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== 概要 ==
== 概要 ==
松本市の中心市街地の南に位置する中山丘陵から、東側の[[山地]]と[[盆地]]の境界付近を北北西-南南東走向に延びる[[断層#横ずれ断層|左横ずれ断層]]である。全体的に[[牛伏川]](うしぶせがわ)に沿っており、松本市並柳から中山を経由し崖の湯へと伸びている。断層線の長さは約7kmで、そのうちある約5kmは明瞭な断層線を断層崖として見ることが出来る<ref>奥村晃史、佃栄吉:[https://doi.org/10.11462/afr1985.1995.13_54 1988年糸魚川-静岡構造線活断層系牛伏寺断層(松本市並柳地区)トレンチ調査 日本の活断層発掘調査[54]] 活断層研究 Vol.1995 (1995) No.13 p.54-59</ref>。西側には牛伏寺前縁断層が併走し、地下1000m付近ではひとつの断層を形成していると考えられる<ref>{{PDFlink|[http://wwwsoc.nii.ac.jp/jepsjmo/cd-rom/1999cd-rom/pdf/sb/sb-p013.pdf 松本盆地東縁における糸魚川-静岡構造線活断層系を横切る反射法地震探査]}} 日本地球惑星科学連合</ref>。また、[[高瀬川 (長野県)|高瀬川]]と[[犀川]]の合流点より南部の松本盆地東縁断層と牛伏寺断層を同一な断層セグメントとするのが妥当との説も出されている<ref name="geog115-2"/>。
松本市の中心市街地の南に位置する中山丘陵から、東側の[[山地]]と[[盆地]]の境界付近を北北西-南南東走向に延びる[[断層#横ずれ断層|左横ずれ断層]]である。全体的に[[牛伏川]](うしぶせがわ)に沿っており、松本市並柳から中山を経由し崖の湯へと伸びている。断層線の長さは約7kmで、そのうちある約5kmは明瞭な断層線を断層崖として見ることが出来る<ref>奥村晃史、佃栄吉:[https://doi.org/10.11462/afr1985.1995.13_54 1988年糸魚川-静岡構造線活断層系牛伏寺断層(松本市並柳地区)トレンチ調査 日本の活断層発掘調査[54]] 活断層研究 1995 1995 13 p.54-59, {{doi|10.11462/afr1985.1995.13_54}}</ref>。西側には牛伏寺前縁断層が併走し、地下1000m付近ではひとつの断層を形成していると考えられる<ref>{{PDFlink|[http://wwwsoc.nii.ac.jp/jepsjmo/cd-rom/1999cd-rom/pdf/sb/sb-p013.pdf 松本盆地東縁における糸魚川-静岡構造線活断層系を横切る反射法地震探査]}} 日本地球惑星科学連合</ref>。また、[[高瀬川 (長野県)|高瀬川]]と[[犀川]]の合流点より南部の松本盆地東縁断層と牛伏寺断層を同一な断層セグメントとするのが妥当との説も出されている<ref name="geog115-2"/>。


