「可算名詞」の版間の差分

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'''可算名詞'''は、[[英語]]などの言語の[[名詞]]のうち、1つ、2つと数えられる名詞のことをいう。それに対して、物質名詞や抽象名詞のように直接的に数えられない(量的な多寡でのみ表現可能な)名詞は'''不可算名詞'''である。
'''可算名詞'''は、[[英語]]などの言語の[[名詞]]のうち、1つ、2つと数えられるものを指す名詞のことをいう。それに対して、物質や抽象概念のように直接的に数えられない(量的な多寡でのみ表現可能な)ものを指す名詞は'''不可算名詞'''である。


==英語==
==英語==
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| last=マーク・ピーターセン
| last=マーク・ピーターセン
| title=続日本人の英語
| title=続日本人の英語
| publisher=岩波新書 : ISBN 4-00-430139-4
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}}</ref>。通常、英語の辞書では、可算名詞には [C] (countable の略)、不可算名詞には [U] (uncountable の略)などといった記号が付けられている。
}}</ref>。通常、英語の辞書では、可算名詞には [C] (countable の略)、不可算名詞には [U] (uncountable の略)などといった記号が付けられている。


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===文脈によるもの===
===文脈によるもの===
集合的・総体的に表す場合など、文脈によっては可算名詞にも不可算名詞にもなる場合もある。例えば、rope (ロープ)という単語は、「1本のロープ」という意識がある文脈では可算名詞の "a rope" という使われ方をし、漠然と「ロープというもの」という意識がある文脈では不可算名詞の "rope" という使われ方をする。
集合的・総体的に表す場合など、文脈によっては可算名詞にも不可算名詞にもなる場合もある。例えば、rope (ロープ)という単語は、「始端と終端のある1本のロープ」という意識がある文脈では可算名詞の "a rope" という使われ方をし、漠然と「ロープというもの」という意識がある文脈では不可算名詞の "rope" という使われ方をする。


===可算性===
===可算性===
名詞の可算性がはっきりと定義されない[[日本語]]のような言語で数詞を付けて1つ、2つと数えられる名詞が、英語では不可算名詞とされているものも多い。一例では野菜の[[アスパラガス]](asparagus)や[[ブロッコリー]](broccoli)が不可算名詞とされ、逆に数としては数えにくい[[光線]](ray)が英語では可算名詞とされているなど、日本語の概念と異なるものも多い。個々の語の可算・不可算については、辞書で確認のこと。
名詞の可算性がはっきりと定義されない[[日本語]]のような言語で数詞を付けて1つ、2つと数えられる名詞が、英語では不可算名詞とされているものも多い。一例では野菜の[[アスパラガス]](asparagus)や[[ブロッコリー]](broccoli)が不可算名詞とされ、逆に数としては数えにくい[[光線]](ray)が英語では可算名詞とされているなど、日本語の概念と異なるものも多い。個々の語の可算・不可算については、辞書で確認のこと。


===可算名詞のルール===
===可算・不可算のルール===
単数の不定のものは「[[冠詞|不定冠詞]]+単数形」、複数の不定のものは無冠詞の複数形で表す。また,''可算名詞 + of + 可算名詞''かたちで不可算名詞の数量を数えることもある。(例:a cup of coffee = カップ1杯コーヒーtwo cups of coffee = 2杯のコーヒー)
単数の不定の可算名詞は「[[冠詞|不定冠詞]] a / an +単数形」、複数の不定の可算名詞は無冠詞の複数形で表す。不の不可算名詞は無冠詞(形)で表す定性文脈から「どれ」と特定されうるも)のものには可算・不可算、単数・複数に関係なく、「定冠詞 the +名詞」が付く。

また,''可算名詞 + of + 不可算名詞''のかたちで不可算のものが可算化されたものを数えることもある。例えば、物質であり不可算であるコーヒーは、カップに入れられて形のあるモノとなり、1杯、2杯と数えることができるようになる。このようにして可算化された「カップ1杯のコーヒー」を a cup of coffee と表現する。2杯ならば two cups of coffee となる。a coffee や two coffees などと表現することはできない。この場合も、どれか特定の1杯のコーヒーなら the cup of coffee となる。


前述のアスパラガスやブロッコリーを数える場合は、以下のような表現が使われるといわれている。
前述のアスパラガスやブロッコリーを数える場合は、以下のような表現が使われるといわれている。

2008年3月27日 (木) 14:13時点における版

可算名詞は、英語などの言語の名詞のうち、1つ、2つと数えられるものを指す名詞のことをいう。それに対して、物質や抽象概念のように直接的に数えられない(量的な多寡でのみ表現可能な)ものを指す名詞は不可算名詞である。

