「垂直」の版間の差分

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{{出典の明記|date=2016年6月}}
[[Image:Perpendicular-coloured.svg|thumb|right|250px|線分ABと線分CDがなす角(青で示される角とオレンジで示される角)は各々直角であるため、線分ABと線分CDは垂直である。]]
[[File:Perpendicular-coloured.svg|right|thumb|線分 {{math|{{overline|AB}}}} は線分 {{math|{{overline|CD}}}} に垂直である。これは、それらの成す(橙と青で示された)二つの角が各々直角であることによる。線分 {{math|{{overline|AB}}}} は「点 {{math|A}} から線分 {{math|{{overline|CD}}}} に引いた垂線」と呼ばれ、点{{math|B}} は「点 {{math|A}} から線分 {{math|{{overline|CD}}}} へ引いた垂線の足」あるいは単に「点 {{math|A}} の線分 {{math|{{overline|CD}}}} 上の足」と呼ぶ<ref>{{harvtxt|Kay|1969|p=114}}</ref>]]
'''垂直'''(すいちょく、perpendicular)とは、二つの[[幾何学]]的対象のなす[[角度|角]]が直角であること。また、垂直に交わることを[[直交]]すると<!--言い、垂直だが交わらないとき、それらは'''捩れの位置'''にあると--><!--垂直でなくても良かったかもしれない-->言う。垂直であることを[[垂直記号]] "⊥" を用いてあらわす。慣用的に[[鉛直]]のことを垂直ということも多いが、[http://ja.wiktionary.org/wiki/水平面 水平面]に対して垂直であることが鉛直の原義である。
{{General geometry |concepts}}


[[初等幾何学]]において、'''垂直'''(すいちょく、{{lang-en-short|''perpendicular''}}{{efn|name="perp"|形容詞として用いれば「垂直な」という意味だが、名詞として用いれば「垂線」の意味になる}})であること、すなわち'''垂直性''' ({{en|''perpendicularity''}}) は[[直角]]に交わる二つの[[直線]]の間の[[二項関係|関係性]]を言う。この性質は関連するほかの[[数学的対象|幾何学的対象]]に対しても拡張される。
最も単純な場合、交わる 2 直線を ''l'', ''m'' とし、''l'', ''m'' の交点を ''O'' とする。直線 ''l'' 上の ''O'' と異なる任意の一点を ''P''、直線 ''m'' 上の ''O'' と異なる任意の一点を ''Q'' とするとき、
:<math>\angle POQ = 90^\circ \iff l \perp m</math>


'''垂線''' ({{en|perpendicular}}{{efn|name="perp"}}) に関連して垂線の「足」({{en|"foot"}}) という術語がしばしば用いられる。考える図形の向きは如何様にも変えることができるから、足と謂えどもそれが必ずしも図形の下方にあるわけではない。
また二つの(特に幾何的な)<math>\vec{0}</math>でない[[ベクトル]] <math>\vec{a}</math> と <math>\vec{b}</math> にたいして、これらの[[ベクトルのなす角]]を ''&theta;'' とおくと (0°&le; &theta; &le; 180°)

:<math>\theta = 90^\circ \iff \vec{a} \cdot \vec{b} = 0</math>
== 定義 ==
という[[内積]]との関係が成り立つ。
「二つの直線が互いに'''垂直'''」であるとは、それら二つの直線が{{仮リンク|交点|en|Intersection|label=交わり}}、直角を成すときにいう<ref>{{harvtxt|Kay|1969|p=91}}</ref>。より明示的に、「ある直線に対して別の直線が垂直である」とは
# 両者は交わり、かつ
# その交点において、前者の成す一方の側の[[平角]]を、後者の直線が互いに[[図形の合同|合同]]な二つの[[角度|角]]に分ける
ときに言う。このとき、前者の直線が後者に対して垂直ならば後者の直線も前者に対して垂直となるという意味において、垂直性は[[対称関係|対称的]]であり、そういった理由から(どれが何に対してというような限定を抜きにして)これら二直線は(互いに)垂直であるという風にも言うことができる。

