「管理の受委託 (バス)」の版間の差分

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'''管理の受委託'''(かんりのじゅいたく)とは、バス事業者が別のバス事業者に路線の運行・車両の管理などの業務全般を委託(委託を受けるバス事業者にとっては受託)することである。路線を持つバス事業者は委託する事業者に委託料を支払い、路線を持つバス業者の車両で運行するのが基本である。
[[バス (交通機関)|バス]]事業における'''管理の受委託'''(かんりのじゅいたく)とは、[[道路運送法]]第35条の規定に基づき、バス事業者が別のバス事業者に路線の運行・車両の管理などの業務全般を委託(委託を受けるバス事業者にとっては受託)することである。


== 概要 ==
== 概要 ==
バス事業の管理の受委託につい[[道路運送法]]第35条により規定されている。
[[道路運送法]]第35条では、一般旅客自動車運送事業(いわゆる[[路線バス]]事業及び[[観光バス]]事業)の管理の受委託に関して、以下の通り規定ている。
{{Quotation|

第三十五条(事業の管理の受委託)
(事業の管理の受委託)<br />
一般旅客自動車運送事業の管理の委託及び受託については、国土交通大臣の許可を受けなければならない。
第三十五条 一般旅客自動車運送事業の管理の委託及び受託については、[[国土交通大臣]]の許可を受けなければならない。<br />
2 国土交通大臣は、前項の許可をしようとするときは、受託者が当該事業を管理するのに適している者であるかどうかを審査して、これをしなければならない。
2
||道路運送法(昭和二十六年六月一日法律第百八十三号)より抜粋}}
国土交通大臣は、前項の許可をしようとするときは、受託者が当該事業を管理するのに
適している者であるかどうかを審査して、これをしなければならない。

詳細は、以下の[[通達]]において規定されている。
詳細は、以下の[[通達]]において規定されている。
* 「[[路線バス|一般乗合旅客自動車運送事業]]の管理の受委託([[高速バス]]路線に係るものを除く。)について」
*平成12年11月1日付自旅第125号自整第171号自環第254号
** 平成12年11月1日付 自旅第125号自整第171号自環第254号
**[[高速バス]]を除く[[路線バス|一般乗合旅客自動車]]
** 平成16年6月30日付 国自総第139号、国自旅第79号、国自整第51号(改訂)<ref name="mlit20071220">[http://www.mlit.go.jp/pubcom/07/pubcomt137_.html 「一般乗合旅客自動車運送事業の管理の受委託(高速バス路線に係るものを除く。)について」、「高速バスの管理の受委託について」及び 「一般貸切旅客自動車運送事業の管理の受委託について」の一部改正に関するパブリックコメントの募集について] - 国土交通省自動車交通局旅客課2007年12月20日</ref>
*平成12年11月1日付自旅第125号の2自整第171号の2自環第254号の2
** 平成20年2月6日付 (文書番号不明)(改訂)<ref name="mlit20080207">[http://www.mlit.go.jp/pubcom/07/kekka/pubcomk137_.html 「一般乗合旅客自動車運送事業の管理の受委託(高速バス路線に係るものを除く。)について」、「高速バスの管理の受委託について」及び「一般貸切旅客自動車運送事業の管理の受委託について」の一部改正に関するご意見の募集結果について] - 国土交通省自動車交通局旅客課2008年2月7日</ref>
**高速バス
* 「高速バスの管理の受委託について」
*平成12年11月1日付自旅第125号の3自整第171号の3自環第254号の3
** 平成12年11月1日付 自旅第125号の2自整第171号の2自環第254号の2
**[[観光バス|一般貸切旅客自動車]]
** 平成16年6月30日付 国自総第140号、国自旅第80号、国自整第52号(改訂)<ref name="mlit20071220"/>
** 平成20年2月6日付 (文書番号不明)(改訂)<ref name="mlit20080207"/>
** 平成24年7月31日付 国自安第55号、国自旅第236号、国自整第78号<ref>{{PDFlink|[http://www.mlit.go.jp/common/000219957.pdf 高速バスの管理の受委託について] - 国土交通省自動車局長通達2012年7月31日}}</ref>
*[[観光バス|一般貸切旅客自動車運送事業]]の管理の受委託について」
** 平成12年11月1日付 自旅第125号の3自整第171号の3自環第254号の3
** 平成16年6月30日付 国自総第141号、国自旅第81号、国自整第53号(改訂)<ref name="mlit20071220"/>
** 平成20年2月6日付 (文書番号不明)(改訂)<ref name="mlit20080207"/>


