' <!-- ギャラリーの画像へジャンプを設定。 -->や、ライラック色の''[[#B. alternifolia|B. alternifolia]]''、また''B. x weyeriana'' (''B. globosa'' x ''B. davidii'') などの交雑種が栽培される。[[沖縄県]]では中国原産のトウフジウツギ''B. lindleyana'' がよく栽培されている。


属学名はイギリス宣教師植物学者バドルAdam Buddle(1660 – 1715)にちなむ。正しくは"Buddleia"になりそうだが、[[リンネ]]が"Buddleja"と書いたためこれが正式名として定着した。
属学名はイギリス国教会宣教師植物学者だったアダム・バドル[[:d:Q3774295|Adam Buddle]](1660 – 1715){{efn2|[[著者の引用 (植物学)|著者の引用]]はBuddle<ref>{{Cite book |edition=2d ed. |title=Taxonomic literature : a selective guide to botanical publications and collections with dates, commentaries and types|chapter= Buddle – Adam Buddle (fl. c.1660-1715) |url=https://www.biodiversitylibrary.org/item/103414 |publisher=Bohn, Scheltema & Holkema |date=1976 |location=[[ユトレヒト]] |volume=1 |first=Frans A. |last=Stafleu |first2=Richard S. |last2=Cowan}}. {{isbn2|978-90-313-0224-6}}</ref>。}}にちなむ。正しくは"Buddleia"になりそうだが、[[リンネ]]が"Buddleja"と書いたためこれが正式名として定着した。


==栽培==
==栽培==


ブッドレアは花木の中では、[[実生]]からの栽培が最も簡単なものの一つである。春まきで翌年から開花することが多い。ただ、木本としては比較的短命で、数年で枯れることもある。タネが入手しやすいのは、D. davidiiの空色系と青・白・ピンクなどが混ざったもの、それにB. globosaである。
ブッドレアは花木の中では、[[実生]]からの栽培が最も簡単なものの一つである。春まきで翌年から開花することが多い。ただ、木本としては比較的短命で、数年で枯れることもある。タネが入手しやすいのは、''[[#B. davidii|B. davidii]]'' の空色系と青・白・ピンクなどが混ざったもの、それに''[[#B. globosa|B. globosa]]'' である。


[[種まき]]は4月頃に行う。タネはかなり細かいが、一袋にかなりの量が入っているので、苗床などの播き、覆土はせずにそっと手のひらで押さえ、細めのじょうろで丁寧に水やりをするようにする。発芽までに10日から半月くらいかかる。混み合ったところは間引き、本葉が出てきたら一度仮植えし、1m位の間隔に定植する。春から秋まで日向または半日陰になる、水はけの良いところを好む。
[[種まき]]は4月頃に行う。タネはかなり細かいが、一袋にかなりの量が入っているので、苗床などの播き、覆土はせずにそっと手のひらで押さえ、細めのじょうろで丁寧に水やりをするようにする。発芽までに10日から半月くらいかかる。混み合ったところは間引き、本葉が出てきたら一度仮植えし、1m位の間隔に定植する。春から秋まで日向または半日陰になる、水はけの良いところを好む。
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[[挿し木]]も容易である。
[[挿し木]]も容易である。