* 垂直性を[[線分]]や[[半直線]]に対して定めるのは容易である。たとえば、線分 {{math|{{overline|AB}}}} が線分 {{math|{{overline|CD}}}} に垂直であるとは、両線分をそれぞれ両方向に無限に延長して直線にするとき、直線 {{math|AB}} が直線 {{math|CD}} に対して(上で述べた意味で)垂直であることを言う。これを記号 {{math|{{overline|AB}} &perp; {{overline|CD}}}} であらわす<ref>{{harvtxt|Kay|1969|p=91}}</ref>。
* 与えられた直線が[[平面]]に対して垂直であるとは、その平面上にありかつそれらの交点を通る任意の直線に対して与えられた直線が垂直となるときに言う。これもまた直線の間の垂直性の定義に依存するものである。
* 二つの平面が垂直であるとは、それらの成す[[二面角]]が直角となるときに言う。

垂直性はより一般の数学概念である[[直交]]性の特別の場合と考えられる。すなわち、垂直性とは古典的な幾何学的対象に関する直交性を言うものである。ゆえに、より進んだ数学において、より複雑な幾何学的直交性(例えば[[曲面]]とその[[法線]]の関係など)に対して「垂直」あるいは「垂線」のような語を用いることもある。

== 垂線の作図 ==
[[file:Perpendicular-construction.svg|thumb|right|点 {{math|P}} を通る直線 {{math|AB}} の垂線 (青) の作図]]
点 {{math|P}} を通り直線 {{math|AB}} に垂直な直線の[[定木とコンパスを用いた作図]]は以下のようにする:

* Step 1 (赤): 点 {{math|P}} を中心とする[[円 (数学)|円]]を作図して、直線 {{math|AB}} 上に {{math|P}} から等距離にある二点 {{math|A{{'}}, B{{'}}}} を取る。
* Step 2 (緑): {{math|A{{'}}, B{{'}}}} の各点を中心とする同半径の円を作図して、その二円の交点 {{math|Q, R}} を取る。
* Step 3 (青): 二点 {{math|Q, R}} を結べばそれが所期の垂線 {{math|PQ}} である。

この {{math|PQ}} が {{math|AB}} に垂直であることを見るには、{{math|△QPA{{'}}}} と {{math|△QPB{{'}}}} に対して{{仮リンク|三角形の合同条件|en|Solution of triangles|label=三辺相等 (SSS)}} の条件が成り立つことにより、{{math|∠OPA{{'}}}} と {{math|∠OPB{{'}}}} が等しいことを知ればよい。そうすれば {{math|△OPA{{'}}}} と {{math|△OPB{{'}}}} に対して二辺夾角相等 (SAS) の条件が成り立つから、{{math|∠POA}} と {{math|∠POB}} が等しい。
{{-}}
[[file:01-Rechter Winkel mittels Thaleskreis.gif|thumb|right|点 {{math|P}} を通る直線 {{mvar|g}} に対する垂線の作図。点 {{math|A}} は端点でなくともよいし、{{math|M}} は自由に選んでよい。]]
点 {{math|P}} を通る直線 {{mvar|g}} に対する垂線を得るために(円周角に関する)[[タレスの定理]]を利用することができる。
{{-}}
直角の作図法の基礎として[[三平方の定理|ピュタゴラスの定理]]を用いることができる。例えば、長さの比が {{math|3 : 4 : 5}} となるような棒を節で繋いだ鎖を使って三角形を作れば、一番長い辺の対角が直角になる。


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
* {{仮リンク|接成分と法成分|en|Tangential and normal components}}
* [[平行]]

* [[水平]]
== 注 ==
* [[平面]]
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* [[傾斜]]
{{reflist}}
* [[勾配]]


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[[Category:幾何学]]
[[Category:初等幾何学]]
[[Category:初等幾何学]]
[[Category:方向]]
[[Category:数学に関する記事]]
[[Category:数学に関する記事]]

