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'''グリーゼ710''' (Gliese 710) は、[[へび座]]の尾部に存在する9.6等星で、[[太陽]]の0.4から0.6倍程度の質量を有する[[K型主系列星|橙色矮星]]である。
'''グリーゼ710''' (Gliese 710) は、[[へび座]]の尾部に存在する9.6等星で、[[太陽]]の0.4から0.6倍程度の質量を持つ[[K型主系列星]]である。肉眼で観測することのできない暗い星だが、およそ140万年後に太陽系に1光年の距離にまで接近することで知られている。


== 概要 ==
== 概要 ==
グリーゼ710は、[[2009年]]現在、[[地球]]から63[[光年]]の距離にあるが、[[ヒッパルコス (人工衛星)|ヒッパルコス衛星]]観測によると、[[固有運動]]、位置、[[視線速度]]から、136万年後に地球から1.1光年まで接近するが知られている。最接近時には[[1等星]]となり、[[アンタレス]]と同程度の明るさになる。この星は、たとえば[[アルクトゥルス]]などと対比すれば、距離割には固有運動が著しく小さつまり地球からの視線の方向に移動していることを意味している。
現在グリーゼ710は地球から63光年の距離にあるが、[[ヒッパルコス (人工衛星)|ヒッパルコス衛星]]などが観測した恒星の座標、[[固有運動]]、[[視線速度]]に基づいた計算によるとグリーゼ710は136万年後に地球から1.1光年まで接近すると推定されている。最接近時には[[1等星]]となり、[[アンタレス]]と同程度の明るさになる。この星は距離が近い割には固有運動が著しく小さいがこれはグリーゼ710が太陽系にけてほぼ一直線に移動していることを意味している。


現在から前後1000万年の間では、グリーゼ710は、その距離と容積から太陽系へ重力的な混乱引き起こす星となる。特に[[オールトの雲]]をかきまぜ太陽系の内側に多くの[[彗星]]を向かわせることになり、彗星の衝突など生じることとなる。もっとも、García-Sánchezのモデルによる試算では、地球への小天体の衝突確率の上昇はほんの5%とのことである。最接近は136万年で、太陽から0.337 ± 0.177[[パーセク]](1.1光年)と算されている<ref name="Garcia-Sanchez">{{cite paper
現在から前後1000万年の間では、グリーゼ710は、その接近距離と質量から太陽系へ大きな重力的影響及ぼ星となる。特に[[オールトの雲]]をかきまぜ太陽系の内側に多くの[[彗星]]を向かわせることになり、彗星の衝突確率上昇を招くことが予想されている。もっとも、García-Sánchezのモデルによる試算では、地球への小天体の衝突確率の上昇はほんの5%である<ref name="Garcia-Sanchez" />
グリーゼ710の太陽系への最接近は現在から136万年で、太陽から0.337±0.177[[パーセク]](1.1光年)の距離を通過する算されている<ref name="Garcia-Sanchez">{{cite paper
| author=García-Sánchez, J. ''et al.'' | year=2001 | title=Stellar encounters with the solar system | journal=Astronomy and Astrophysics | volume=379 | pages=634-659 | url=http://ads.nao.ac.jp/abs/2001A%26A...379..634G | doi=10.1051/0004-6361:20011330
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| author=Bobylev, V. V. | year=2010
| title=Searching for stars closely encountering with the solar system
| journal=Astronomy Letters | volume=36 | issue=3 | pages=220-226
| url=http://ads.nao.ac.jp/abs/2010AstL...36..220B
| doi=10.1134/S1063773710030060
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2010年3月30日 (火) 12:44時点における版


グリーゼ710 (Gliese 710) とは、へび座の尾部に存在する9.6等星で、太陽の0.4から0.6倍程度の質量を持つK型主系列星である。肉眼で観測することのできない暗い星だが、およそ140万年後に太陽系に1光年の距離にまで接近することで知られている。

概要

現在グリーゼ710は地球から63光年の距離にあるが、ヒッパルコス衛星などが観測した恒星の座標、固有運動視線速度に基づいた計算によると、グリーゼ710は136万年後に地球から1.1光年まで接近すると推定されている。最接近時には1等星となり、アンタレスと同程度の明るさになる。この星は距離が近い割には固有運動が著しく小さいが、これはグリーゼ710が太陽系に向けてほぼ一直線に移動していることを意味している。

現在から前後1000万年の期間では、グリーゼ710は、その接近距離と質量から太陽系へ大きな重力的影響を及ぼす恒星となる。特にオールトの雲をかきまぜて太陽系の内側に多くの彗星を向かわせることになり、彗星の衝突確率を上昇を招くことが予想されている。もっとも、García-Sánchezのモデルによる試算では、地球への小天体の衝突確率の上昇はほんの5%である[1]

グリーゼ710の太陽系への最接近は現在から136万年後で、太陽から0.337±0.177パーセク(1.1光年)の距離を通過すると計算されている[1]。ただし、より近い距離まで接近する可能性も皆無ではなく、2010年のBobylevの研究では太陽から1000天文単位(0.016光年)以内を通過する可能性が1万分の1ほどあるとされている。仮にこの距離まで近づいた場合は、オールトの雲に加えエッジワースカイパーベルト天体にまで影響が及ぶと考えられている[2]

なお、現在から前後1000万年の間に太陽系に最も重力的な影響を与えたのは、730万年前に9.8光年まで接近したアルゴルである。

参考文献