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=== 香の物祭 ===
=== 香の物祭 ===
漬物の神事であり、毎年8月21日に開催される。神事で漬けられる野菜はカリモリ、ハクサイ、大根、ナスの4種類に虫除けのためにタデを入れる。漬物は熱田神宮の例祭に年4度特別奉納される。神事は、熱田神宮から派遣された宮掌が祭詞奏上を行った後、参加者が野菜ひとつと塩をひとつかみ持って瓶の中に漬ける。全て漬け終わると、甕に蓋をして、重石を乗せ、終了となる。
漬物の神事であり、毎年8月21日に開催される。神事で漬けられる野菜はカリモリ、ハクサイ、大根、ナスの4種類に虫除けのためにタデを入れる<ref>あま市もの知り検定委員会編『あま市もの知り読本』2013年</ref>。漬物は熱田神宮の例祭に年4度特別奉納される。神事は、熱田神宮から派遣された宮掌が祭詞奏上を行った後、参加者が野菜ひとつと塩をひとつかみ持って瓶の中に漬ける。全て漬け終わると、甕に蓋をして、重石を乗せ、終了となる<ref>飯田真世『漬物は語る~世界に誇る日本食の起源とは~』2018年</ref>


近年には周辺の畑地が減少したため、漬物業者が市場で購入した野菜を香の物祭に使用している<ref name=小川小菅2015/>。2009年の神事には、愛知県[[知多半島]]産のウリ、岐阜県・徳島県・高知県産のナスなどが用いられている<ref name=小川小菅2015/>。また、漬物業者が参加するようになったことで、本来ならば夏季には収穫できないダイコンやハクサイも漬けるようになった<ref name=小川小菅2015/>。漬物業者のほかには製塩業者も香の物祭に参加している<ref name=小川小菅2015/>。
近年には周辺の畑地が減少したため、漬物業者が市場で購入した野菜を香の物祭に使用している<ref name=小川小菅2015/>。2009年の神事には、愛知県[[知多半島]]産のウリ、岐阜県・徳島県・高知県産のナスなどが用いられている<ref name=小川小菅2015/>。また、漬物業者が参加するようになったことで、本来ならば夏季には収穫できないダイコンやハクサイも漬けるようになった<ref name=小川小菅2015/>。漬物業者のほかには製塩業者も香の物祭に参加している<ref name=小川小菅2015/>。

2019年9月22日 (日) 07:30時点における版

萱津神社

拝殿
所在地 愛知県あま市上萱津字車屋19
位置 北緯35度11分37.62秒 東経136度50分24.03秒 / 北緯35.1937833度 東経136.8400083度 / 35.1937833; 136.8400083
主祭神 鹿屋野比売神
社格 村社
創建 不明
本殿の様式 流造
例祭 10月9日
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萱津神社(かやづじんじゃ)は、愛知県あま市上萱津にある神社

漬物の神社と知られており、境内には漬物を納める「香の物殿」がある[1]。毎年8月21日の「香の物祭」[1]には多くの漬物業者が参列する。

由緒

  • 創建時期は不明。かつては「草ノ社」「種の社」「阿波手の杜」とも呼ばれた[2]尾張国神明帳には従三位萱津天神本国帳貞治本には従一位上萱津天神と記された[2]。明治になって近代社格制度が実施されると村社となり、先の大戦の終わる直前には県社相当として扱われた[2]
  • 言い伝えによると、この土地の人々が神前にウリダイコンナス等の野菜を供えていたが、海(当時、この地が海岸線であった)からとれたも供えるようになったという[1]。やがて、野菜と塩をに入れて供えるようにしたところ、野菜が塩漬けとなり、偶然にも漬物になったという[1]
  • 日本武尊が東征の途中この地に立ち寄った際、人々がこの漬物を献上したところ、武尊は「藪二神物」(やぶにこうのもの)と称えた[2]と伝えられ、このことから漬物を「香の物」とも書くようにもなったという[2]

萱津神社と日本武尊

日本武尊が東征の途中で参拝したとする伝承がある[3]。この際に村人が漬物を献上したところ、日本武尊は「薮に神物」と言われた[3]。ここから、漬物のことを香の物と呼んだ。その後、伊吹山で負傷した日本武尊を妻の宮簀媛が知り、急いで駆けつけたが既に日本武尊が伊勢に帰った後で、媛は逢えなかったことから、「阿波手の杜」と呼ばれるようになった[4]。熱田神宮に日本武尊が祀られるようになって以来、元旦祭と新嘗祭などについては香の物を必ず献じるようになったとされる[5]