==効果==
== 効果 ==
委託する事業者Aは料金や[[ダイヤグラム|ダイヤ]]の設定、車両導入や保有、[[バス停留所|停留所]]の設置など経営上の責任を負い、受託する事業者Bは日々の運転業務・整備管理業務・運行管理業務などを行うものである<ref>[http://www.soumu.go.jp/iken/pdf/051108_2_25.pdf 総務省HP内バス事業の管理の受委託(京都市交通局)]</ref><ref>[http://www.soumu.go.jp/c-zaisei/local/pdf/local_s20.pdf 総務省HP内京都市営バス「管理の受委託」の実施]</ref>。よって一般に高コストの事業者Aが同内容の事業をより低コストで経営できる事業者Bへ委託することからコスト削減効果がある。路線の譲渡とは違い、利用者の見た目からは管理の受委託実施後も実施前と同じく事業者Aの車両や停留所が使用される。料金やダイヤ設定も委託元の事業者Aがなす事から委託元の事業者のイニシアティブのもと、低コストで路線を守ることが出来るとされる<ref>[http://210.158.218.12/me/koutuu/info/news/2006/pdf/070206_8-10.pdf 横浜市交通局記者発表資料]</ref>。
委託する事業者Aは料金や[[ダイヤグラム|ダイヤ]]の設定、車両導入や保有、[[バス停留所|停留所]]の設置など経営上の責任を負い、受託する事業者Bは日々の運転業務・整備管理業務・運行管理業務などを行うものである<ref>[http://www.soumu.go.jp/iken/pdf/051108_2_25.pdf 総務省HP内バス事業の管理の受委託(京都市交通局)]</ref><ref>[http://www.soumu.go.jp/c-zaisei/local/pdf/local_s20.pdf 総務省HP内京都市営バス「管理の受委託」の実施]</ref>。よって一般に高コストの事業者Aが同内容の事業をより低コストで経営できる事業者Bへ委託することからコスト削減効果がある。路線の譲渡とは違い、利用者の見た目からは管理の受委託実施後も実施前と同じく事業者Aの車両や停留所が使用される。料金やダイヤ設定も委託元の事業者Aがなす事から委託元の事業者のイニシアティブのもと、低コストで路線を守ることが出来るとされる<ref>[http://210.158.218.12/me/koutuu/info/news/2006/pdf/070206_8-10.pdf 横浜市交通局記者発表資料]</ref>。


==管理の受委託の方法==
== 管理の受委託の方法 ==
路線を持つバス事業者は委託する事業者に委託料を支払い、路線を持つバス業者の車両で運行するのが基本である。

