「英国法」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
英語版から追加翻訳
1行目: 1行目:
{{翻訳中}}
{{翻訳中}}
'''英国法'''(えいこくほう)又は'''イギリス法'''は文字通りには[[イギリス|連合王国]]における法体系('''UK law''')を指すが、実際には[[イングランド]]と[[ウェールズ]]における[[法体系]]、('''English law''')を指すことが多い。これは、世界中の[[コモン・ロー]]の法体系の基礎である。コモン・ローはヨーロッパの大陸諸国、[[スコットランド]]、日本などの[[シビル・ロー]]([[大陸法]]系)または[[多元的法体制]]の対概念である。[[大英帝国]]時代、英国法は[[植民地]]へ輸出され、今日の[[英連邦]]の国々の[[法制]]の基礎となった。
'''英国法'''(えいこくほう、[[英語|]]'''English law''')は[[イングランド]]と[[ウェールズ]]における[[法体系]]であり、世界中の[[コモン・ロー]]の法体系の基礎である。コモン・ローは[[スコットランド]]などの[[シビル・ロー]]([[大陸法]]系)または[[多元的法体制]]の対概念である。[[大英帝国]]時代、英国法は[[植民地]]へ輸出され、今日の[[英連邦]]の国々の[[法制]]の基礎となった。
[[アメリカ合衆国の独立]]以前の英国法はルイジアナを除いては未だに[[米国法]]の一部であり、[[アメリカ合衆国]]の法の伝統と政策に影響を与えた。
[[アメリカ合衆国の独立]]以前の英国法はルイジアナを除いては未だに[[米国法]]の一部であり、[[アメリカ合衆国]]の法の伝統と政策に影響を与えた。


英国のコモン・ローの要素は[[法廷]]での[[判決]]にて作られ、[[常識]]と以前の[[判例]]の知識([[先例拘束性の原理]])を適用する。イングランドとウェールズにおいて[[最高裁]]における判決は下位の裁判所での判断を拘束し、その方針に従わせる。例えば[[殺人]]を違法とする法律はない。殺人を違法とする成文化された[[議員法]]を持たない代わりに[[憲法]]上の法廷の権限とその先例によって殺人を違法とする。これがコモン・ローにおける[[犯罪]]である。コモン・ローは[[議会]]により修正・廃止を受ける。例えば今日殺人は[[無期刑]]が義務付けられるが、以前は[[死刑]]が許容されていた。
英国のコモン・ローの要素は[[法廷]]での[[判決]]にて作られ、[[常識]]と以前の[[判例]]の知識([[先例拘束性の原理]])を適用する。イングランドとウェールズにおいて[[最高裁]]における判決は下位の裁判所での判断を拘束し、その方針に従わせる。例えば[[殺人]]を違法とする法律はない。殺人を違法とする成文化された[[議員法]]を持たない代わりに[[憲法]]上の法廷の権限とその先例によって殺人を違法とする。これがコモン・ローにおける[[犯罪]]である。コモン・ローは[[議会]]により修正・廃止を受ける。例えば今日殺人は[[無期刑]]が義務付けられるが、以前は[[死刑]]が許容されていた。


イングランドとウェールズは[[イギリス|連合王国]]構成す[[法域]]であるが、連合王国は[[欧州連合]](EU)のメンバーであるため[[EU法]]がイングランド及びウェールズにおいても通用する。EUの国々は主にシビル・ロー(大陸法)を用い、イングランド及びウェールズでもシビル・ローの体系はこの形で存在する。[[欧州司法裁判所]]ではシビル・ローを重視し、EU法の下でイングランドとウェールズの法廷を監督することができる。
イングランドとウェールズは[[イギリス|連合王国]]の[[構成]]であるが、国は[[欧州連合]](EU)のメンバーであるため[[EU法]]が英国内でも通用する。EUの国々は主にシビル・ロー(大陸法)を用い、英国でもシビル・ローの体系はこの形で存在する。[[欧州司法裁判所]]ではシビル・ローを重視し、EU法の下でイングランドとウェールズの法廷を監督することができる。


今も効力を遺している最古の法律は[[1267年]][[マールバラ法]]([[w:Statute of Marlborough|Statute of Marlborough]])の一部(52 Hen. 3)Distress Actである。[[マグナ・カルタ]]の3つの節は元は[[1215年]]に調印され、英国法の発達にとって大きな出来事であったが、[[1297年]]に改訂されている。
今も効力を遺している最古の法律は[[1267年]][[マールバラ法]]([[w:Statute of Marlborough|Statute of Marlborough]])の一部(52 Hen. 3)Distress Actである。[[マグナ・カルタ]]の3つの節は元は[[1215年]]に調印され、英国法の発達にとって大きな出来事であったが、[[1297年]]に改訂されている。

2007年11月24日 (土) 09:57時点における版

英国法(えいこくほう、English law)はイングランドウェールズにおける法体系であり、世界中のコモン・ローの法体系の基礎である。コモン・ローはスコットランド法などのシビル・ロー大陸法系)または多元的法体制の対概念である。大英帝国時代、英国法は植民地へ輸出され、今日の英連邦の国々の法制の基礎となった。 アメリカ合衆国の独立以前の英国法はルイジアナを除いては未だに米国法の一部であり、アメリカ合衆国の法の伝統と政策に影響を与えた。

