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'''アジュバント''' (Adjuvant) とは、広義には主剤に対する補助剤を意味するが、一般的には主剤の有効成分がもつ本来の作用を補助したり増強したり改良する目的で併用される物質をいう<ref>監修: 石井健・山西弘一 「アジュバント開発研究の新展開」 1.1アジュバントとは シーエムシー出版 </ref>。 |
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[[ラテン語]]の ''adjuvare''(助ける)に由来する。 |
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== 免疫学におけるアジュバント == |
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[[File:Prevenar13 Suspension Liquid for Injection.jpg|thumb|小児用肺炎球菌ワクチン<br>リン酸アルミニウム含有]] |
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アジュバントは、抗原性補強剤とも呼ばれ、[[抗原]]と一緒に注射され、その抗原性を増強するために用いる物質である。予防医学の分野では、ワクチンと併用することにより、その効果を増強するために使用される。アルミニウム化合物は、世界初のアジュバントとして1926年に認可され80年以上の歴史があるが<ref name="medical-bp">[http://medical.nikkeibp.co.jp/all/special/adjuvant/index.html 安全かつ有効なアジュバントの研究開発と将来の応用分野] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20160310233712/http://medical.nikkeibp.co.jp/all/special/adjuvant/index.html |date=2016年3月10日 }} メディカル日経BP 2016年2月9日閲覧</ref>、 |
アジュバントは、'''抗原性補強剤'''とも呼ばれ、[[抗原]]と一緒に注射され、その抗原性を増強するために用いる物質である。予防医学の分野では、ワクチンと併用することにより、その効果を増強するために使用される。アルミニウム化合物は、世界初のアジュバントとして1926年に認可され80年以上の歴史があるが<ref name="medical-bp">[http://medical.nikkeibp.co.jp/all/special/adjuvant/index.html 安全かつ有効なアジュバントの研究開発と将来の応用分野] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20160310233712/http://medical.nikkeibp.co.jp/all/special/adjuvant/index.html |date=2016年3月10日 }} メディカル日経BP 2016年2月9日閲覧</ref>、[[2009年新型インフルエンザの世界的流行|2009年の新型インフルエンザの流行]]が契機となり、安全性と有効性が注目され[[インフルエンザワクチン]]の材料として日本にも導入された<ref name="medical-bp"/>。 |
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マスメディアはマイナス面ばかりを報道し、一般には偏見が強いとされる<ref name="medical-bp">[http://medical.nikkeibp.co.jp/all/special/adjuvant/index.html 安全かつ有効なアジュバントの研究開発と将来の応用分野] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20160310233712/http://medical.nikkeibp.co.jp/all/special/adjuvant/index.html |date=2016年3月10日 }} メディカル日経BP 2016年2月9日閲覧</ref>。 |
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[[File:Bimmuge-Hepatitis B Vaccines.jpg|thumb|ビームゲン<BR>水酸化アルミニウム添加]] |
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1926年以降、最初に使用されたアジュバントは硫酸アルミニウムカリウムであったが、後に水酸化アルミニウムとリン酸アルミニウムに完全に置き換えられた<ref name="DjurisicJakobsen2017">{{cite journal|last1=Djurisic|first1=Snezana|last2=Jakobsen|first2=Janus C|last3=Petersen|first3=Sesilje B|last4=Kenfelt|first4=Mette|last5=Gluud|first5=Christian|title=Aluminium adjuvants used in vaccines versus placebo or no intervention|journal=Cochrane Database of Systematic Reviews|year=2017|issn=14651858|doi=10.1002/14651858.CD012805}}</ref>。ジフテリア、破傷風、百日咳、B型インフルエンザ、肺炎球菌コンジュゲート、A型肝炎、B型肝炎、HPVなどのワクチンにアジュバントが用いられる<ref name="DjurisicJakobsen2017"/>。 |
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#抗原を不溶化することで組織に長くとどめ、抗原を徐々に長期間遊離させること。 |
