「忘却曲線」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
節約率の数値を訂正しました。
節約率の出典を追加しました。
5行目: 5行目:
== 実験 ==
== 実験 ==
エビングハウスは、自ら「子音・母音・子音」から成り立つ無意味な音節(rit, pek, tas, ...etc)を記憶し、その再生率を調べ、この曲線を導いた。結果は以下のようになった。
エビングハウスは、自ら「子音・母音・子音」から成り立つ無意味な音節(rit, pek, tas, ...etc)を記憶し、その再生率を調べ、この曲線を導いた。結果は以下のようになった。
:20分後には、節約率が58%であった。
:20分後には、節約率が58%であった。*1
:1時間後には、節約率が44%であった。
:1時間後には、節約率が44%であった。
:約9時間後には、節約率は36%であった。
:約9時間後には、節約率は36%であった。
25行目: 25行目:
== 考察 ==
== 考察 ==
[[記銘]]してから、1日の間に急激な忘却が起こるが、その後の忘却は緩やかに起こる。この[[実験]]で使用されたのは相互に関連を持たない無意味な音節であり、[[学問]]などの体系的な[[知識]]では、より緩やかに忘却が起こると考えられる。また、再認可能な「忘却」と「完全忘却」を区別していないという批判もある。
[[記銘]]してから、1日の間に急激な忘却が起こるが、その後の忘却は緩やかに起こる。この[[実験]]で使用されたのは相互に関連を持たない無意味な音節であり、[[学問]]などの体系的な[[知識]]では、より緩やかに忘却が起こると考えられる。また、再認可能な「忘却」と「完全忘却」を区別していないという批判もある。

== 参考文献 ==
<nowiki>*</nowiki>1 記憶について 実験心理学への貢献 ヘルマン・エビングハウス著 宇津木保 訳/望月衛 閲 誠信書房


== 脚注 ==
== 脚注 ==

2017年9月12日 (火) 08:41時点における版

代表的な忘却曲線

忘却曲線(ぼうきゃくきょくせん)は、記憶の中でも特に中期記憶長期記憶)の忘却を表す曲線。特に心理学者ヘルマン・エビングハウスによるものが有名である。

実験

エビングハウスは、自ら「子音・母音・子音」から成り立つ無意味な音節(rit, pek, tas, ...etc)を記憶し、その再生率を調べ、この曲線を導いた。結果は以下のようになった。

20分後には、節約率が58%であった。*1
1時間後には、節約率が44%であった。
約9時間後には、節約率は36%であった。
1日後には、節約率が34%であった。
2日後には、節約率が28%であった。
6日後には、節約率が25%であった。
1ヶ月後には、節約率が21%であった。

節約率

この一番上のグラフは経過時間ごとの節約率を表している。節約率とは一度記憶した内容を再び完全に記憶し直すまでに必要な時間(または回数)をどれくらい節約できたかを表す割合である。式で表すと

(節約率)=(節約された時間または回数)÷(最初に要した時間または回数)
(節約された時間または回数)=(最初に要した時間または回数)-(覚え直すのに要した時間または回数)

例えば、最初にritを覚えるまでに10分を要し、20分後に覚え直すと約4分を要したとする。この場合、覚え直すのに最初と比べ、6分節約したことになる。すると節約率は 6(節約された時間)÷10(最初に要した時間)=0.6= 60% となる。

また、最初にpekを覚えるのに40回の書き取りを要し、1時間後に覚え直すのに22回要したとする。この場合、最初に比べ、18回分節約したことになる。すると節約率は 18(節約された回数)÷40(最初に要した回数)=0.45= 45% となる。

注意すべき点は、このグラフは節約率を表しているだけに過ぎず、記憶量を表しているわけではないということである。つまり、20個の単語を覚え、24時間が経過すれば、そのうちの74%に相当する15個の単語を忘れている、というわけではないということである。

考察

記銘してから、1日の間に急激な忘却が起こるが、その後の忘却は緩やかに起こる。この実験で使用されたのは相互に関連を持たない無意味な音節であり、学問などの体系的な知識では、より緩やかに忘却が起こると考えられる。また、再認可能な「忘却」と「完全忘却」を区別していないという批判もある。

参考文献

*1 記憶について 実験心理学への貢献 ヘルマン・エビングハウス著 宇津木保 訳/望月衛 閲 誠信書房

脚注