英語

英語の場合、名詞には、純粋可算名詞、純粋不可算名詞、文脈によって可算名詞にも不可算名詞にもなるものの3つのタイプがある[1]。通常、英語の辞書では、可算名詞には [C] (countable の略)、不可算名詞には [U] (uncountable の略)などといった記号が付けられている。

純粋可算名詞

いわゆる"モノ"(物体)である。形で定義されるもので、それを数えるとき、モノ自体が単位となる。

  • cup (カップ)、pen (ペン)、book (本)など

純粋不可算名詞

形も、単位性も、数の関係もないもので、「○○というもの」を一般的に表現するものである。

  • information (情報)、knowledge (知識)、equipment (設備)など

文脈によるもの

集合的・総体的に表す場合など、文脈によっては可算名詞にも不可算名詞にもなる場合もある。例えば、rope (ロープ)という単語は、「始端と終端のある1本のロープ」という意識がある文脈では可算名詞の "a rope" という使われ方をし、漠然と「ロープというもの」という意識がある文脈では不可算名詞の "rope" という使われ方をする。

可算性

名詞の可算性がはっきりと定義されない日本語のような言語で数詞を付けて1つ、2つと数えられる名詞が、英語では不可算名詞とされているものも多い。一例では野菜のアスパラガス(asparagus)やブロッコリー(broccoli)が不可算名詞とされ、逆に数としては数えにくい光線(ray)が英語では可算名詞とされているなど、日本語の概念と異なるものも多い。個々の語の可算・不可算については、辞書で確認のこと。

可算・不可算のルール

単数の不定の可算名詞は「不定冠詞 a / an +単数形」、複数の不定の可算名詞は無冠詞の複数形で表す。不定の不可算名詞は無冠詞(の単数形)で表す。定性(文脈から「どれ」と特定されうるもの)のものには、可算・不可算、単数・複数に関係なく、「定冠詞 the +名詞」が付く。

また,可算名詞 + of + 不可算名詞のかたちで不可算のものが可算化されたものを数えることもある。例えば、物質であり不可算であるコーヒーは、カップに入れられて形のあるモノとなり、1杯、2杯と数えることができるようになる。このようにして可算化された「カップ1杯のコーヒー」を a cup of coffee と表現する。2杯ならば two cups of coffee となる。a coffee や two coffees などと表現することはできない。この場合も、どれか特定の1杯のコーヒーなら the cup of coffee となる。

前述のアスパラガスやブロッコリーを数える場合は、以下のような表現が使われるといわれている。

  • a spear of asparagus
  • a head of broccoli

フランス語

フランス語では、名詞が可算か不可算かは、人が物を見るときの有界性(「ここからここまで」と境界線が引かれている状態)によって決まる。冠詞によって意味が転換される名詞がある[2]

不定の名詞に付く冠詞

不定単数の場合は、不定冠詞単数形 un / une がその名詞の前に付く。不定複数の場合は、不定冠詞複数形 des がその名詞の前に付く。不定不可算の場合は、部分冠詞 du / de la / de l' がその名詞の前に付く。

冠詞による意味の転換

  • 可算名詞の un bœuf (牛)の不定冠詞を部分冠詞に変えると、不可算名詞の du bœuf (牛肉)になる(もともとあった動物としての有界性から物質としての非有界的な見方への転換)。
  • 1つしかないと一般に認知されている物を指す名詞の le soleil (太陽)の定冠詞を部分冠詞に変えると、不可算名詞の du soleil (日光)になる(個体からその放射への転換)。
  • 可算名詞の un professeur (先生)の不定冠詞を部分冠詞に変えると、不可算名詞の du professeur (教師らしさ)になる(個体からその性質への転換)。
  • 不可算名詞の du café ((物質としての)コーヒー)の部分冠詞を不定冠詞に変えると、可算名詞の un café ((カップ1杯の)コーヒー)になる(有界性の導入)。英語のように a cup of coffee という言い方は必ずしもしない。

このような事情があるため、通常、フランス語の辞書には、可算名詞には [C]、不可算名詞には [U] などといった記号は付けられていない。

参考文献

  1. ^ マーク・ピーターセン, 続日本人の英語, 岩波新書, ISBN 4-00-430139-4 
  2. ^ 東郷雄二 (2004), “フランス語の隠れたしくみ 8. 冠詞は意味をどのように区切るか”, ふらんす (白水社) 79 (11), http://lapin.ic.h.kyoto-u.ac.jp/france/cache8.pdf