#抗原を不溶化することで組織に長くとどめ、抗原を徐々に長期間遊離させること。 |
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#投与局所に炎症を起こし、[[マクロファージ]]が集まり抗原が[[貪食]](食作用)されやすくなり、抗原提示が効果的に行われる。 |
#投与局所に炎症を起こし、[[マクロファージ]]が集まり抗原が[[貪食]](食作用)されやすくなり、抗原提示が効果的に行われる。 |
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#投与局所や所属する[[リンパ]]節の、T細胞やB細胞の活性化を強める。 |
#投与局所や所属する[[リンパ]]節の、T細胞やB細胞の活性化を強める。 |
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と考えられている。 |
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純粋なタンパク質単独では免疫応答が弱いときに、微生物やその分解産物を混合することがアジュバントとして機能する原因は、微生物由来の因子で表面の[[受容体]]が刺激されて初めて、マクロファージや[[樹状細胞]]といった[[抗原提示細胞]]表面に[[B7分子]]が発現するためと考えられている<ref>{{cite|和書|author=Parham, Peter|others=笹月健彦|title=エッセンシャル免疫学|year=2007|publisher=メディカル・サイエンス・インターナショナル}}</ref>。 |
純粋なタンパク質単独では免疫応答が弱いときに、微生物やその分解産物を混合することがアジュバントとして機能する原因は、微生物由来の因子で表面の[[受容体]]が刺激されて初めて、マクロファージや[[樹状細胞]]といった[[抗原提示細胞]]表面に[[B7分子]]が発現するためと考えられている<ref>{{cite|和書|author=Parham, Peter|others=笹月健彦|title=エッセンシャル免疫学|year=2007|publisher=メディカル・サイエンス・インターナショナル}}</ref>。 |
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**不完全フロイントアジュバント(Incomplete Freund’s adjuvant, IFA。パラフィンとアラセルの混合物)、完全フロイントアジュバント(Complete Freund’s adjuvant,CFA。IFAに死滅したミコバクテリアまたは結核菌の死菌を加え、抗原性をさらに増強させたもの)がある<ref>ステッドマン医学大辞典(Medical View)</ref>。 |
**不完全フロイントアジュバント(Incomplete Freund’s adjuvant, IFA。パラフィンとアラセルの混合物)、完全フロイントアジュバント(Complete Freund’s adjuvant,CFA。IFAに死滅したミコバクテリアまたは結核菌の死菌を加え、抗原性をさらに増強させたもの)がある<ref>ステッドマン医学大辞典(Medical View)</ref>。 |
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*新型インフルエンザワクチンの輸入ワクチンには、アジュバントが添加されている。 |
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2004年にジェファーソンらが実施した[[システマティック・レビュー]]は、アルミニウムのアジュバントが重篤あるいは長期的な有害事象と関連することを見出さず、証拠の品質が低かったにもかかわらずさらなる調査の終了を推奨した<ref name="DjurisicJakobsen2017"/>。しかし、新しいタイプのアジュバントが導入されており、HPVワクチンによって生じる症状の原因としての指摘もあるが、2017年までのデータからはその肯定も否定も不可能である<ref name="DjurisicJakobsen2017"/>。 |
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===アレルギーにおけるアジュバント=== |
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[[花粉症]]などの[[アレルギー]]疾患において、[[アレルゲン]]による[[抗体]]産生能を高める物質もアジュバントと呼ぶ。例としてディーゼル排気ガス中の微粒子の関与などが考えられているが、[[メカニズム]]はよくわかっておらず、実験的にはともかく、実際の症状においてはその影響を疑問視するむきもないではない。 |
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== 腫瘍学におけるアジュバント == |
== 腫瘍学におけるアジュバント == |
2018年4月14日 (土) 23:29時点における版
アジュバント (Adjuvant) とは、広義には主剤に対する補助剤を意味するが、一般的には主剤の有効成分がもつ本来の作用を補助したり増強したり改良する目的で併用される物質をいう[1]。 ラテン語の adjuvare(助ける)に由来する。
免疫学におけるアジュバント
アジュバントは、抗原性補強剤とも呼ばれ、抗原と一緒に注射され、その抗原性を増強するために用いる物質である。予防医学の分野では、ワクチンと併用することにより、その効果を増強するために使用される。アルミニウム化合物は、世界初のアジュバントとして1926年に認可され80年以上の歴史があるが[2]、2009年の新型インフルエンザの流行が契機となり、安全性と有効性が注目されインフルエンザワクチンの材料として日本にも導入された[2]。
マスメディアはマイナス面ばかりを報道し、一般には偏見が強いとされる[2]。
