「調剤」の版間の差分

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*[[医薬分業]]
*[[医薬分業]]
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2010年2月23日 (火) 11:39時点における版

調剤(ちょうざい)とは、医師歯科医師獣医師から発行された処方箋に基づき、医薬品を交付すること。一部の例外を除き、薬剤師の独占業務である。

歴史

一昔前まで日本の薬剤師は、医師の書き殴りの処方せんを解読でき、いかに素早く処方箋通り正確に医薬品を揃えられるかが求められた。従って調剤とは単に、医薬品を調合することであると考えられてきた。だが、患者とのインフォームド・コンセントが当然のこととなった現在では、調剤報酬も改定され、服薬指導、患者の薬剤投与歴の管理、後発医薬品選択、未知副作用の発見など多様な業務全てを含めて広義の調剤と呼ぶ。

調剤の実際

医薬品情報の収集

病院には医薬品情報管理室(DI室)が設置されていることが多い。

医薬品の管理

麻薬覚せい剤、覚せい剤原料、向精神薬毒薬劇薬、生物由来製品など、各種規制により貯蔵・陳列法、帳簿の記帳義務などが異なっており、それぞれに対応した管理が求められる。向精神薬は、病院内の職員による盗難事案も発生しており、注意を要する。また麻薬はガン患者に対する疼痛管理として近年重要性が増しており、適切な管理が求められる。

また、適切な量を在庫せず必要な医薬品が無くなれば、患者の生命も左右しかねない。一方で過剰な在庫は、医薬品は高価なものも多いため余分な経費がかかり、使用期限のある医薬品の無駄につながる。

処方箋監査

形式的監査

記入漏れがあると処方箋として効力をなさないので、医師の署名など、必要事項の確認を行う。また院外の薬局では、向精神薬などの収集を目的に偽造・変造処方箋が持ち込まれる事案が発生しているので、真正なものであるか法的・薬学的観点からも監査する。

処方監査

処方意図や処方量の確認、さらには患者の話や薬歴より処方歴や病歴を照合し、重複処方や禁忌などを見つける。もし発見した場合は、疑義照会を行うことが義務づけられている。

疑義照会

薬剤師法24条により、処方せん中に疑わしい点があるときは「その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない。」と定められている。

医薬品の調製

内服薬


注射薬

注射剤や高カロリー輸液の混合は看護師によって行われてきたこともあった。しかし看護業務の専門化、薬剤汚染防止、そして抗がん剤等の被爆事故防止などの観点からクリーンベンチや安全キャビネットの整備された調剤所で薬剤師による調剤が必要不可欠である。 また在宅で中心栄養静脈法を利用している患者のために、クリーンベンチを備えた保険薬局も増えつつある。

薬袋作成

薬袋(やくたい)には、薬剤師法25条などにより記入すべき事項が規定されている。

調剤薬監査

近年では自動分包機が普及し、コンピュータに入力すれば1回服用分ずつ自動的に分包されるが、不具合がよく発生するので1包ずつ適切な量が入っていることを確認しなければならない。

服薬指導

医薬品は情報と共に提供しなければ、ただの化学物質である。たとえ患者が不要であると言っても、適切な情報を提供することが法令で義務付けられている。

医薬品の交付

薬物血中濃度モニタリング

薬歴簿記入

服用後の観察

後発医薬品の代替調剤

原則として交付する医薬品は処方箋に従わなければならないが、「後発医薬品への変更可」欄に処方医の「記名と押印」または「署名」がなければ、患者の合意の上、処方医の許可なしに薬剤師が後発医薬品を選んでよい。2008年3月までは「後発医薬品への変更」欄に処方医の「記名と押印」または「署名」がある場合に限られていた。

後発医薬品の銘柄選定は、薬剤師がオレンジブックや、メーカーの信頼性、価格などを勘案して判断しなければならない。

調剤ミス事例

薬剤管理不備

  • 川崎市で10人の子供に対し、セルテクトドライシロップの瓶にセレネースを小分けにしていたため誤ってセレネースを交付し、5人が入院した。その後薬剤師が自殺。

名称類似薬

  • 女性 (85) に対し、医師がアルマールを処方するところ誤ってアマリールを処方、薬剤師がそのまま調剤し、血糖値が低下して救急車で搬送された。
  • 1997年、福岡県で妊婦 (35) に対し増血剤フェルムカプセルを調剤するところ誤って消炎鎮痛剤フルカムカプセルを調剤し、羊水が異常減少した。

倍散・用量ミス

  • 2006年12月21日、北海道の女児 (3) に対し、薬剤師が解熱鎮痛薬の10倍散と間違えて原末を交付した。
  • 2006年11月、福島県の女性 (37) に、薬剤師 (25) が誤って抗真菌薬ブイフェンド50mg錠の処方に200mg錠を渡し、めまいを訴えた。
  • 2003年10月、兵庫県の男児(5ヶ月)に、女性薬剤師 (33) が瓶を取り違え10倍濃度の高い強心剤ジゴシンを交付し、死亡した。
  • 2003年、宮城県仙台市で新生児に、女性薬剤師 (27) が気管支拡張薬テオフェリンを3.5mgを0.35gとして交付し、約1ヵ月後に死亡した。薬剤師は書類送検。

処方監査不備

  • 2004年4月、川崎市で男性に対し、研修医が併用禁忌の抗がん剤フルツロンとティーエスワンを誤って処方、死亡した。
  • 2003年、医師がアレビアチン10%散を処方するところ誤ってアレビアチン細粒を処方、薬剤師がそのまま調剤し、死亡した。医師と薬剤師は書類送検。
  • 2000年6月1日、福井県福井市で男性 (75) に対し、医師 (54) が判読しにくい字で5mgと書いたため、看護師が50mgと誤読し、薬剤師 (35) が50mgで調剤し、約1.5ヶ月後に死亡した。医師と薬剤師は書類送検。
  • 1999年9月、東京都で女児(4ヶ月)に、医師がジゴキシン0.05mgを処方するところ誤って0.5mgを処方、薬剤師がそのまま調剤し、心肺停止状態に陥った。

その他

  • 2006年、大垣市で小学生ら11人に、医師が2種混合ワクチンを他の予防接種と誤って0.5mL投与した。
  • 2000年10月7日、埼玉県川越市で女性に対し、医師が抗がん剤ビンクリスチンを1週間量と1日量を誤って投与し、死亡した。
  • 1999年12月27日、大阪府で男性に対し、研修医 (27) が抗がん剤10mgを処方するところ誤って80mgを処方し、死亡した。
  • 1991年1月9日、群馬県で妊婦 (27) に、医師が解熱薬インドメタシン50mgを投与、ぜんそくで妊婦と胎児が死亡した。

関連項目