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[[File:Zentralfriedhof Vienna - Boltzmann.JPG|thumb|[[ウィーン中央墓地]]にある[[ルートヴィヒ・ボルツマン]]の墓碑には、ボルツマンの公式が刻まれている]]
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[[統計力学]]において、'''ボルツマンの公式'''(ボルツマンの原理、ボルツマンの関係式)とは、マクロな世界の熱力学における[[エントロピー]]''S''との[[マクロ状態]]に相当する[[ミク状態]]の数''W''結びつけ以下の関係式のことである。
'''ボルツマンの原理'''(ボルツマンの関係式、ボルツマンの式)とは、[[統計力学]]において微視的な[[状態]]から巨視的な[[熱力学ポテンシャル]]である[[エントピー]]を与える関係式である。
ボルツマンの原理により、状態数 {{mvar|W}} からエントロピー {{mvar|S}} が
:<math>S = k \log W \! </math> &nbsp; &nbsp; &nbsp; &nbsp; &nbsp; (1)
:<math>S = k \log W</math>
ここで''k''は[[ボルツマン定数]](1.38062 x 10<sup>−23</sup> J/K)、''W''は与えられたマクロ状態に相当するミクロ状態の数である。
で与えられる。ここで[[対数]] log に[[自然対数]]を用いるとき、係数 {{mvar|k}} は[[ボルツマン定数]]である。


二つの独立な系の状態数がそれぞれ {{math|''W''{{sub|1}}, ''W''{{sub|2}}}} であるとき、これらを合成した系の状態数は {{math|''W''{{sub|1}}&times;''W''{{sub|2}}}} で表される。一方、それぞれの系のエントロピーがそれぞれ {{math|''S''{{sub|1}}, ''S''{{sub|2}}}} であるとき、これらを合成した系のエントロピーは {{math|''S''{{sub|1}}+''S''{{sub|2}}}} で表される。したがって、エントロピーが状態数の関数として表されるならば、状態数の対数に比例する<ref>Toda, Kubo & Saito, p.30</ref>。
また、"log"は[[自然対数]]である。よって、そのことを強調して以下のように表記されることもある。
:<math>S = k \ln W \!</math> &nbsp; &nbsp; &nbsp; &nbsp; &nbsp;


1934年にスイスの物理化学者{{仮リンク|ヴェルナー・クーン|en|Werner Kuhn}}は、ボルツマンの公式を用いて、ゴム分子の[[状態方程式 (学)|状態方程式]]を導出することに成功した。これはゴムのエントロピーモデルとして知られる。
1934年にスイスの物理化学者{{仮リンク|ヴェルナー・クーン|en|Werner Kuhn}}は、ボルツマンの公式を用いて、ゴム分子の[[状態方程式 (熱力学)|状態方程式]]を導出することに成功した。これはゴムのエントロピーモデルとして知られる。


==参考文献==
== 脚注 ==
<references/>
<references />


==関連項目==
== 参考文献 ==
* {{Cite book
*[[エントロピーの歴史]]
|author= M.Toda, R.Kubo and N.Saito
*[[ギブズエントロピー]]
|title= Statistical Physics I - Equilibrium Statistical Mechanics
|edition= 2nd
|year= 1992
|series= Solid-State Sciences
|publisher= Springer
|isbn= 3-540-53662-0
}}

== 関連項目 ==
* [[情報量]] - [[情報理論]]的エントロピー


==外部リンク==
==外部リンク==

2020年1月2日 (木) 16:36時点における版

ウィーン中央墓地にあるルートヴィヒ・ボルツマンの墓碑には、ボルツマンの公式が刻まれている

ボルツマンの原理(ボルツマンの関係式、ボルツマンの公式)とは、統計力学において、系の微視的な状態数から巨視的な熱力学ポテンシャルであるエントロピーを与える関係式である。 ボルツマンの原理により、状態数 W からエントロピー S

で与えられる。ここで対数 log に自然対数を用いるとき、係数 kボルツマン定数である。

二つの独立な系の状態数がそれぞれ W1, W2 であるとき、これらを合成した系の状態数は W1×W2 で表される。一方、それぞれの系のエントロピーがそれぞれ S1, S2 であるとき、これらを合成した系のエントロピーは S1+S2 で表される。したがって、エントロピーが状態数の関数として表されるならば、状態数の対数に比例する[1]

1934年にスイスの物理化学者ヴェルナー・クーン英語版は、ボルツマンの公式を用いて、ゴム分子の状態方程式を導出することに成功した。これはゴムのエントロピーモデルとして知られる。

脚注

  1. ^ Toda, Kubo & Saito, p.30

参考文献

  • M.Toda, R.Kubo and N.Saito (1992). Statistical Physics I - Equilibrium Statistical Mechanics. Solid-State Sciences (2nd ed.). Springer. ISBN 3-540-53662-0 

関連項目

外部リンク