断層崖

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断層崖(だんそうがい、: fault scarp)とは、断層運動によって生じた断層地形の中の一つで、断層運動で直接形成される急を指す。断層崖は、高さ・延長・配列・断層崖の正逆・断層の活動時期などによって分類することが可能で、断層地形のなかでも基本的な地形として扱われている。

この「断層崖」と名付けた人物は、Russell,I.C. (1884) であり、彼は南東オレゴン州におけるグレートベースン北西部の地形を論じたことで有名である。[1]


断層崖の種類[編集]

断層崖には、正断層によって生じた正断層崖 (normal fault scarp) と逆断層によって生じた逆断層崖 (reverse fault scarp) がある。では、具体的な例をあげてみる。まず、正断層崖の例は、ロッキー山脈の西部、グレートベースンとの境付近に横たわるワサッチ山脈に見られ、他にも中国山西省にある中条断層崖、陰山南緑の大青山断層崖もこれにあたる。一方、逆断層崖の例は、日本赤石木曽両山脈の東側の断層崖や関東山地南緑を流れる桂川の左岸にそびえる扇山断層崖がある。しかし実際は、この上の例のように、正断層崖と逆断層崖とを識別するのは困難だとされている。

断層崖には、単一の断層線に沿ってつくられる単成断層崖 (simple fault scarp) の他に、同方向の断層が数本も平行に発達してつくられ、階段のようにみえることから階段断層崖 (step fault scarp) とよばれる断層崖がある。この階段断層崖には、断層崖の間に断層階 (fault bench) とよばれるベンチ状の地形がみられることが多い。具体的な例は、甲府盆地の西側や六甲山地の南緑があげられる。

また断層線は上で述べたように単一で存在する場合もあるが,複数が並列している場合もある。複数で並列している場合には,断層線は大局的な伸びの方向に対してわずかに斜交する傾向がある。このような断層のことを齟齬断層、または雁行断層といい、それによってつくられる断層崖を齟齬断層崖または雁行断層崖(splintered fault scarp)という。[2]


断層崖の地形的特徴[編集]

断層崖を暗示する地形的特徴として以下のようなことが一般的に考えられている。

  • 岩石が及ぼす影響と地形との間の関係がほとんどみることができない。
  • 急な崖に沿って割目 (rift) を示すような地形が発達している。例として、小崖水たまり小陥凹地楔状小丘など。
  • 河川を横切って、上流側に向かって急な崖がある場合、崖の根もとに河川のせき止めによるができている。
  • 急な崖の根もとに複合扇状地の発達がみられる。
  • その地点には地震が比較的多い。
  • 地形の変位変形がみられる。段丘面がゆがみ、ときにはその影響で逆側に傾斜することがある。
  • 更新統完新統など新期の堆積物の変位変形である。
  • 同じ時期に噴出し、ほぼ水平に堆積した溶岩流が、急な崖を境として高度の違う部分に分布する(ちなみにこの現象をLauderback 現象という)。
  • 崖に沿って新鮮な断層面がみられ、それが前からあったものではなく新しいことを示す。
  • 完新統のようなごく新しい地層からなる急な崖が数mから数10mの崖高をもって、線状に延びている。[2]

断層崖の断面部分の変化とその研究[編集]

断層崖の断面部分をみると、断局面の向きや傾きの度合、変位量、さらに断層によって切られている場所の構成層によって様々に異なる。断層崖の断面部分は地震によってみることができる場合があり、地震が起きてから時間の変化に伴って、崖の形態は変化していく。新たに生じた断層崖は、今後の地形変化の出発点にもなる可能性があるため、断層崖の断面部分の変化についての研究例は多く存在する。

その内訳をみると、一般的に正断層として生じた断層崖の断面形の変化についての研究例は多く存在し、例えばWallace,R.E.(1980)はモンタナ州のHebgen Lake地震(1959年8月17日)によってモーレン堆積物上に生じた断層崖の変化の記録を残している。また、Fellow and Scott(1989)はニュージーランド北東のEdgecumbe地震(1987年3月2日)で生じた断層崖の断面を実測し記録を残している。この2つの研究報告からわかっていることは、ある一定の時間が経過しても、断層崖の断面には顕著な変化がほとんど見られなかったということである。

一方で逆断層での崖の変化についての研究を探すとほとんどなく、そのわずかな研究報告の中に野島地震によって見られた断層崖の変化に関する報告がある。これはオーバーハングした断面形をもつ逆断層での崖の変化を記録した初めての研究として知られている。この研究から、逆断層である野島地震断層によって形成された断層崖は、正断層の断層崖の断面よりも急速に変化・後退したということがわかった。しかしながら、すべての逆断層がこのように急速に変化・後退するかどうかは、まだ研究事例が少ないためにはっきりとはわかっていない。[3]

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  1. ^ Israel Cook Russell, "A geological reconnaissance in southern Oregon", (1884)
  2. ^ a b 町田貞 『自然地理学講座 1 地形学』 大明堂、1984年。
  3. ^ 吾妻崇ほか、「野島地震断層崖の断面形の変化過程」『地理学評論』69巻、1996年、pp365-379。

外部リンク[編集]