2016年6月10日 (金) 09:18時点における版

線分 AB は線分 CD に垂直である。これは、それらの成す(橙と青で示された)二つの角が各々直角であることによる。線分 AB は「点 A から線分 CD に引いた垂線」と呼ばれ、点B は「点 A から線分 CD へ引いた垂線の足」あるいは単に「点 A の線分 CD 上の足」と呼ぶ[1]

Template:General geometry

初等幾何学において、垂直(すいちょく、: perpendicular[注釈 1])であること、すなわち垂直性 (perpendicularity) は直角に交わる二つの直線の間の関係性を言う。この性質は関連するほかの幾何学的対象に対しても拡張される。

垂線 (perpendicular[注釈 1]) に関連して垂線の「足」("foot") という術語がしばしば用いられる。考える図形の向きは如何様にも変えることができるから、足と謂えどもそれが必ずしも図形の下方にあるわけではない。

定義

「二つの直線が互いに垂直」であるとは、それら二つの直線が交わり、直角を成すときにいう[2]。より明示的に、「ある直線に対して別の直線が垂直である」とは

  1. 両者は交わり、かつ
  2. その交点において、前者の成す一方の側の平角を、後者の直線が互いに合同な二つのに分ける

ときに言う。このとき、前者の直線が後者に対して垂直ならば後者の直線も前者に対して垂直となるという意味において、垂直性は対称的であり、そういった理由から(どれが何に対してというような限定を抜きにして)これら二直線は(互いに)垂直であるという風にも言うことができる。

  • 垂直性を線分半直線に対して定めるのは容易である。たとえば、線分 AB が線分 CD に垂直であるとは、両線分をそれぞれ両方向に無限に延長して直線にするとき、直線 AB が直線 CD に対して(上で述べた意味で)垂直であることを言う。これを記号 ABCD であらわす[3]
  • 与えられた直線が平面に対して垂直であるとは、その平面上にありかつそれらの交点を通る任意の直線に対して与えられた直線が垂直となるときに言う。これもまた直線の間の垂直性の定義に依存するものである。
  • 二つの平面が垂直であるとは、それらの成す二面角が直角となるときに言う。

垂直性はより一般の数学概念である直交性の特別の場合と考えられる。すなわち、垂直性とは古典的な幾何学的対象に関する直交性を言うものである。ゆえに、より進んだ数学において、より複雑な幾何学的直交性(例えば曲面とその法線の関係など)に対して「垂直」あるいは「垂線」のような語を用いることもある。

垂線の作図

P を通る直線 AB の垂線 (青) の作図

P を通り直線 AB に垂直な直線の定木とコンパスを用いた作図は以下のようにする:

  • Step 1 (赤): 点 P を中心とするを作図して、直線 AB 上に P から等距離にある二点 A', B' を取る。
  • Step 2 (緑): A', B' の各点を中心とする同半径の円を作図して、その二円の交点 Q, R を取る。
  • Step 3 (青): 二点 Q, R を結べばそれが所期の垂線 PQ である。

この PQAB に垂直であることを見るには、△QPA'△QPB' に対して三辺相等 (SSS) の条件が成り立つことにより、∠OPA'∠OPB' が等しいことを知ればよい。そうすれば △OPA'△OPB' に対して二辺夾角相等 (SAS) の条件が成り立つから、∠POA∠POB が等しい。

P を通る直線 g に対する垂線の作図。点 A は端点でなくともよいし、M は自由に選んでよい。

P を通る直線 g に対する垂線を得るために(円周角に関する)タレスの定理を利用することができる。

直角の作図法の基礎としてピュタゴラスの定理を用いることができる。例えば、長さの比が 3 : 4 : 5 となるような棒を節で繋いだ鎖を使って三角形を作れば、一番長い辺の対角が直角になる。

関連項目

  1. ^ a b 形容詞として用いれば「垂直な」という意味だが、名詞として用いれば「垂線」の意味になる
  1. ^ Kay (1969, p. 114)
  2. ^ Kay (1969, p. 91)
  3. ^ Kay (1969, p. 91)