管理の委託を行うには、当然委託しようとする事業者Aより低コスト体質の事業者Bが存在しなければならない。この事業者B選定の際、既存の事業者を選定する場合([[都営バス|東京都交通局]]が[[はとバス|株式会社はとバス]]へ委託など)と、事業者Aの子会社を設立する場合([[横浜市営バス|横浜市交通局]]が新会社、[[横浜交通開発|横浜交通開発株式会社]]を設立など。民間バス会社は新会社設立がほとんど)がある。ただ、管理の受託が出来る事業者は乗合バス事業者でないとならないためその新会社は新たに道路運送法第4条許可事業者となる必要がある<ref>[http://210.158.218.12/me/koutuu/info/news/2006/pdf/070206_8-10.pdf 横浜市交通局記者発表資料]</ref>。
管理の委託を行うには、当然委託しようとする事業者Aより低コスト体質の事業者Bが存在しなければならない。この事業者B選定の際、既存の事業者を選定する場合([[都営バス|東京都交通局]]が[[はとバス|株式会社はとバス]]へ委託など)と、事業者Aの子会社を設立する場合([[横浜市営バス|横浜市交通局]]が新会社、[[横浜交通開発|横浜交通開発株式会社]]を設立など。民間バス会社は新会社設立がほとんど)がある。ただ、管理の受託が出来る事業者は乗合バス事業者でないとならないためその新会社は新たに道路運送法第4条許可事業者となる必要がある<ref>[http://210.158.218.12/me/koutuu/info/news/2006/pdf/070206_8-10.pdf 横浜市交通局記者発表資料]</ref>。


また、委託できる範囲は、委託者の一般バス路線の長さ又は使用車両数に対する比率で1/2以内であることが条件とされ<ref>[http://www.mlit.go.jp/chubu/jidosya/ryokaku_kouji/noriai_63.htm 国土交通省中部運輸局HP内「一般乗合旅客自動車運送事業の管理の受委託について」]</ref>、無制限に委託できる訳ではないが、平成20年2月より一部緩和され、一定の基準を満たせば、2/3以内まで拡大できることとされた<ref>[http://www.mlit.go.jp/chubu/jidosya/ryokaku_kouji/45_noriai.pdf 国土交通省中部運輸局HP内「一般乗合旅客自動車運送事業の管理の受委託について」]</ref>。
また、委託できる範囲は、委託者の一般バス路線の長さ又は使用車両数に対する比率で1/2以内であることが条件とされ<ref>[http://www.mlit.go.jp/chubu/jidosya/ryokaku_kouji/noriai_63.htm 国土交通省中部運輸局HP内「一般乗合旅客自動車運送事業の管理の受委託について」]</ref>、無制限に委託できる訳ではないが、2008年2月より一部緩和され、一定の基準を満たせば、2/3以内まで拡大できることとされた<ref>[http://www.mlit.go.jp/chubu/jidosya/ryokaku_kouji/45_noriai.pdf 国土交通省中部運輸局HP内「一般乗合旅客自動車運送事業の管理の受委託について」]</ref>。

2012年7月には、いわゆる[[ツアーバス|(高速)ツアーバス]]を[[高速バス|高速(路線)バス]]に一本化させるための手法として、新たに乗合バス事業者から貸切バス事業者への管理の受委託のスキームが導入された<ref>{{PDFlink|[http://www.mlit.go.jp/common/000219455.pdf 「新高速乗合バス」について(別紙資料)] - 国土交通省自動車局2012年7月30日}}</ref>(前述の都営バスからはとバスへの受委託は、はとバスが乗合バス事業者であるためこれに該当しない)。この場合、受託者(貸切バス事業者)の運行管理・整備管理について委託者(乗合バス事業者)が指導・助言を行うなど、委託者・受託者一体となった安全管理体制の構築を義務づけるなど、貸切バス事業者の安全管理に乗合バス事業者が積極的に関与することを求めている。

なお、いずれのケースも管理の受委託期間は最長5年とされており、それ以上の受委託は再度国土交通省(地方運輸局)への許可が必要になる。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
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== 関連項目 ==
== 関連項目 ==

2012年8月23日 (木) 12:03時点における版

バス事業における管理の受委託(かんりのじゅいたく)とは、道路運送法第35条の規定に基づき、バス事業者が別のバス事業者に路線の運行・車両の管理などの業務全般を委託(委託を受けるバス事業者にとっては受託)することである。