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== 参考文献 ==
脚注の典拠、主な執筆者の50音順。
*{{cite book|和書|title=原色日本植物種子写真図鑑|author=石川茂雄 |location=東京|publisher=石川茂雄図鑑刊行委員会|ref={{国立国会図書館書誌ID|95026228}}|ref={{Harvid|石川『原色日本植物種子写真図鑑』|1994}}|chapter=「Buddlejaceae フジウツギ科」|year=1994}}
**「Buddleja curviflora ウラジロフジウツギ」1342頁。
**「japonica フジウツギ」1343頁。
* {{cite book|和書|title=日本の野生植物 |editor1=大橋広好|editor2=門田裕一|editor3=邑田仁|editor4=米倉浩司|editor5=木原浩|publisher=平凡社|date=2017-09|ref={{||}}|id={{国立国会図書館書誌ID|22954771}}|ref={{Harvid|大橋ほか『日本の野生植物』|2017}}|year=2017}}{{ISBN2|9784582535358}}別題『Wild Flowers of Japan』。
**「フジウツギ科」91頁。
*{{cite book|和書|title=日本の有毒植物 |author=佐竹元吉 監修|chapter=ウラジロフジウツギ|ref={{Harvid|佐竹『日本の有毒植物』|2012}}|page=94|series= フィールドベスト図鑑 ; vol.16|publisher=学研教育出版、学研マーケティング|date=2012-05|id={{国立国会図書館書誌ID|22090314}}|}}{{ISBN2|9784054052697}}。別題『Poisonous Plants in Japan』。
*{{cite book|和書|title= 日本の樹木 |editor1=林弥栄 編・解説|editor2=畔上能力、菱山忠三郎 解説|edition=増補改訂新版|author=門田裕一 改訂版監修|publisher=山と渓谷社|series=山渓カラー名鑑|ref={{Harvid|林ほか『日本の樹木』|2011}}|date=2011-12|year=2011}}
* {{cite book|和書|title= 北東北維管束植物分布図 |author1=藤原陸夫|author2= 阿部裕紀子|location=秋田|publisher= 秋田植生研究会|ref={{Harvid|藤原、阿部|2017}}|page=641|date=2017-03|year=2017}}
* {{cite book|和書|title= 毒草・薬草事典 : 命にかかわる毒草から和漢・西洋薬、園芸植物として使われているものまで
|author=船山信次|location=東京 |publisher= ソフトバンククリエイティブ |year=2012|series=サイエンス・アイ新書 ; SIS-245|chapter=第1章 命にかかわる毒草・薬草 §1 日本に自生する代表的な毒性の強い毒草・薬草|ref={{Harvid|船山『毒草・薬草事典』|2012}}|pages=67、641}}
**「Buddleja」、「ゴマノバグサ科」、「フジウツギ」641頁。
*{{cite book|和書|title= 日本産花粉図鑑|author1=藤木利之|author2= 三好教夫|author3= 木村裕子 |edition=増補・第2版|location=札幌 |publisher= 北海道大学出版会|
date=2016-04|ref={{Harvid|藤木、三好、木村|2016}}|year=2016}}
**「フジウツギ科」749、885頁
*{{cite book|和書|chapter=ふじうつぎ科(うらじろふじうつぎ)|editor= 北隆館編集部 |title=原色図鑑ライブラリー|volume=15|publisher=北隆館|year=1956|id={{国立国会図書館書誌ID|1372937}}|ref={{Harvid|『原色図鑑ライブラリー』|1956}}|page=6}} 国立国会図書館デジタルコレクション。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注 ===
{{Notelist2}}
=== 出典 ===
{{Reflist|30em}}

== 関連項目 ==
{{wikisourcelang-inline|en|Dictionary_of_National_Biography,_1885-1900/Buddle,_Adam|Buddle, Adam}}
*[[蜜源植物]]
*{{仮リンク|フジウツギ属を食草とするチョウ目の一覧|en|List of Lepidoptera that feed on Buddleja}}


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2023年5月25日 (木) 09:57時点における版

フジウツギ属
フサフジウツギ(Buddleja davidii
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク類 Asterids
: シソ目 Lamiales
: ゴマノハグサ科 Scrophulariaceae[1]
: フジウツギ属 Buddleja
  • 本文参照

フジウツギ属Buddleja)はゴマノハグサ科[1][注 1]の植物の属である。が美しいので園芸用に栽培され、属名からブッドレアブッドレヤ)と呼ばれることが多い。世界に約100種あり、ほとんどは常緑または落葉性の低木[3]だが、一部に高さ30mに及ぶ高木や、草本もある。ヨーロッパ・オーストラリアを除く温帯熱帯に分布する。多くは芳香があり、また蜜が多いのでよくが吸蜜に訪れる。サポニンを多く含む[4][5][6]ので有毒ともいう[9]