松本市街地部分では人間の活動に伴い断層の痕跡は不明瞭であるが、郊外では直線状の[[断層崖]]が非常に明瞭であり、崖に沿って両側の[[河川]]や[[丘陵]]が食い違っている部分を見ることが出来る。活断層の活動度を示す平均変位速度(1000年間の平均変位量)は5 - 14m/1000年と考えられており<ref>[http://www.hiroi.iii.u-tokyo.ac.jp/index-genzai_no_sigoto-katudanso-itoigawa.htm 東京大学大学院情報学環・学際情報学府『04.糸魚川-静岡構造線活断層系の調査結果と評価の要点(平成8年9月11日)』]</ref>、日本の内陸における活断層としては飛びぬけて高い。しかし、十分な研究は行われておらずデータは乏しい。
松本市街地部分では人間の活動に伴い断層の痕跡は不明瞭であるが、郊外では直線状の[[断層崖]]が非常に明瞭であり、崖に沿って両側の[[河川]]や[[丘陵]]が食い違っている部分を見ることが出来る。活断層の活動度を示す平均変位速度(1000年間の平均変位量)は5 - 14m/1000年と考えられており<ref>[http://www.hiroi.iii.u-tokyo.ac.jp/index-genzai_no_sigoto-katudanso-itoigawa.htm 東京大学大学院情報学環・学際情報学府『04.糸魚川-静岡構造線活断層系の調査結果と評価の要点(平成8年9月11日)』]</ref>、日本の内陸における活断層としては飛びぬけて高い。しかし、十分な研究は行われておらずデータは乏しい。
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** 活動間隔 : 約1000年
** 活動間隔 : 約1000年
** 最新活動時期 : 700 - 1500年前
** 最新活動時期 : 700 - 1500年前
** 将来の活動 : 牛伏寺断層を含む区間では、現在を含めた今後数百年以内に、M7 - 8程度の規模の地震が発生する可能性が高いが、地震が発生する断層区間(場所)は不明である。
** 将来の活動 : 牛伏寺断層を含む区間では、現在を含めた今後数百年以内に、M7 から M8 程度の規模の地震が発生する可能性が高いが、地震が発生する断層区間(場所)は不明である。
** 30年位内地震発生確率 : 14%
** 30年位内地震発生確率 : 14%
** 地震後経過率 : 1.2
** 地震後経過率 : 1.2
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=== 活動様式 ===
=== 活動様式 ===
東側に約80度で傾斜した[[左横ずれ]]の変位様式をもつ。断層線の東側にある犀川丘陵は後期[[更新世]]以降隆起しているため、牛伏寺断層北部付近では逆断層の様式を示唆している<ref name="geog115-2">{{PDFlink|[http://www.geog.or.jp/journal/back/pdf115-2/p208-220.pdf 糸魚川静岡構造線活断層系・松本盆地東縁断層南部に沿う左横ずれ変位地形] 東京地学協会}}</ref>。
東側に約80度で傾斜した[[左横ずれ]]の変位様式をもつ。断層線の東側にある犀川丘陵は後期[[更新世]]以降隆起しているため、牛伏寺断層北部付近では逆断層の様式を示唆している<ref name="geog115-2">近藤久雄, 遠田晋次, 奥村晃史 ほか、[https://doi.org/10.5026/jgeography.115.2_208 糸魚川-静岡構造線活断層系・松本盆地東縁断層南部に沿う左横ずれ変位地形] 地学雑誌』 2006年 115巻 2号 p.208-220, {{doi|10.5026/jgeography.115.2_208}}</ref>。