概要

道路運送法第35条では、一般旅客自動車運送事業(いわゆる路線バス事業及び観光バス事業)の管理の受委託に関して、以下の通り規定している。

(事業の管理の受委託)
第三十五条 一般旅客自動車運送事業の管理の委託及び受託については、国土交通大臣の許可を受けなければならない。
2 国土交通大臣は、前項の許可をしようとするときは、受託者が当該事業を管理するのに適している者であるかどうかを審査して、これをしなければならない。

詳細は、以下の通達において規定されている。

  • 一般乗合旅客自動車運送事業の管理の受委託(高速バス路線に係るものを除く。)について」
    • 平成12年11月1日付 自旅第125号、自整第171号、自環第254号
    • 平成16年6月30日付 国自総第139号、国自旅第79号、国自整第51号(改訂)[1]
    • 平成20年2月6日付 (文書番号不明)(改訂)[2]
  • 「高速バスの管理の受委託について」
    • 平成12年11月1日付 自旅第125号の2、自整第171号の2、自環第254号の2
    • 平成16年6月30日付 国自総第140号、国自旅第80号、国自整第52号(改訂)[1]
    • 平成20年2月6日付 (文書番号不明)(改訂)[2]
    • 平成24年7月31日付 国自安第55号、国自旅第236号、国自整第78号[3]
  • 一般貸切旅客自動車運送事業の管理の受委託について」
    • 平成12年11月1日付 自旅第125号の3、自整第171号の3、自環第254号の3
    • 平成16年6月30日付 国自総第141号、国自旅第81号、国自整第53号(改訂)[1]
    • 平成20年2月6日付 (文書番号不明)(改訂)[2]

効果

委託する事業者Aは料金やダイヤの設定、車両導入や保有、停留所の設置など経営上の責任を負い、受託する事業者Bは日々の運転業務・整備管理業務・運行管理業務などを行うものである[4][5]。よって一般に高コストの事業者Aが同内容の事業をより低コストで経営できる事業者Bへ委託することからコスト削減効果がある。路線の譲渡とは違い、利用者の見た目からは管理の受委託実施後も実施前と同じく事業者Aの車両や停留所が使用される。料金やダイヤ設定も委託元の事業者Aがなす事から委託元の事業者のイニシアティブのもと、低コストで路線を守ることが出来るとされる[6]

管理の受委託の方法

路線を持つバス事業者は委託する事業者に委託料を支払い、路線を持つバス業者の車両で運行するのが基本である。

管理の委託を行うには、当然委託しようとする事業者Aより低コスト体質の事業者Bが存在しなければならない。この事業者B選定の際、既存の事業者を選定する場合(東京都交通局株式会社はとバスへ委託など)と、事業者Aの子会社を設立する場合(横浜市交通局が新会社、横浜交通開発株式会社を設立など。民間バス会社は新会社設立がほとんど)がある。ただ、管理の受託が出来る事業者は乗合バス事業者でないとならないためその新会社は新たに道路運送法第4条許可事業者となる必要がある[7]

また、委託できる範囲は、委託者の一般バス路線の長さ又は使用車両数に対する比率で1/2以内であることが条件とされ[8]、無制限に委託できる訳ではないが、2008年2月より一部緩和され、一定の基準を満たせば、2/3以内まで拡大できることとされた[9]

2012年7月には、いわゆる(高速)ツアーバス高速(路線)バスに一本化させるための手法として、新たに乗合バス事業者から貸切バス事業者への管理の受委託のスキームが導入された[10](前述の都営バスからはとバスへの受委託は、はとバスが乗合バス事業者であるためこれに該当しない)。この場合、受託者(貸切バス事業者)の運行管理・整備管理について委託者(乗合バス事業者)が指導・助言を行うなど、委託者・受託者一体となった安全管理体制の構築を義務づけるなど、貸切バス事業者の安全管理に乗合バス事業者が積極的に関与することを求めている。

なお、いずれのケースも管理の受委託期間は最長5年とされており、それ以上の受委託は再度国土交通省(地方運輸局)への許可が必要になる。

脚注

関連項目