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重力モデル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

重力モデル(じゅうりょくモデル、英語: Gravity model)は、都市間・地域間での流動を説明するときに利用できるモデルで、物理学における万有引力の法則と類比される[1]社会科学において、流動(貿易量、人口移動、資金循環など)の分析を行う上で利用されている[2]

2地点, における重力モデルは、以下の式で表される[3]

ただし、空間的相互作用は地点の人口、は地点の人口、は2地点間距離、は定数、は距離パラメータである[1]。なお、常にである必要はない[3]

人文地理学では、交通流動の研究で重力モデルが用いられてきた[4]。このほか、商業地理学において商圏を求めるときに重力モデルを応用することができる[5]

事例

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貿易における重力モデル

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例えば、貿易における重力モデルは、次のように表すことができる[6][7]

ここで、 Fij は2国間の貿易量、 Mi , Mj はそれぞれの国の経済規模、 Dij は距離、 G は定数、という具合になる。なお、この式はニュートンの式と異なり距離が2乗になっていないが、冪乗の指数や係数などは扱う分野・事例ごとに異なっている。

小売引力モデル

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小売引力モデル(こうりいんりょくモデル)は、ウィリアム・J・ライリーにより提唱されたモデルである[8]

都市A、都市Bの中間にある都市Cを考え、都市Cの住民による都市A・Bでの小売売上高をで表す[8]。重力モデルを踏まえると、以下の式が成立する[8]

この式は、ライリーの小売引力の法則Reilly's law of retail gravitation)とよばれる[9]

もし、が成立する場合、が成り立つ[8]。すなわち、都市Cは2都市A・Bの商圏の境界上に位置することとなる[10]

問題点

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重力モデルには複数の問題点が存在し、特に、現実の流動に対して重力モデルの精度が低いことが大きな問題である[11]。これらの欠点を解消するモデルとして、アラン・G・ウィルソン英語版により、エントロピー最大化モデルEntropy Maximising Models)が考案された[11]

脚注

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  1. ^ a b 杉浦 1989, pp. 87–88.
  2. ^ 高橋 2018, p. 26.
  3. ^ a b 杉浦 1986, p. 142.
  4. ^ 村山 2013, p. 166.
  5. ^ 杉浦 1989, pp. 98.
  6. ^ Deardorff, A., Deardorffs' Glossary of International Economics: Gravity Model, 2021年9月27日閲覧。
  7. ^ 田中, 鮎夢 (2012) 『国際貿易と貿易政策研究メモ 第14回「重力方程式の理論と新しい推定方法」』独立行政法人経済産業研究所、2021年9月27日閲覧。
  8. ^ a b c d 杉浦 1989, p. 100.
  9. ^ 山本ほか 1997, p. 149.
  10. ^ 杉浦 1989, pp. 100–101.
  11. ^ a b 村山 2013, p. 167.

参考文献

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  • 杉浦芳夫 著「空間的相互作用モデルの近年の展開」、野上道男、杉浦芳夫 編『パソコンによる数理地理学演習』古今書院、1986年、138-185頁。ISBN 4-7722-1366-X 
  • 杉浦芳夫『立地と空間的行動』古今書院〈地理学講座〉、1989年。ISBN 4-7722-1231-0 
  • 山本, 正三奥野, 隆史、石井, 英也 ほか 編『人文地理学辞典』朝倉書店、1997年。 
  • 村山祐司 著「地域間の流動をみいだす」、村山祐司・駒木伸比古 編『新版 地域分析』古今書院、2013年、159-170頁。ISBN 978-4-7722-5272-0 
  • 高橋環太郎「太平洋の島嶼地域における2つの流動量の決定要因の比較」『経済地理学年報』第64巻第1号、2018年、24-35頁。 

関連項目

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