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==ダム穴の正体==
==ダム穴の正体==
一般に、ダム湖やため池といった人造湖には、[[水位]]が一定以上とならないよう、余分な[[水]]を下流に[[放流 (ダム)|放流]]([[放水]])する設備を備えており、これを'''余水吐き'''(余水吐け)という。中でも'''モーニング・グロリーぜき'''や'''円筒形刃形ぜき'''を採用したものは、排水時にその飲み口周りの水面にあたかも穴が開いたような光景を作り出す。これが、俗に'''ダム穴'''(ダムあな)と呼ばれるものの正体である。
一般に、ダム湖やため池といった人造湖には、[[水位]]が一定以上とならないよう、余分な[[水]]を下流に[[放流 (ダム)|放流]]([[放水]])する設備を備えており、これを'''余水吐き'''(余水吐け、[[英語|英]]: [[:en:Spillway|spillway]])という。中でも'''グロリーホール'''(英: glory hole)を採用したものは、排水時にその飲み口周りの水面にあたかも穴が開いたような光景を作り出す。これが、俗に'''ダム穴'''(ダムあな)と呼ばれるものの正体である。


[[Image:Llyn Celyn spillway1 w.JPG|thumb|220px|[[ウェールズ]]([[イギリス]])にある[[:en:Llyn Celyn|Llyn Celyn]]のグローリーホール。水位が上昇することで「ダム穴」が出現する。]]
モーニング・グロリーぜきや円筒刃形ぜきは、[[放水路]]へとつながる円筒形の[[パイプ|管]]が水中(湖底)から立ち上がった構造をしている。飲み口はいずれも真上に向けられており、その形状[[楽器]]の[[ラッパ]]または[[アサガオ]]([[英語|]]: morning glory)の[[花]]に似ているものをモーニング・グロリーぜきといい、また直線の[[刃形ぜき]]を円筒形状に丸めたものを円筒形刃形ぜきという。これらは水位が飲み口の高さを越えたとき、周囲から中心部(クロッチという)に向かって水がいっせいに流れ込む。このとき水は互いに[[衝突]]し合い、クロッチの直上に[[泡]](ボイルという)が発生する。水は内部を垂直に落下し、放水路を通じて下流に放流される。
グロリーホールは、[[放水路]]へとつながる円筒形の[[パイプ|管]]が水中(湖底)から立ち上がった構造をしている。飲み口は真上に向けられており、その形状[[楽器]]の[[ラッパ]]、もしく逆さにした[[釣鐘]](英: [[:en:Inverted bell|inverted bell]])にも見え、特に[[アサガオ]](英: morning glory)の[[花]]に似ていることから'''グローリーホール'''、'''モーニング・グロリーぜき'''といった名前がある。また[[直線]]の[[刃形ぜき]]を丸めた円筒形状から'''円筒形刃形ぜき'''いう。これらは水位が飲み口の高さを越えたとき、周囲から中心部(クロッチという)に向かって水がいっせいに流れ込む。このとき水は互いに[[衝突]]し合い、クロッチの直上に[[泡]](ボイルという)が発生する。水は内部を垂直に落下し、放水路を通じて下流に放流される。運用面では管路につまりができないよう、[[ごみ]]の流入や凍結などに注意を払う必要がある。


[[日本]]では[[2000年代]]に[[インターネット]]の[[電子掲示板]]や[[ブログ]]などの[[メディア (媒体)|メディア]]を通じて紹介され、その異様な雰囲気の光景にいつしかダム穴という名前が付けられ話題を呼んでいる。しかし、現状では[[日本のダム]]においてダム穴が見られる機会は少ない。建設された多くのダムでは、その堤体(ダム本体)に[[スロープ]]状の余水吐きを[[水門]]を伴って設けることがほとんどであり、モーニング・グロリーぜきや円筒刃形ぜきを備える例は少ないためである。ダム穴が現れる構造をしているダムとしては、[[宮崎県]]にある[[芋洗谷ダム]]や、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の[[モンティセロダム]] ([[:en:Monticello Dam|Monticello Dam]]) などが有名である。
[[日本]]では[[2000年代]]に[[インターネット]]の[[電子掲示板]]や[[ブログ]]などの[[メディア (媒体)|メディア]]を通じて紹介され、その異様な雰囲気の光景にいつしかダム穴という名前が付けられ話題を呼んでいる。しかし、現状では[[日本のダム]]においてダム穴が見られる機会は少ない。建設された多くのダムでは、その堤体(ダム本体)に[[スロープ]]状の余水吐きを[[水門]]を伴って設けることがほとんどであり、モーニング・グロリーぜきや円筒刃形ぜきを備える例は少ないためである。ダム穴が現れる構造をしているダムとしては、[[宮崎県]]にある[[芋洗谷ダム]]や、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の[[モンティセロダム]] ([[:en:Monticello Dam|Monticello Dam]]) などが有名である。
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*[[放水路]]
*[[放水路]]
*[[落とし穴]]
*[[落とし穴]]
*[[ブラックホール]]


==外部リンク==
==外部リンク==

2007年5月17日 (木) 11:35時点における版

ダム穴(ダムあな)とは、ダム湖やため池などの人造湖にて、その水面にあたかもが開いたように見える光景に対して付けられた俗称である。

ダム穴の正体

一般に、ダム湖やため池といった人造湖には、水位が一定以上とならないよう、余分なを下流に放流放水)する設備を備えており、これを余水吐き(余水吐け、: spillway)という。中でもグローリーホール(英: glory hole)を採用したものは、排水時にその飲み口周りの水面にあたかも穴が開いたような光景を作り出す。これが、俗にダム穴(ダムあな)と呼ばれるものの正体である。

ウェールズイギリス)にあるLlyn Celynのグローリーホール。水位が上昇することで「ダム穴」が出現する。

グローリーホールは、放水路へとつながる円筒形のが水中(湖底)から立ち上がった構造をしている。飲み口は真上に向けられており、その形状は楽器ラッパ、もしくは逆さにした釣鐘(英: inverted bell)にも見え、特にアサガオ(英: morning glory)のに似ていることからグローリーホールモーニング・グロリーぜきといった名前がある。また直線刃形ぜきを丸めた円筒形状から円筒形刃形ぜきともいう。これらは水位が飲み口の高さを越えたとき、周囲から中心部(クロッチという)に向かって水がいっせいに流れ込む。このとき水は互いに衝突し合い、クロッチの直上に(ボイルという)が発生する。水は内部を垂直に落下し、放水路を通じて下流に放流される。運用面では管路につまりができないよう、ごみの流入や凍結などに注意を払う必要がある。

日本では2000年代インターネット電子掲示板ブログなどのメディアを通じて紹介され、その異様な雰囲気の光景にいつしかダム穴という名前が付けられ話題を呼んでいる。しかし、現状では日本のダムにおいてダム穴が見られる機会は少ない。建設された多くのダムでは、その堤体(ダム本体)にスロープ状の余水吐きを水門を伴って設けることがほとんどであり、モーニング・グロリーぜきや円筒刃形ぜきを備える例は少ないためである。ダム穴が現れる構造をしているダムとしては、宮崎県にある芋洗谷ダムや、アメリカモンティセロダム (Monticello Dam) などが有名である。

参考文献

関連項目

外部リンク