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[[第一次世界大戦]]および[[第二次世界大戦]]中、多くのトロール船が徴用され[[掃海艇]]として使用された。これは掃海具を海中に投入し曳航するという掃海活動がトロール船の漁法に似ており、トロール船の設備が転用出来るほか、乗組員もある程度作業に馴れていたからである。
[[第一次世界大戦]]および[[第二次世界大戦]]中、多くのトロール船が徴用され[[掃海艇]]として使用された。これは掃海具を海中に投入し曳航するという掃海活動がトロール船の漁法に似ており、トロール船の設備が転用出来るほか、乗組員もある程度作業に馴れていたからである。


これらの徴用掃海艇は哨戒任務にも従事し、イギリス等では[[第二次世界大戦]]時に建造した「掃海艇としての能力を持つ近海用哨戒艇」の艦種区分の一つに「哨戒トローラー(Patrol trawler)」もしくは単に「トローラー」という名称をつけている。無論これには「漁船」としての装備も能力もないが「哨戒トローラー」の中には、戦後民間に払い下げられて漁船に改装され、名の通りの「トロール船」になったものもあった。
これらの徴用掃海艇は哨戒任務にも従事し、イギリス等では「掃海艇としての能力を持つ近海用哨戒艇」の艦種区分の一つに「哨戒トローラー(Patrol trawler)」もしくは単に「トローラー」という名称をつけている。これには、徴用トロール船のほか、トロール船の設計を下敷きにして最初から軍艦として建造された、「漁船」としての装備も能力もない「トロール船」分類された。これらの「哨戒トローラー」の中には、戦後民間に払い下げられて漁船に改装され、名の通りの「トロール船」になったものもあった。


[[冷戦|冷戦期]]には、いくつかの国がトロール船に電子機器を積んで[[スパイ船]]に仕立て、敵国の電子情報の収集([[シギント]])にあたった。特に、[[ソビエト海軍]]は漁船として建造されたものを改造したのではなく、最初から“一見漁船のような外観”の「電子情報収集艇」を建造し、世界各地で情報収集任務に当たらせている。
[[冷戦|冷戦期]]には、いくつかの国がトロール船に電子機器を積んで[[スパイ船]]に仕立て、敵国の電子情報の収集([[シギント]])にあたった。特に、[[ソビエト海軍]]は漁船として建造されたものを改造したのではなく、最初から“一見漁船のような外観”の「電子情報収集艇」を建造し、世界各地で情報収集任務に当たらせている。

== 参考文献 ==
* [[福井静夫]] 『日本補助艦艇物語』[[光人社]]、1993年


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==

2009年7月5日 (日) 16:22時点における版

デンマークの近代的トロール船

トロール船(トロールせん、英語 trawler・希にtrawling ship)とはトロール網を使用した漁業のための漁船のこと。トロール網は漁網の一種で、海底や調定された深度をさらうものである。なお、トロール船の呼称は、トロール船とよく似た形状のプレジャーボートにも使われる。

近代的な「岩飛び式」のトロール網は、網がでこぼこした海底で破れないように、頑丈なゴム製の車輪を付けている。水深55-75mの海中で操業するが、近代的なトロール船は水深900m程度の海域で操業することも多い。実験的な操業が、それ以上の水深で行われたこともある。トロール船には冷蔵設備が設けられており、各船ごとに大きさは異なるが、これがいっぱいになるまで数週間にわたって操業する船もある。

歴史

アイスランドの近代的トロール船の船尾ランプ ここよりトロール網を繰り出す

中世において、デヴォン州ブリックスハムイングランド南西部で最大の漁港であり、トロール船が発明された港としても有名である。ブリックスハムはイングランド全体で最大の漁港であった。

19世紀にブリックスハムで発明されたトロール船は世界中で模倣され、各地の漁船団に影響を与えた。ブリックスハムの特徴的なトロール船は「Torbay Lass」(訳注:トーベイ(en)の娘っ子」というほどの意か)としてよく知られ、その姿に触発された「レッドセイル・イン・サンセット」(en)という曲もある。ブリックスハムは「深海漁師の母」としても知られ、そのトロール船は沿岸中で操業してハルグリムズビーローストフの水産業の発展に寄与した。1890年代の同地にはおよそ300隻のトロール船があって、それらの大部分は船主が船長を兼ねていた。

イングランドにおける最大のトロール漁港は、北東部にある前述のヨークシャー州のハル(キングストン・アポン・ハルとも)である。1970年代からはスコットランド北東のピーターヘッドがヨーロッパ最大のトロール漁港となっていた。1980年代の最盛期には、500隻のトロール船がピーターヘッドを母港とし、それぞれが一週間の漁労を行っていた。しかし、ここ数十年は乱獲を防ぐために漁船数と水揚げ量に制限が加えられたため、ピーターヘッドはかなり衰退してしまった。

軍用艦艇としてのトロール船

第一次世界大戦および第二次世界大戦中、多くのトロール船が徴用され掃海艇として使用された。これは掃海具を海中に投入し曳航するという掃海活動がトロール船の漁法に似ており、トロール船の設備が転用出来るほか、乗組員もある程度作業に馴れていたからである。

これらの徴用掃海艇は哨戒任務にも従事し、イギリス等では「掃海艇としての能力を持つ近海用哨戒艇」の艦種区分の一つに「哨戒トローラー(Patrol trawler)」もしくは単に「トローラー」という名称をつけている。これには、徴用トロール船のほか、トロール船の設計を下敷きにして最初から軍艦として建造された、「漁船」としての装備も能力もない「トロール船」が分類された。これらの「哨戒トローラー」の中には、戦後民間に払い下げられて漁船に改装され、名の通りの「トロール船」になったものもあった。

冷戦期には、いくつかの国がトロール船に電子機器を積んでスパイ船に仕立て、敵国の電子情報の収集(シギント)にあたった。特に、ソビエト海軍は漁船として建造されたものを改造したのではなく、最初から“一見漁船のような外観”の「電子情報収集艇」を建造し、世界各地で情報収集任務に当たらせている。

参考文献

外部リンク