=== 過去の活動 ===
=== 過去の活動 ===
過去の活動を示す明瞭な記録は少ない<ref name="geog115-2"/>がトレンチ調査およびボーリング調査などから、過去7000年間に2回程度の活動痕跡が見いだされている<ref name="kaihou45">{{PDFlink|[http://cais.gsi.go.jp/KAIHOU/report/kaihou45/06_16.pdf 糸魚川-静岡構造線活断層系牛伏寺断層 (松本市並柳地区) 第二次トレンチ発掘調査]}} 地質調査所</ref>。最新の活動期は約1200年前の[[762年]]<ref>同時期には白馬から小淵沢の約100kmの区間が活動し、M 7 {{sup|3}}/{{sub|4}} - 8 {{sup|1}}/{{sub|4}}の地震が発生したとされている(『糸魚川-静岡構造線活断層系の調査結果と評価について』地震調査研究推進本部、1996年9月11日)。</ref>、あるいは[[841年]]と考えられ<ref name="shiojiri170091">[http://www.city.shiojiri.nagano.jp/ctg/170091/170091.html 牛伏寺断層と地震] 塩尻市</ref>、1988年と1990年に行われた調査によれば前回の活動時点での変異量は、松本市島内付近で水平方向に約6.5m、垂直方向に約30-40cm程度であった。また、松本市並柳では水平方向に7m程度の変位であった。
過去の活動を示す明瞭な記録は少ない<ref name="geog115-2"/>がトレンチ調査およびボーリング調査などから、過去7000年間に2回程度の活動痕跡が見いだされている<ref name="kaihou45">{{PDFlink|[http://cais.gsi.go.jp/KAIHOU/report/kaihou45/06_16.pdf 糸魚川-静岡構造線活断層系牛伏寺断層 (松本市並柳地区) 第二次トレンチ発掘調査]}} 地質調査所</ref>。最新の活動期は約1200年前の762年<ref>同時期には白馬から小淵沢の約100kmの区間が活動し、M 7 {{分数|3|4}} - 8 {{分数|1|4}}の地震が発生したとされている(『糸魚川-静岡構造線活断層系の調査結果と評価について』地震調査研究推進本部、1996年9月11日)。</ref>、あるいは841年と考えられ<ref name="shiojiri170091">[http://www.city.shiojiri.nagano.jp/ctg/170091/170091.html 牛伏寺断層と地震] 塩尻市</ref>、1988年と1990年に行われた調査によれば前回の活動時点での変異量は、松本市島内付近で水平方向に約6.5m、垂直方向に約30-40cm程度であった。また、松本市並柳では水平方向に7m程度の変位であった。


== 断層付近で発生した地震 ==
== 断層付近で発生した地震 ==
[[2011年]][[6月30日]]、この断層付近を震源とする[[長野県中部地震|M5.4の地震]]があった。同年[[3月11日]]に発生した[[東北地方太平洋沖地震]]の[[誘発地震]]の可能性があるが、地震と断層との関連性は現時点では不明である。なお、[[気象庁]]精密地震観測室(現・[[気象庁松代地震観測所]]、長野県[[長野市]][[松代町 (長野県)|松代町]])では震源の状況から別の断層によるものとみている<ref>[http://www.shinmai.co.jp/news/20110702/KT110701FTI090042000.html 松本の地震、震源域は長さ 5キロ領域に 信大など解析](''信濃毎日新聞2011年7月2日''){{リンク切れ|date=2014年12月}}</ref>。
2011年6月30日、この断層付近を震源とするM5.4の[[長野県中部地震]]があった。同年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の[[誘発地震]]の可能性があるが、地震と断層との関連性は現時点では不明である。なお、気象庁精密地震観測室(現・[[気象庁松代地震観測所]]、長野県[[長野市]][[松代町 (長野県)|松代町]])では震源の状況から別の断層によるものとみている<ref>[http://www.shinmai.co.jp/news/20110702/KT110701FTI090042000.html 松本の地震、震源域は長さ 5キロ領域に 信大など解析](''信濃毎日新聞2011年7月2日''){{リンク切れ|date=2014年12月}}</ref>。


