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2022年8月11日 (木) 14:00時点における版
黒板をひっかく音[1](黒板ひっかき音[2]黒板摩擦音[3])は、一般には不快な音とされている[4]。 黒板と並び一般的に不快とされている、歯科医師が歯を削る音[5]、発泡スチロール[6]など「もの」と「もの」がこすれることによって出る音[1]を含め、24人のボランティアに聞いて答えてもらったリン・ハルパーン(眼科)、ランドルフ・ブレイク(心理学)、ジェームズ・ヒレンブランド(聴覚学)による研究では、嫌いな音一位に選ばれている[7]。 自閉症の子どもの中には聞こえ方が他の人と違うために平気という子もいる[8]。
物理的特性
黒板を引っ掻くと、人が会話で使う音域の丁度中間で、敏感に聞こえてしまい、人が不快に感じる2000~4000ヘルツの周波数帯の音が出る[9]。 ウィーン大学などの研究チームによれば、人間の耳の穴はこの帯域を増幅する構造になっているため、音の高低が変化する不快な音を特に耳障りに感じるらしい[10]。
生理反応
交感神経
プレチスモグラム,まばたき,呼吸,SPRを用いた分析では、<せせらぎ,鳥のさえずり,波の音> と <蕎麦をすする音,黒板のスクラッチ音,歯をけずる昔〉との問で有意差が見られた一方で、<蕎麦をすする音,黒板のスクラッチ音,歯をけずる昔〉に有意差は見られなかった[11]。 黒板ひっかき音を2分間聞かせる実験の結果、その間に唾液アミラーゼ活性値が高まる[2]。交感神経が刺激され唾液アミラーゼが分泌され活性値が高まると考えられている[12]。 高くなった反応値は、健常児者と知的障害児者は、おおよそ6分を過ぎると下がり安定してくるのに対し、自閉症スペクトラム障害児者の大半に関しては10分を超えてようやく安定する場合が確認された[13]。 通常、不快と感じる周波数帯域は 2 kHz から 9 kHz の間にピークをもつ音源であり[14]、同じピークを持つ音楽刺激と黒板摩擦音は自律神経系に異なる影響を与えた[3]。
心理反応
印象評価
『にがてな音』として黒板をはじめ、「もの」と「もの」がこすれることによって出る音が上げられることは多く、これらの音のイメージの評定には「かん高い」、「不安な」「不快な」傾向がみられている[1]。
人類の祖先の痕跡説
黒板を引っ掻く音が、猿の警戒音に似ているために、原始の記憶が蘇り不快に感じるという説[9]。 ハルパーン、ブレイク、ヒレンブランドらによる研究では、3~6キロヘルツの音が不快感に寄与しており、マカクザルが警告を発する時の声の波形とよく似ていた。この研究は2006年にイグノーベル音響学賞を受賞している[7]。
関連項目
脚注
- ^ a b c d 羽藤律 2019, p. 497.
- ^ a b 山口由美 2013, p. 48.
- ^ a b 中島淑恵 2014, p. 3.
- ^ 生島博之 2010, p. 9.
- ^ a b 田山淳, 田多秀興 & 菅原正和 2000, p. 5.
- ^ 柴田慎一, 秋田貴俊 & 木村春彦 2015, p. 100.
- ^ a b 久我羅内 2008, p. 26.
- ^ 榊原洋一 2011, p. 32.
- ^ a b brilliant出版 2019, p. 159.
- ^ 山口由美 2013, p. 46.
- ^ 田山淳, 田多秀興 & 菅原正和 2000, p. 8.
- ^ 山口由美 2013, p. 10.
- ^ 山口由美 2013, p. 50.
- ^ 川口弘哲 et al. 2010, p. 2181.
参考文献
- 田山淳、田多秀興、菅原正和「快・不快聴覚刺激が末梢自律神経系の活動指標に及ぼす影響」『岩手大学教育学部附属教育実践研究指導センター研究紀要』第10号、岩手大学教育学部附属教育実践研究指導センター、2000年、1-13頁、doi:10.15113/00011097、ISSN 09172874、NAID 110000537964、CRID 1390009224896133504、2022年8月11日閲覧。
- 久我羅内『めざせイグ・ノーベル賞 傾向と対策』阪急コミュニケーションズ、2008年、26頁。ISBN 9784484082226 。
- 生島博之「アスペルガー症候群と感覚過敏(2)」『教育臨床事例研究』第22号、愛知教育大学教育実践総合センター、2010年、1-14頁、NAID 120002061449、CRID 1050845763367707264、2022年8月11日閲覧。
- 川口弘哲、松本哲也、竹内義則、工藤博章、大西昇「スティックスリップ音の不快要因 ―ピーク周波数と包絡線―」『電気学会論文誌C』第130号、一般社団法人 電気学会、2010年、2180-2181頁、doi:10.1541/ieejeiss.130.2180、ISSN 13488155、NAID 10027458291、CRID 1390282679585964160、2022年8月11日閲覧。
- 榊原洋一『自閉症の正しい理解と最新知識』日東書院本社、2011年、32頁。ISBN 9784528019041 。
- 山口由美「「モノラルスピーカー音」と「ステレオスピーカー音」の音楽聴取時における自閉症スペクトラム障害児者の唾液アミラーゼ活性ストレス反応」『http://hdl.handle.net/10129/5127』、弘前大学、2013年、1-110頁、2022年8月11日閲覧。
- 中島淑恵「音楽の周波数特性が自律神経活動に与える影響」『http://hdl.handle.net/10097/58447』、東北大学、2014年、1-54頁、NAID 500000925286、NDLJP:8953337、2022年8月11日閲覧。
- 柴田慎一、秋田貴俊、木村春彦「簡易脳波センサを用いた快・不快音聴収時の情動推定に関する一考察」『大同大学紀要』第51号、大同大学研究・産学連携支援室、2015年、97-103頁、ISSN 21852375、NAID 120005768435、CRID 1520290882776201728、2022年8月11日閲覧。
- 羽藤律「「にがてな音」をめぐって」『日本心理学会大会発表論文集』第83号、公益社団法人 日本心理学会、2019年、497頁、doi:10.4992/pacjpa.83.0_3a-044、ISSN 24337609、NAID 130007909472、CRID 1390285697600265472、2022年8月11日閲覧。
- brilliant出版『自然医学の雑学【420種類】』brilliant出版、2019年、159頁。ASIN B082ZW5V3G 。