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2012年8月3日 (金) 13:59時点における版

プログラミングされるENIAC

ENIAC(エニアック、Electronic Numerical Integrator and Computer、「電子式数値積分・計算機」の意)は、アメリカで開発された最初期の電子計算機コンピュータ)。

ENIACは、かつては世界初のコンピュータとされていたが、現在では否定されることが多い(後述の世界最初のコンピュータを参照)。1946年2月14日ペンシルベニア大学で初めて公開され、1955年10月2日まで使用され、その後、解体された。現在、その一部がスミソニアン博物館アメリカ歴史博物館ペンシルベニア大学に分散して保管されている。

概要

ENIACは17468本の真空管、70000個の抵抗器、10000個のコンデンサ等で構成されていた。幅24m、高さ2.5m、奥行き0.9m、総重量30トンと大掛かりな装置で、設置には倉庫1個分のスペースを要した。消費電力は150kW。開発費の総額は49万ドル

現在のコンピュータは二進法で計算を行うものがほとんどだが、ENIACは内部構造に十進法を採用した。符号付き10桁の演算が可能で、毎秒5000回の加算、14回の乗算が行えた。20個の変数と300個の定数を記憶するメモリをもち、フロッピーディスクなどの外部記憶装置は備えていなかった。

また、プログラムは人が配線をすることにより行われた。これは現在のコンピュータの仕組みとは異なる部分である(別項 プログラム内蔵方式参照)。

ENIACの開発は約2年間におよび、開発の中心はジョン・エッカートジョン・モークリーであった。ENIACは当初、アメリカ陸軍大砲弾道計算を目的につくられた。ENIACが完成する前に第二次世界大戦が終結したため当初の目的は達成できなかったが、その後も開発は続けられた。

ENIACは、真空管が週に2 - 3本壊れる程度で、稼働率が90%以上だったとされる。これは、真空管のフィラメントを定格の10%未満という低い電圧で動作させ、加熱と冷却でフィラメントが膨張と収縮を繰り返さないよう電源は落とさない等、多くの工夫を行ったためである。陸軍のアバディーン性能試験場に移設後、毎日電源を落とすようにしたところ、稼働率は50%にまで下がったと言われる。

世界最初のコンピュータ

上記の通り、ENIACは「世界最初のコンピュータ」と見なされてきた。しかし、プログラムソフトウェアではなくスイッチの切り替えなどで与えるなど、プログラムの格納方法において現在のコンピュータの仕組みとは異なっている部分もあり、コンピュータの定義によっては必ずしも世界最初のものではない。 チューリング完全なコンピュータとしてはツーゼによる「Z3」が先行する。

また、特定の計算を行うコンピュータは、当時いくつか存在していた。例えば1939年に試作機が完成、稼働した「アタナソフ&ベリー・コンピュータ」を世界最初のコンピュータとする考え方が今では主流である。1973年10月19日ミネアポリス連邦地方裁判所の判決[1]は、ジョン・アタナソフとベリーが1939-1942年の間に、アイオワ州立大学において、最初の電子式デジタルコンピュータ(the first electronic digital computer)を作ったと明確に述べている。

このためENIACは現在では、「世界最初のコンピュータ」ではなく、「世界最初の『汎用』コンピュータ(the first general-purpose electronic computer)」と呼ばれる[2]ことが多い。しかし、いずれにせよENIACが、コンピュータの黎明期において歴史的に重要な役割を果たしたものの1つであることに変わりはない。

1チップ ENIAC

ペンシルベニア大学は1995年にENIACを7.44mm x 5.29mmのシリコン基板上にトランジスタを0.5umのCMOS技術で174,569個形成する事により再現した[3]

脚注

  1. ^ Rebuilding the ABC” (英語). The Trial. Ames Laboratory (2003年1月22日). 2012年2月15日閲覧。
  2. ^ 英語版ENIACを参照。
  3. ^ Jan Van der Spiegel (2007年8月6日). “ENIAC-on-a-Chip” (英語). University of Pennsylvania. 2012年2月15日閲覧。

参考文献

  • Eames, Charles; Eames, Ray (1990-09-01). A Computer Perspective: Background to the Computer Age (New ed.). Harvard University Press. ISBN 0-674-15626-9 
  • Mike Hally, Electronic Brains: Stories from the Dawn of the Computer Age, Joseph Henry Press, 2005. ISBN 0-309-09630-8
  • Scott McCartney, ENIAC: The Triumphs and Tragedies of the World's First Computer. Walker & Co, 1999. ISBN 0-8027-1348-3.
  • Mollenhoff, Clark R. (1988-04-30). Atanasoff: Forgotten Father of the Computer. Iowa State Univerity Press. ISBN 0-8138-0032-3 
  • Edmund C. Berkeley, GIANT BRAINS or machines that think. John Wiley & sons, inc., 1949. Chapter 7 Speed—5000 Additions a Second: Moore School's ENIAC (Electronic Numerical Integrator And Computer)
  • C.B. Tompkins and J.H Wakelin, High-Speed Computing Devices, McGraw-Hill, 1950.
  • Stern, Nancy (1981). From ENIAC to UNIVAC: An Appraisal of the Eckert-Mauchly Computers. Digital Press. ISBN 0-932376-14-2 
  • Lukoff, Herman (1979). From Dits to Bits: A personal history of the electronic computer. Portland, Oregon: Robotics Press. ISBN 0-89661-002-0 

関連項目

外部リンク


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