== 調査研究 ==
== 調査研究 ==
糸魚川‐静岡構造線断層帯にあることで1980年代から多くの研究がされている<ref>[http://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/dspace/handle/2261/12979 糸魚川-静岡構造線の重力調査(1) : 松本盆地中央部のブーゲー異常と構造解析] 東京大学地震研究所彙報. 第61冊第3号, 1987.2.10, pp. 537-550</ref><ref>[http://ci.nii.ac.jp/naid/40006224827/ 活断層ドリリングによる断層構造研究--牛伏寺断層近傍の地殻応力、岩盤、比抵抗構造] 号外地球 (46), 127-134, 2004</ref><ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/zisin1948/46/4/46_4_425/_article/-char/ja/ 糸魚川-静岡構造線活断層系の最近の断層活動 牛伏寺断層・松本市並柳地区トレンチ発掘調査] 地震 第2輯 Vol.46 (1993-1994) No.4 P425-438</ref>。また、2005年度より「糸魚川‐静岡構造線断層帯における重点的調査研究」<ref>[http://www.jishin.go.jp/main/chousakenkyuu/itoshizu_juten/index.htm 糸魚川-静岡構造線断層帯における重点的な調査観測について] 地震調査研究推進本部</ref>や、文部省からの受託事業などにより、[[高感度地震観測網]]の地震観測点が集中的に配置されているため、他の地域より高い精度で微少地震の震源位置を決定するが可能である<ref>[http://www.hinet.bosai.go.jp/summary/ Hi-net整備概要] [[防災科学技術研究所]]</ref><ref>{{PDFlink|[http://dil.bosai.go.jp/publication/nied_report/PDF/77/77-4asano.pdf 浅野陽一・武田哲也・行竹洋平・三好崇之・小原一成・笠原敬司:糸魚川-静岡構造線断層帯における観測網整備によって明らかになった地震波速度構造と地震活動]}} 防災科学技術研究所 研究報告 No.77</ref>。
糸魚川‐静岡構造線断層帯にあることで1980年代から多くの研究がされている<ref>萩原幸男, 山下昇, 小坂共栄 ほか、[http://hdl.handle.net/2261/129799 糸魚川-静岡構造線の重力調査(1) : 松本盆地中央部のブーゲー異常と構造解析] 東京大学地震研究所彙報 第61冊第3号, 1987.2.10, pp.537-550, {{hdl|2261/129799}}</ref><ref>[http://ci.nii.ac.jp/naid/40006224827/ 活断層ドリリングによる断層構造研究--牛伏寺断層近傍の地殻応力、岩盤、比抵抗構造] 号外地球 (46), 127-134, 2004, {{naid|40006224827}}</ref><ref>奥村晃史, 下川浩一, 山崎晴雄 ほか、[https://doi.org/10.4294/zisin1948.46.4_425 糸魚川-静岡構造線活断層系の最近の断層活動 牛伏寺断層・松本市並柳地区トレンチ発掘調査] 地震 第2輯 1994年 46巻 4 p.425-438, {{doi|10.4294/zisin1948.46.4_425}}</ref>。また、2005年度より「糸魚川‐静岡構造線断層帯における重点的調査研究」<ref>[http://www.jishin.go.jp/main/chousakenkyuu/itoshizu_juten/index.htm 糸魚川-静岡構造線断層帯における重点的な調査観測について] 地震調査研究推進本部</ref>や、文部省からの受託事業などにより、[[高感度地震観測網]]の地震観測点が集中的に配置されているため、他の地域より高い精度で微少地震の震源位置を決定することが可能である<ref>[http://www.hinet.bosai.go.jp/summary/ Hi-net整備概要] [[防災科学技術研究所]]</ref><ref>{{PDFlink|[http://dil.bosai.go.jp/publication/nied_report/PDF/77/77-4asano.pdf 浅野陽一・武田哲也・行竹洋平・三好崇之・小原一成・笠原敬司:糸魚川-静岡構造線断層帯における観測網整備によって明らかになった地震波速度構造と地震活動]}} 防災科学技術研究所 研究報告 No.77</ref>。


== 出典 ==
== 出典 ==
* [[地震調査研究推進本部]]
* [[地震調査研究推進本部]]
** [http://www.jishin.go.jp/main/yosokuchizu/katsudanso/f041_042_044_itoshizu.htm 糸魚川-静岡構造線断層帯]
** [http://www.jishin.go.jp/main/yosokuchizu/katsudanso/f041_042_044_itoshizu.htm 糸魚川-静岡構造線断層帯]
** {{PDFlink|[http://www.jishin.go.jp/main/kyoshindo/01a/tenpu1.pdf 糸魚川−静岡構造線断層帯の形状の評価について]}}
** {{PDFlink|[http://www.jishin.go.jp/main/kyoshindo/01a/tenpu1.pdf 糸魚川−静岡構造線断層帯の形状の評価について]}}


