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'''フライス盤'''(フライスばん)は'''ミリング・マシン'''({{Lang-en|milling machine}})とも呼ばれ主軸に取り付けた[[フライス (工具)|フライス]]という[[切削工具]]を回転させ、[[金属]]製の[[工作物]]を動かすことによっ平面・[[歯車]]などの[[切削加工]]を行う[[工作機械]]である。
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1.正面フライス 2.主軸 3.スピンドルヘッド 4.コラム 5.テーブル 6.サドル 7.ニー 8.ベース 9.主軸スイッチ 10.主軸回転高速・中速・低速変換レバー 11.主軸回転数変換レバー 12.摺動面潤滑油タンク 13.テーブル手送りハンドル 14.テーブル・ロック・ハンドル 15.サドル自動送りレバー 16.サドル自動送り速度変換ダイヤル 17.サドル手送りハンドル 18.ニー手送りハンドル 19.早送りボタン]]
'''フライス盤'''(フライスばん、{{Lang-en|milling machine}})、[[フライス (工具)|フライス]]と呼ばれる[[工具]]を用いて平面溝などの切削加工を行う[[工作機械]]である。


金属などの対象物は可動式のテーブル上に固定され、回転軸の先端に取り付けた回転工具の刃先で切削される。テーブルは工具の回転中心軸に対して横方向へ動かして切削する。工具はさまざまな加工に対応するために交換可能となっており、多様な回転工具が販売されている。まっすぐに穴をあけるドリルと異なり、切削時の力が回転軸の横方向に掛かるため、硬い物を加工する時も回転軸や回転工具がぶれないように、全体が頑丈に作られている<ref name = "フライス盤作業"/>。


== 歴史 ==
== 歴史 ==
[[画像:Eli Whitney milling machine 1818--001.png|thumb|right|200px|1818年にアメリカのホイットニーが製作した最古のフライス盤。]]
[[1818]]に[[アメリカ合衆国|アメリカ]]で銃器の部品を作るため、[[旋盤]]にカッタを付けたものが始まりのようである。現在、残されている最古のフラス盤は、1820年にアメカの[[イーライ・ホイットニー|エリー・ホイットニー]]が作った小型の[[横フライス]]ある。[[立フライス盤]] (または[[縦フライス盤]]) は、1857年にイギリスで作られ、パリの博物館に保存されている。[[カッタ]]は、正式には、[[ミーリングカッタ]](milling cutters)と呼ばれる。[[フェイスミーリングカッタ]]は、[[正面フライス]]や[[フェイスミル]]と呼ばれ、[[サイドミーリング]]は、[[サイドカッター]]とよばれる。
1814年~1820年代ごろに、複数の発明家によって開発されたと見られている<ref name="Baida1987">{{Cite journal | last = Baida | first = Peter | year = 1987 | month = May/June | title = Eli Whitney's Other Talent | journal = American Heritage | volume = 38 | issue = 4 | url = http://www.americanheritage.com/content/eli-whitney%E2%80%99s-other-talent | id = | accessdate 2010-11-29 | postscript =. }}</ref>。現在、残されている最古のフライス盤は、[[1818年]]に[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の[[イーライ・ホイットニー]]([[:en:Eli Whitney|Eli Whitney]])が、銃器の部品を作るために、[[旋盤]]にカッタを付けた[[横フライス]]盤である。

1857年に[[イリス]]で[[立フライス盤]]作られ、[[パリ]]の博物館に保存されている。[[カッタ]]は、正式には、[[ミーリングカッタ]](milling cutters)と呼ばれる。[[フェイスミーリングカッタ]]は、[[正面フライス]]や[[フェイスミル]]と呼ばれ、[[サイドミーリング]]は、[[サイドカッター]]とよばれる。


== 構造と機能 ==
[[画像:Milling machine (Vertical, Manual) NT.PNG|thumb|right|300px|'''フライス盤の例'''(ひざ形立フライス盤、手動操作式)<br />1.正面フライス 2.主軸スピンドル) 3.主軸ヘッド 4.コラム 5.テーブル 6.サドル 7.ニー 8.ベース 9.主軸スイッチ 10.主軸回転高速・中速・低速変換レバー 11.主軸回転数変換レバー 12.摺動面潤滑油タンク 13.テーブル手送りハンドル 14.テーブル・ロック・ハンドル 15.サドル自動送りレバー 16.サドル自動送り速度変換ダイヤル 17.サドル手送りハンドル 18.ニー手送りハンドル 19.早送りボタン]]

