閂 (絵画)

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『閂』
フランス語: Le Verrou
作者ジャン・オノレ・フラゴナール
製作年1774年 – 1778年
種類油彩、カンヴァス
寸法74 cm × 94 cm (29 in × 37 in)
所蔵ルーヴル美術館パリ

』(かんぬき、: Le Verrou, : The Lock)は、18世紀フランスロココ美術画家であるジャン・オノレ・フラゴナールが晩年に制作した油彩の絵画である。後年の彼の代表作として著名であり、主題と構図の上で『盗まれた接吻』(エルミタージュ美術館)の対作品と考えられる[1]。作品は、パリルーヴル美術館に所蔵されている。

概要[編集]

この絵画は、貴族であったドゥ・ヴェリ侯爵がフラゴナールに依頼し制作された。しかし、本作の主題は、侯爵の制作依頼以前から画家がデッサンで試みたものである[1]。若い男女の愛の一場面というフラゴナールの得意のテーマであるが、本作は暴力的といえるほどの情熱に満ちている。

寝室の中で若い男性が嫌がっている若い女性を抱き寄せ、扉の閂(扉を開閉できないようにする棒状の道具)をかける様子が描かれている。表現されているのは、争う恋人たちの衝動的な性的欲望、抵抗、あきらめである。若者はすでに服を脱ぎかけていて、情熱的な表情で若い女性に向かい、腕をその腰に回している。女性は白と金の豪華な衣服を身に着けたまま、のけぞって相手の激しい欲求を拒もうとしているが、彼女の決意は揺らいでいる。まもなく若者は思いを遂げるであろう[1][2]

左側のベッドのカバーはめくれている。画家は、ベッドのシーツと天蓋の色に肉欲の罪を表す血のような赤を選んだ。同じく人間の罪を象徴するのが画面左側のベッドわきのテーブルに置かれたリンゴである[2]。画面は赤に加え、黄色と白というフラゴナールの最も好む3色で統一されている[1]

以前のフラゴナールの作品の溌溂として、軽やかな筆さばきとは違い、本作のベッドや衣装の質感表現などは冷たく生硬な描き方で、1780年代にフランスで盛んになった新古典主義の影響を物語っている。それゆえに本作の制作年代は1780年代前半と見なされている[3]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d カンヴァス世界の大画家 20 フラゴナール、1983年刊行、92頁、ISBN 4-12-401910-6
  2. ^ a b ルーヴル美術館 収蔵絵画のすべて、2011年発行、588頁 ISBN 978-4-7993-1048-9
  3. ^ NHKルーブル美術館VI フランス芸術の華、1985年刊行、138-139頁 ISBN 4-14-008426-X

外部リンク[編集]