は長さ1-30cmで細長く、ほとんどは対生。花は長さ1cmほどの筒状で、花びらの先が4裂し、長さ10-50cmの密な円錐花序をなす。花の色は種類により白、桃色、赤、紫、橙色、黄色などいろいろある。果実蒴果[注 2]、多数の種子を含む[12]

日本にはフジウツギB. japonica [7][13][14]とウラジロフジウツギB. curviflora [8][15][16][17]が自生する。フジウツギ(藤空木)の名は花序の様子や色がに似ていることから。

数種が園芸用に栽培されており、特によく栽培されるのがフサフジウツギ(ニシキフジウツギ)B. davidii [18][19]である。これは極端に寒い地域を除いて栽培しやすく、野生化することも多い。フサフジウツギは中国原産とされるが、秩父で野生状態で発見されたため、チチブフジウツギ[20]の別名がついている[注 3]

そのほかオレンジ色のB. globosa や、ライラック色のB. alternifolia、またB. x weyeriana (B. globosa x B. davidii) などの交雑種が栽培される。沖縄県では中国原産のトウフジウツギB. lindleyana がよく栽培されている。

属学名はイギリス国教会宣教師で植物学者だったアダム・バドルAdam Buddle(1660 – 1715)[注 4]にちなむ。正しくは"Buddleia"になりそうだが、リンネが"Buddleja"と書いたためこれが正式名として定着した。

栽培

ブッドレアは花木の中では、実生からの栽培が最も簡単なものの一つである。春まきで翌年から開花することが多い。ただ、木本としては比較的短命で、数年で枯れることもある。タネが入手しやすいのは、B. davidii の空色系と青・白・ピンクなどが混ざったもの、それにB. globosa である。

種まきは4月頃に行う。タネはかなり細かいが、一袋にかなりの量が入っているので、苗床などの播き、覆土はせずにそっと手のひらで押さえ、細めのじょうろで丁寧に水やりをするようにする。発芽までに10日から半月くらいかかる。混み合ったところは間引き、本葉が出てきたら一度仮植えし、1m位の間隔に定植する。春から秋まで日向または半日陰になる、水はけの良いところを好む。 移植をする際は、ひげ根が土と離れやすいので、注意が必要である。

挿し木も容易である。

参考文献

脚注の典拠、主な執筆者の50音順。

  • 石川茂雄「「Buddlejaceae フジウツギ科」」『原色日本植物種子写真図鑑』石川茂雄図鑑刊行委員会、東京、1994年。 
    • 「Buddleja curviflora ウラジロフジウツギ」1342頁。
    • 「japonica フジウツギ」1343頁。
  • 大橋広好、門田裕一、邑田仁 ほか 編『日本の野生植物』平凡社、2017年9月。国立国会図書館書誌ID:22954771 ISBN 9784582535358別題『Wild Flowers of Japan』。
    • 「フジウツギ科」91頁。
  • 佐竹元吉 監修「ウラジロフジウツギ」『日本の有毒植物』学研教育出版、学研マーケティング〈フィールドベスト図鑑 ; vol.16〉、2012年5月、94頁。国立国会図書館書誌ID:22090314 ISBN 9784054052697。別題『Poisonous Plants in Japan』。
  • 門田裕一 改訂版監修 著、林弥栄 編・解説、畔上能力、菱山忠三郎 解説 編『日本の樹木』(増補改訂新版)山と渓谷社〈山渓カラー名鑑〉、2011年12月。 
  • 藤原陸夫、阿部裕紀子『北東北維管束植物分布図』秋田植生研究会、秋田、2017年3月、641頁。 
  • 船山信次「第1章 命にかかわる毒草・薬草 §1 日本に自生する代表的な毒性の強い毒草・薬草」『毒草・薬草事典 : 命にかかわる毒草から和漢・西洋薬、園芸植物として使われているものまで』ソフトバンククリエイティブ、東京〈サイエンス・アイ新書 ; SIS-245〉、2012年、67、641頁。 
    • 「Buddleja」、「ゴマノバグサ科」、「フジウツギ」641頁。
  • 藤木利之、三好教夫、木村裕子『日本産花粉図鑑』(増補・第2版)北海道大学出版会、札幌、2016年4月。 
    • 「フジウツギ科」749、885頁
  • 北隆館編集部 編「ふじうつぎ科(うらじろふじうつぎ)」『原色図鑑ライブラリー』 15巻、北隆館、1956年、6頁。国立国会図書館書誌ID:1372937  国立国会図書館デジタルコレクション。