金属などの工物は可動式のテーブル(右図の5)上に固定され、軸の先端に取り付けた回転工具の刃先で切削される。テーブルは工具の回転中心軸に対して横方向へ動かして切削する。工具はさまざまな加工に対応するために交換可能となっており、多様な回転工具が販売されている。まっすぐに穴をあけるドリルと異なり、切削時の力が回転軸の横方向に掛かるため、硬い物を加工する時も回転軸や回転工具がぶれないように、全体が頑丈に作られている<ref name = "フライス盤作業"/>。



== 分類 ==
== 分類 ==
=== 主軸方向別 ===
=== 主軸方向別 ===
* 立フライス盤 - 主軸が地面に対して立方向に付いており、四角形状の加工に向いている
* 立フライス盤(Vertical mill) - 主軸が地面に対して立方向に付いており、四角形状の加工に向いている
* 横フライス盤 - 主軸が地面に対して横方向に付いており、溝加工や切断加工に向いている。
* 横フライス盤(Horizontal mill) - 主軸が地面に対して横方向に付いており、溝加工や切断加工に向いている。


=== 移動形態別 ===
=== 移動形態別 ===

2016年1月19日 (火) 02:56時点における版

フライスの回転によって、工作物を切削する。
工具(切り刃)の例

フライス盤(フライスばん)は、ミリング・マシン英語: milling machine)とも呼ばれ、主軸に取り付けたフライスという切削工具を回転させ、金属製の工作物を動かすことによって、平面・溝・歯車などの切削加工を行う工作機械である。


歴史

1818年にアメリカのホイットニーが製作した最古のフライス盤。

1814年~1820年代ごろに、複数の発明家によって開発されたと見られている[1]。現在、残されている最古のフライス盤は、1818年アメリカイーライ・ホイットニーEli Whitney)が、銃器の部品を作るために、旋盤にカッタを付けた横フライス盤である。

1857年にイギリス立フライス盤が作られ、パリの博物館に保存されている。カッタは、正式には、ミーリングカッタ(milling cutters)と呼ばれる。フェイスミーリングカッタは、正面フライスフェイスミルと呼ばれ、サイドミーリングは、サイドカッターとよばれる。


構造と機能

フライス盤の例(ひざ形立フライス盤、手動操作式)
1.正面フライス 2.主軸(スピンドル) 3.主軸ヘッド 4.コラム 5.テーブル 6.サドル 7.ニー 8.ベース 9.主軸スイッチ 10.主軸回転高速・中速・低速変換レバー 11.主軸回転数変換レバー 12.摺動面潤滑油タンク 13.テーブル手送りハンドル 14.テーブル・ロック・ハンドル 15.サドル自動送りレバー 16.サドル自動送り速度変換ダイヤル 17.サドル手送りハンドル 18.ニー手送りハンドル 19.早送りボタン

金属などの工作物は可動式のテーブル(右図の5)上に固定され、主軸の先端に取り付けた回転工具の刃先で切削される。テーブルは工具の回転中心軸に対して横方向へ動かして切削する。工具はさまざまな加工に対応するために交換可能となっており、多様な回転工具が販売されている。まっすぐに穴をあけるドリルと異なり、切削時の力が回転軸の横方向に掛かるため、硬い物を加工する時も回転軸や回転工具がぶれないように、全体が頑丈に作られている[2]


分類

主軸方向別

  • 立フライス盤(Vertical mill) - 主軸が地面に対して立方向に付いており、四角形状の加工に向いている
  • 横フライス盤(Horizontal mill) - 主軸が地面に対して横方向に付いており、溝加工や切断加工に向いている。