英国のコモン・ローの要素は法廷での判決にて作られ、常識と以前の判例の知識(先例拘束性の原理)を適用する。イングランドとウェールズにおいて最高裁における判決は下位の裁判所での判断を拘束し、その方針に従わせる。例えば殺人を違法とする法律はない。殺人を違法とする成文化された議員法を持たない代わりに憲法上の法廷の権限とその先例によって殺人を違法とする。これがコモン・ローにおける犯罪である。コモン・ローは議会により修正・廃止を受ける。例えば今日殺人は無期刑が義務付けられるが、以前は死刑が許容されていた。

イングランドとウェールズは連合王国構成国であるが、英国は欧州連合(EU)のメンバーであるためEU法が英国内でも通用する。EUの国々は主にシビル・ロー(大陸法)を用い、英国でもシビル・ローの体系はこの形で存在する。欧州司法裁判所ではシビル・ローを重視し、EU法の下でイングランドとウェールズの法廷を監督することができる。

今も効力を遺している最古の法律は1267年マールバラ法Statute of Marlborough)の一部(52 Hen. 3)Distress Actである。マグナ・カルタの3つの節は元は1215年に調印され、英国法の発達にとって大きな出来事であったが、1297年に改訂されている。

司法権を異にするイングランドとウェールズ

英国は異なった法体系と司法権を持った複数の国家(states)に分かれている。国際法の趣旨によれば、"state"とはその存在が法律上(デ・ジュリ)の承認を受けた、とりわけ他国と条約を結んだ民族・国民(nation)を指す。しかし国際私法(法の抵触)の趣旨ではBealeが"state"を以下に定義している(§ 2.1/2.5):

The civilized portion of the earth is divided up into certain units of territory in each of which a particular law proper to that territory alone prevails, and that territory is for legal purposes a unit.
地球の文明化された部位は、各々にだけ通用する特有の法により特定の領土の単位に分割され、その領土は法の趣旨でいう単位である。
§ 2.2. What Determines the State. — It has been seen that the existence of separate legal units within the dominions of a single sovereign is a fact, the result of historical accidents.
§2.2.国家の定義とは何か。 - 単独の支配者の領地の中に、歴史的事件の結果別の法定単位が事実上存在することが見られる。

Bealeは§2.2の歴史的事件の例に以下を挙げた:

"...when Hawaii was annexed to the United States it remained a separate legal unit; but when Wales was conquered by England it became a part of the legal unit, England."
「ハワイがアメリカ合衆国に併合された時、独立した法定単位(legal unit)が残されたが、ウェールズがイングランドに征服された時はイングランドの法的単位の一部となった。」

国家の地位は国際法でも国家の権利及び義務に関するモンテビデオ条約によって、以下の条件が国家の成立の必要とされる:(a)恒久的な人口、(b)定義された領土、(c)政府、(d)他国と関係を結ぶ能力。

オーストラリアなど一部の法域においては"law unit"を用い、一部では"country"の語の方が"state"よりも混乱を招き辛いとして使用されているが、これを"state"とする見方が多数である。イングランドとウェールズは一つの"state"を構成する。これは幾つもの理由で重要であり、その中でも住所と国籍の違いが著しい。従って、英国籍を持つ個人は構成国の一つに国籍と住所を持ち、その法がその人間の法的地位・権限を決定する。 DiceyとMorris(p26)は英国諸島の独立したstateを列挙している。「イングランドスコットランド北アイルランドマン島ジャージー島ガーンジー島オルダーニー島サーク島―以上が国際私法上での別々の国(cuntry)であるが、これらは国際法上の国家(state)ではない」と。しかしその法規によって異なっている。英国はExchange Act 1882の法案の趣旨では一つのstateである。[[:en:anies Act 1985|]の趣旨ではグレートブリテン島が一つのstateである。伝統的にイングランドとウェールズの法定単位すなわちstateをイングランドを呼んだが、この用法はこの数十年では政治的に受け入れられなくなっている。

ウェールズ

権限の委任によりウェールズ国民議会National Assembly for Wales)による程度の自治権がみとめられたが、独立した立法権は、2006年ウェールズ政府法Government of Wales Act 2006)によりウェールズ議会Welsh Assembly Government)の第一次立法権を認めた2007年ウェールズ総選挙まで存在しなかった。民事裁判刑事裁判を通して執行される法体系はイングランドとウェールズで統一されたままである。これは北アイルランドとは状態が異なっており、例えば北アイルランドでは議会を停止されている間もstateのままであった(参照:Northern Ireland (Temporary Provisions) Act 1972)。

イングランドに関わりのないウェールズだけの法律ではウェールズ語を用いるという大きな違いもある。1993年ウェールズ言語法Welsh Language Act 1993)は英国の法令の一つであり、ウェールズ語をウェールズの公共の場で英語と等しい地位にしている。ウェールズ語はまたウェールズの法定でも話される。