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
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== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
* [http://www.jishin.go.jp/main/yosokuchizu/chubu/p20_nagano.htm 長野県の地震活動の特徴]
* [http://www.jishin.go.jp/main/yosokuchizu/chubu/p20_nagano.htm 長野県の地震活動の特徴]
* [http://www2.ueda.ne.jp/~moa/gohukuji.html 松本市 牛伏寺(ごふくじ)断層] 長野県理化学会地学部会
* [http://www2.ueda.ne.jp/~moa/gohukuji.html 松本市 牛伏寺(ごふくじ)断層] 長野県理化学会地学部会


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2019年4月25日 (木) 03:03時点における版

牛伏寺断層(ごふくじだんそう)は、長野県松本市塩尻市を通る活断層である。岡谷断層群、諏訪断層群、釜無山断層群などと共に糸魚川静岡構造線活断層系の中部区間を構成する。

概要

松本市の中心市街地の南に位置する中山丘陵から、東側の山地盆地の境界付近を北北西-南南東走向に延びる左横ずれ断層である。全体的に牛伏川(うしぶせがわ)に沿っており、松本市並柳から中山を経由し崖の湯へと伸びている。断層線の長さは約7kmで、そのうちある約5kmは明瞭な断層線を断層崖として見ることが出来る[1]。西側には牛伏寺前縁断層が併走し、地下1000m付近ではひとつの断層を形成していると考えられる[2]。また、高瀬川犀川の合流点より南部の松本盆地東縁断層と牛伏寺断層を同一な断層セグメントとするのが妥当との説も出されている[3]

松本市街地部分では人間の活動に伴い断層の痕跡は不明瞭であるが、郊外では直線状の断層崖が非常に明瞭であり、崖に沿って両側の河川丘陵が食い違っている部分を見ることが出来る。活断層の活動度を示す平均変位速度(1000年間の平均変位量)は5 - 14m/1000年と考えられており[4]、日本の内陸における活断層としては飛びぬけて高い。しかし、十分な研究は行われておらずデータは乏しい。

評価

  • 地震調査研究推進本部は、糸魚川静岡構造線断層帯の中部1として区分し[5]以下の様に評価している[6]
    • 断層線の北端位置 : 北緯36°13' , 東経137°58'
    • 断層線の南端位置 : 北緯36°05' , 東経138°02'
    • 活動間隔 : 約1000年
    • 最新活動時期 : 700 - 1500年前
    • 将来の活動 : 牛伏寺断層を含む区間では、現在を含めた今後数百年以内に、M7 から M8 程度の規模の地震が発生する可能性が高いが、地震が発生する断層区間(場所)は不明である。
    • 30年位内地震発生確率 : 14%
    • 地震後経過率 : 1.2

なお、2011年 東北地方太平洋沖地震に伴い、地震発生確率が高められた[7]

活動様式

東側に約80度で傾斜した左横ずれの変位様式をもつ。断層線の東側にある犀川丘陵は後期更新世以降隆起しているため、牛伏寺断層北部付近では逆断層の様式を示唆している[3]

過去の活動

過去の活動を示す明瞭な記録は少ない[3]がトレンチ調査およびボーリング調査などから、過去7000年間に2回程度の活動痕跡が見いだされている[8]。最新の活動期は約1200年前の762年[9]、あるいは841年と考えられ[10]、1988年と1990年に行われた調査によれば前回の活動時点での変異量は、松本市島内付近で水平方向に約6.5m、垂直方向に約30-40cm程度であった。また、松本市並柳では水平方向に7m程度の変位であった。

断層付近で発生した地震

2011年6月30日、この断層付近を震源とするM5.4の長野県中部地震があった。同年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の誘発地震の可能性があるが、地震と断層との関連性は現時点では不明である。なお、気象庁精密地震観測室(現・気象庁松代地震観測所、長野県長野市松代町)では震源の状況から別の断層によるものとみている[11]