脚注

  1. ^ 古い分類体系では独立のフジウツギ科としていた[2]
  2. ^ ただし従来Nicodemia 属とされていた種の果実は液果
  3. ^ 在来種とみる説もある[要出典]
  4. ^ 著者の引用はBuddle[21]

出典

  1. ^ a b 藤原、阿部 2017, p. 641
  2. ^ 『原色図鑑ライブラリー』, p. 6
  3. ^ 大村 和也、澤田 晴雄、千嶋 武、五十嵐 勇治「渓畔林再生実験におけるシカ食害対策」『日本林学会大会発表データベース』2004年3月17日、P3032-、doi:10.11519/jfs.115.0.P3032.0JSTAGE“_II_.資料および方法 : 埼玉県大滝村に位置する東京大学秩父演習林内の豆焼沢砂防堰堤右岸の土砂堆積地に4区画の植栽地を設けた。この場所に渓畔林の高木層を構成するシオジ、カツラ、ケヤキの植栽と、亜高木層および低木層を構成するバッコヤナギの挿木、フサザクラ、フジウツギの播種を行った。]” 
  4. ^ 山本, 篤; 宮瀬, 敏男; 上野, 明; 前田, 利男 (1991-10-25). “Buddlejasaponins I-IV, four new oleanane-triterpene saponins from the aerial parts of Buddleja japonica Hemsl.”. Chemical & Pharmaceutical Bulletin 39 (10): 2764-2766. doi:10.1248/cpb.39.2764. ISSN 0009-2363. "Four new oleanane-type triterpene saponins, named buddlejasaponins I (1), II (2), III (3) and IV (4) were isolated from the aerial parts of Buddleja japonica HEMSL., together with a known saponin saikosaponin a (5). Their structures were elucidated on the basis of the chemical and spectroscopic studies. [新しいオレアナン型トリテルペン・サポニン4種が、既知のサポニン・サイコサポニン a (5) とともにフジウツギ B. japonica Hemsl. の地上部から単離された。それぞれブッドレア・サポニン I (1)、II (2)、III (3) および IV (4) と名付けられた。その構造の解明は、化学的研究と分光学的研究に基づく。]" 
  5. ^ Avila A., José Guillermo; Romo de Vivar, Alfonso (2002-11). “Triterpenoid saponins and other glycosides from Buddleja scordioides”. Biochemical Systematics and Ecology (Elsevier BV) 30 (10): 1003-1005. doi:10.1016/s0305-1978(02)00032-7. ISSN 0305-1978.  CRID : 1364233269026335744.
  6. ^ Guo, Hongzhu; Koike, Kazuo; Li, Wei; Satou, Tadaaki; Guo, Dean; Nikaido, Tamotsu (2003-12-31). “Saponins from the Flower Buds of Buddleja officinalis”. Journal of Natural Products (American Chemical Society (ACS)) 67 (1): 10-13. doi:10.1021/np0300131. ISSN 0163-3864.  CRID : 1362544419479407488.
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関連項目

ウィキソースのロゴ 英語版ウィキソースに本記事に関連した原文があります:Buddle, Adam