祭神

萱津神社の祭神、鹿屋野比売神

祭事

  • 4月第2日曜 - 献榊祭[6]
  • 8月21日 - 香の物祭[6]
  • 10月9日 - 例祭[6]
    • ほかに「お鍬祭」と呼ばれる祭事が60年に一度、斎行される。最近では2008年(平成20年)4月13日に行われた[7]

香の物祭

漬物の神事であり、毎年8月21日に開催される。神事で漬けられる野菜はカリモリ、ハクサイ、大根、ナスの4種類に虫除けのためにタデを入れる[8]。漬物は熱田神宮の例祭に年4度特別奉納される。神事は、熱田神宮から派遣された宮掌が祭詞奏上を行った後、参加者が野菜ひとつと塩をひとつかみ持って瓶の中に漬ける。全て漬け終わると、甕に蓋をして、重石を乗せ、終了となる[9]

近年には周辺の畑地が減少したため、漬物業者が市場で購入した野菜を香の物祭に使用している[10]。2009年の神事には、愛知県知多半島産のウリ、岐阜県・徳島県・高知県産のナスなどが用いられている[10]。また、漬物業者が参加するようになったことで、本来ならば夏季には収穫できないダイコンやハクサイも漬けるようになった[10]。漬物業者のほかには製塩業者も香の物祭に参加している[10]

境内

香の物殿

萱津神社の森は「阿波手の社」と称され、歌枕の地でもあった[11]

萱津神社の境内には、本殿・幣殿・拝殿・社務所・授与所・参集所・香物殿がある[10]。香物殿は3メートル四方の土壁・茅葺き・玄木造りの建物であり、1992年(平成4年)8月に現在地に移転した[10]。香物殿の中には直径約80センチの甕が5個並べてあり、この甕に野菜と塩を入れて漬物を漬けている[10]

香の物殿

香の物殿は茅葺きの建物で、古い感じのおもむきがある[12]

連理の榊

かつての神木は「連理の榊」と呼ばれる[6]。2本の雌雄のが途中で繋がったものであり、枯れてしまった後は社の中に祀られているが[6]、この御神木の葉で祈ると願いは成就し良縁に恵まれるといわれ、日本三代実録によれば陽成天皇に献上された[6]。連理の榊は日本武尊(ヤマトタケル)を慰めるために植えたという説と、日本武尊が手植えしたとする説がある[13][14][12]

交通機関

脚注

  1. ^ a b c d e 萱津神社 香の物祭 - 塩事業センター
  2. ^ a b c d e なごや育ち-守口漬の尾張屋 - 名古屋のお漬物をどうぞ!
  3. ^ a b 武藤尚武 2015, p. 163.
  4. ^ 黒田剛司 2011, p. 205.
  5. ^ 川口謙二 1999, p. 312.
  6. ^ a b c d e f 萱津神社 - 夢結びの杜
  7. ^ 平成の御鍬祭考
  8. ^ あま市もの知り検定委員会編『あま市もの知り読本』2013年
  9. ^ 飯田真世『漬物は語る~世界に誇る日本食の起源とは~』2018年
  10. ^ a b c d e f g 小川聖子、小菅麻衣良『杉野服飾大学・杉野服飾大学短期大学部紀要』2015年、14号、pp.50-59
  11. ^ 川口謙二『日本の神様読み解き事典』1999年、p.311
  12. ^ a b 黒田剛司『これでわかる海部の歴史』津島法人会、2011年、p.205
  13. ^ 川口謙二『日本の神様読み解き事典』1999年、p.312
  14. ^ 武藤尚武『尾張鎌倉街道 萱津昔語り』ブイツーソリューション、2015年、p.164

関連項目

参考文献

  • 清水桂一(編)『たべもの語源辞典 新訂版』東京堂出版、2012年。ISBN 978-4-490-10822-4 
  • 黒田剛司『これでわかる 海部の歴史』社団法人津島法人会、2011年。 
  • 前田栄作・水野鉱造『尾張名所図会 絵解き散歩』2006年。ISBN 4-8331-0126-2 
  • あま市ものしり検定実行委員会『あま市ものしり読本』2013年。 
  • 小川敏男『日本の食文化大系 第十七巻 つけ物道』東京書房社、1982年。 
  • 愛知県高等学校郷土史研究会(編)『歴史散歩 23 愛知県の歴史散歩 上 尾張』山川出版社、2005年。ISBN 4-634-24623-6 
  • 吉田和典『愛知の神社』愛知県郷土資料刊行会、1998年。ISBN 4-87161-064-0 

外部リンク