調査研究

糸魚川‐静岡構造線断層帯にあることで1980年代から多くの研究がされている[12][13][14]。また、2005年度より「糸魚川‐静岡構造線断層帯における重点的調査研究」[15]や、文部省からの受託事業などにより、高感度地震観測網の地震観測点が集中的に配置されているため、他の地域より高い精度で微少地震の震源位置を決定することが可能である[16][17]

出典

参考文献

  • 信濃毎日新聞社編集局編『信州の活断層を歩く』信濃毎日新聞社、1998年、ISBN 9784784098019
  • 降旗和夫編『長野県 地学のガイド―長野県の地質とそのおいたち』コロナ社、ISBN 9784339075427

脚注

  1. ^ 奥村晃史、佃栄吉:1988年糸魚川-静岡構造線活断層系牛伏寺断層(松本市並柳地区)トレンチ調査 日本の活断層発掘調査[54] 『活断層研究』 1995年 1995巻 13号 p.54-59, doi:10.11462/afr1985.1995.13_54
  2. ^ 松本盆地東縁における糸魚川-静岡構造線活断層系を横切る反射法地震探査 (PDF) 日本地球惑星科学連合
  3. ^ a b c 近藤久雄, 遠田晋次, 奥村晃史 ほか、糸魚川-静岡構造線活断層系・松本盆地東縁断層南部に沿う左横ずれ変位地形 『地学雑誌』 2006年 115巻 2号 p.208-220, doi:10.5026/jgeography.115.2_208
  4. ^ 東京大学大学院情報学環・学際情報学府『04.糸魚川-静岡構造線活断層系の調査結果と評価の要点(平成8年9月11日)』
  5. ^ 糸魚川-静岡構造線断層帯の形状の評価について 平成12年7月26日 地震調査研究推進本 (PDF)
  6. ^ 糸魚川-静岡構造線断層帯 地震調査研究推進本部
  7. ^ 東北地方太平洋沖地震後の活断層の長期評価について」 地震調査研究推進本部 平成23年7月
  8. ^ 糸魚川-静岡構造線活断層系牛伏寺断層 (松本市並柳地区) 第二次トレンチ発掘調査 (PDF) 地質調査所
  9. ^ 同時期には白馬から小淵沢の約100kmの区間が活動し、M 7 34 - 8 14の地震が発生したとされている(『糸魚川-静岡構造線活断層系の調査結果と評価について』地震調査研究推進本部、1996年9月11日)。
  10. ^ 牛伏寺断層と地震 塩尻市
  11. ^ 松本の地震、震源域は長さ 5キロ領域に 信大など解析信濃毎日新聞2011年7月2日[リンク切れ]
  12. ^ 萩原幸男, 山下昇, 小坂共栄 ほか、糸魚川-静岡構造線の重力調査(1) : 松本盆地中央部のブーゲー異常と構造解析 『東京大学地震研究所彙報』 第61冊第3号, 1987.2.10, pp.537-550, hdl:2261/129799
  13. ^ 活断層ドリリングによる断層構造研究--牛伏寺断層近傍の地殻応力、岩盤、比抵抗構造 『号外地球』 (46), 127-134, 2004, NAID 40006224827
  14. ^ 奥村晃史, 下川浩一, 山崎晴雄 ほか、糸魚川-静岡構造線活断層系の最近の断層活動 牛伏寺断層・松本市並柳地区トレンチ発掘調査 『地震 第2輯』 1994年 46巻 4号 p.425-438, doi:10.4294/zisin1948.46.4_425
  15. ^ 糸魚川-静岡構造線断層帯における重点的な調査観測について 地震調査研究推進本部
  16. ^ Hi-net整備概要 防災科学技術研究所
  17. ^ 浅野陽一・武田哲也・行竹洋平・三好崇之・小原一成・笠原敬司:糸魚川-静岡構造線断層帯における観測網整備によって明らかになった地震波速度構造と地震活動 (PDF) 防災科学技術研究所 研究報告 No.77

関連項目

外部リンク