移動形態別

  • ひざ形 - 主軸が固定され、テーブルがZXYに動く
  • ラム形 - 主軸がY、テーブルがZXに動く
  • ベッド形 - 主軸がZ、テーブルがXYに動く

手動・自動別

  • 手動フライス盤
  • NCフライス盤、CNCフライス盤

単にフライス盤といえば、手動によるハンドルによって操作するものを指すが、手動のものとは別にコンピュータによって制御されるNCフライス盤やCNCフライス盤と呼ばれる機械がある。NCとは「Numerical Control」(数値制御)のことであり、CNCとは「Computer Numerical Control」のことである。手動操作では直線的な加工だけを行なえるが、NCでは縦横高さの3方向での動きが同時に制御出来るために、曲線や曲面を切削することが出来る。NCであっても手動操作は可能である[2]

主な工具

正面フライス刃。黄色のそれぞれがスローアウェイチップである。
  • 正面フライス - 円盤状の底面の周囲に多数のスローアウェイチップと呼ばれる交換可能な刃先を持つ。主に広い面を削る時に使用する。スローアウェイチップが固定されている円盤部分はカッターボディまたはフライスヘッドと呼ばれる。
  • エンドミル - 丸棒の外周面と底面に刃を持つ。ドリルの刃に似ているが、側面でも切削することが出来る。刃は1枚から8枚が一般的である。
  • ボーリングヘッド - ドリルで開けた穴の内側を滑らかにするのに使用する。旋盤の「バイト」を使用している。
  • 面取りフライス - 工作物の角を面取りする時に使用される。
  • 穴用面取りフライス - 工作物の穴の縁を面取りする時に使用される。
  • T溝フライス - T型の溝を掘るのに使用される。
  • 半月キー溝フライス - 半月キー溝を掘るのに使用される。
  • あり溝フライス - あり溝を掘るのに使用される。
  • コ-ナーRカッタ - 工作物の角をRを付けて面取りする時に使用される。
  • 沈めフライス - 座ぐり穴を加工するのに使用する。工作物にあらかじめドリルで穴を開けておく必要がある。
  • メタルソー
  • センタドリル - ドリルを使った穴あけ加工の準備として、あらかじめ小さな穴を開けるのに使う小さなドリルである。
  • ドリル

固定

工作物

加工対象となる工作物はテーブルに固定されなければならない。固定に使用される工具には以下のものが使われる。

  • マシンバイス - 単にバイスとも呼ばれ、万力のようにハンドルで締め付けねじを回し移動する口金にはさんで固定する。バイス自身は取り付けボルトでテーブルに固定される。現在は油圧による締め圧増加などの機能を持つバイスが主流である。
  • ハネクランプ - マシンバイスでは扱えない大きさの工作物はハネクランプまたはステップクランプによって直接テーブルに固定される。
  • ステップクランプ - ハネクランプでの固定厚みが変えられるように、工作物とは反対側のクランプの端にステップブロックと呼ばれる階段状の段が刻まれた三角形の金属具を噛ませる。

切削工具

回転する切削工具をフライス盤の主軸に固定するために、いくつかの工具が使用されている。下記の多くがフックスパナで締め付け作業などが行なわれる。マシンバイスなどを使う時には銅板を間に挟む事で工作物が直接、バイスの口金で傷付けられることを防止する。

  • クイックチェンジ・アダプタ - ドローイング・ボルトを使って主軸に取り付けられる。
  • ミーリング・チャック - エンドミルをクイックチェンジ・アダプタに取り付けるための工具。コレット・チャックとも呼ばれる。コレットがエンドミルを保持し、コレットをミーリング・チャックが固定する。
  • コレット - エンドミルを挿入する。エンドミルの外形の違いを吸収し、ミーリング・チャックの穴に合わせる。
  • ドリルチャック - ドリルを使うときに使用する。ストレートシャンクとテーパーシャンクの2種類がある[2]

脚注

  1. ^ Baida, Peter (May/June 1987). “Eli Whitney's Other Talent”. American Heritage 38 (4). http://www.americanheritage.com/content/eli-whitney%E2%80%99s-other-talent. 
  2. ^ a b c 澤武一『目で見てわかるフライス盤作業 : visual books』日刊工業新聞社、2008年。ISBN 978-4-526-06063-2 

関連項目