1926年以降、最初に使用されたアジュバントは硫酸アルミニウムカリウムであったが、後に水酸化アルミニウムとリン酸アルミニウムに完全に置き換えられた[3]。ジフテリア、破傷風、百日咳、B型インフルエンザ、肺炎球菌コンジュゲート、A型肝炎、B型肝炎、HPVなどのワクチンにアジュバントが用いられる[3]。
2016年現在、日本国内で流通しているワクチンでアジュバンドを添加しているものは、小児用肺炎球菌ワクチン(プレベナー:リン酸アルミニウム添加)[4]やB型肝炎ワクチン(ビームゲン:水酸化アルミニウム添加)[5]、HPVワクチンがある。
作用機構は様々で不明なものも多いが、以下のように考えられている。
- 抗原を不溶化することで組織に長くとどめ、抗原を徐々に長期間遊離させること。
- 投与局所に炎症を起こし、マクロファージが集まり抗原が貪食(食作用)されやすくなり、抗原提示が効果的に行われる。
- 投与局所や所属するリンパ節の、T細胞やB細胞の活性化を強める。
純粋なタンパク質単独では免疫応答が弱いときに、微生物やその分解産物を混合することがアジュバントとして機能する原因は、微生物由来の因子で表面の受容体が刺激されて初めて、マクロファージや樹状細胞といった抗原提示細胞表面にB7分子が発現するためと考えられている[6]。
- 沈降性アジュバント(抗原が吸着する無機物の懸濁剤)
- 水酸化ナトリウム、水酸化アルミニウム(アラム、Alum)、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウム、ミョウバン、ペペス、カルボキシビニルポリマーなど。
- 病原体やある抗原を吸着し、接種局所病原体を固定する利点もあるが、その性質のため、接種部位が硬結しやすい。
- 油性アジュバント(抗原水溶液を鉱油で包みミセルをつくり乳化する油乳剤)
- 流動パラフィン、ラノリン、フロイントなど。
- 乳濁液にするため粘性の高い液体になり、接種時に疼痛が起きる。体内に散りにくく、そのまま接種部位に残る性質も持ち合わせ、硬結することがある。
- 不完全フロイントアジュバント(Incomplete Freund’s adjuvant, IFA。パラフィンとアラセルの混合物)、完全フロイントアジュバント(Complete Freund’s adjuvant,CFA。IFAに死滅したミコバクテリアまたは結核菌の死菌を加え、抗原性をさらに増強させたもの)がある[7]。
アルミニウム化合物をアジェバンドとして使用したワクチンについては、マクロファージ性筋膜炎(MMF)という問題があるのではないかという意見もあるが[8]、大規模臨床試験の結果ではその仮説を支持する結果は得られておらず根拠がない仮説にとどまっている。
2004年にジェファーソンらが実施したシステマティック・レビューは、アルミニウムのアジュバントが重篤あるいは長期的な有害事象と関連することを見出さず、証拠の品質が低かったにもかかわらずさらなる調査の終了を推奨した[3]。しかし、新しいタイプのアジュバントが導入されており、HPVワクチンによって生じる症状の原因としての指摘もあるが、2017年までのデータからはその肯定も否定も不可能である[3]。
アレルギーにおけるアジュバント
花粉症などのアレルギー疾患において、アレルゲンによる抗体産生能を高める物質もアジュバントと呼ぶ。例としてディーゼル排気ガス中の微粒子の関与などが考えられているが、メカニズムはよくわかっておらず、実験的にはともかく、実際の症状においてはその影響を疑問視するむきもないではない。
腫瘍学におけるアジュバント
アジュバントは、がん患者に対して追加的に行われる補助治療のことである。一般的に、手術や放射線療法を行った後に行われる化学療法のことを指す。初めの手術で検出可能ながん組織を全て取り除き、がんの所見がなくなった場合でも、残存している可能性のある微小ながん組織を根絶し、再発を防ぐ目的で行われる。
なお、完全切除の困難な腫瘍を縮小させて完全切除可能となる事や切除範囲を小さくして術後の経過が良好になることを期待して、アジュバント療法を手術や放射線療法の前に実施することがあり、これをネオアジュバント療法と呼ぶ[9][10][11]。
出典
- ^ 監修: 石井健・山西弘一 「アジュバント開発研究の新展開」 1.1アジュバントとは シーエムシー出版
- ^ a b c 安全かつ有効なアジュバントの研究開発と将来の応用分野 Archived 2016年3月10日, at the Wayback Machine. メディカル日経BP 2016年2月9日閲覧
- ^ a b c d Djurisic, Snezana; Jakobsen, Janus C; Petersen, Sesilje B; Kenfelt, Mette; Gluud, Christian (2017). “Aluminium adjuvants used in vaccines versus placebo or no intervention”. Cochrane Database of Systematic Reviews. doi:10.1002/14651858.CD012805. ISSN 14651858.
- ^ “プレベナー 添付文書” (PDF). 日本医薬情報センター (2014年6月). 2016年2月9日閲覧。
- ^ “ビームゲン 添付文書” (PDF). 日本医薬情報センター (2014年8月). 2016年6月29日閲覧。
- ^ Parham, Peter『エッセンシャル免疫学』笹月健彦、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2007年。
- ^ ステッドマン医学大辞典(Medical View)
- ^ Dimitri M. Kullmann Macrophagic myofasciitis lesions assess long-term persistence of vaccine-derived aluminium hydroxide in muscle Gherardi, et al 2001年
- ^ “ネオアジュバント療法”. 2014年5月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年3月31日閲覧。
- ^ “ネオアジュバント療法とアジュバント療法”. 2016年3月31日閲覧。
- ^ “手術前の薬物療法について”. 2016年3月31日閲覧。